ディープラーニングを大幅短時間化「MN-1」って何?:5分で分かる最新キーワード解説(4/5 ページ)
2017年末の性能ランキングで高順位をマークしたプライベートスパコン「MN-1」。汎用GPUが開く、ディープラーニングの新機軸とは?
Azure上でも利用が可能に
PFNはかねてマイクロソフトと本格的な協業を開始しており、Microsoft Azureが提供しているGPUクラスタとInfiniBandの環境に、簡単にChainerMNによるディープラーニングが可能な環境構築ができるようにしているところだ。エクストリームデザインの開発したクラウドスパコン構築運用無人化サービス「XTREME DNA」にこのテンプレートを追加して、2017年10月からサービス開始している。
このようにクラウドサービスとして高速ディープラーニング環境が月額料金で利用できるようになればスモールスタートしやすい環境が整うため、ビジネスとして取り組みたいと考える企業は増えていくだろう。そればかりでなく、データの保管や運用管理に関しても、クラウドを利用することで解決に近づくこともできそうだ。
特定目的の学習の材料としては、特に医薬品や化学製品をはじめとする工業分野の設計、生産プロセスからペタバイト級にのぼるデータが取得可能な企業もそう珍しくない。その膨大なデータを蓄積し、安全に管理しながら学習に利用するためのインフラをオンプレミスで用意するのは難しくとも、クラウド上の学習環境とともにストレージとデータ管理機能も利用できるとなれば話は違う。今まで使い道がなかったデータを活用して、ディープラーニングで作り上げた独自のモデルで新製品やサービスを創出したり、既存ビジネスへの付加価値を高めたりすることが容易になると思われる。
さらに日進月歩で進むディープラーニング技術では、フレームワークの陳腐化スピードが今後も早まる可能性が高い。より新しい環境を利用するにはクラウド利用が最適な選択肢になるだろう。
ディープラーニング環境は、Azure、AWS、Google cloud Platform、IBM Bluemixの各クラウドサービスからPaaSとして提供されているため、こちらも検討の対象とすべきだが、ここでは「MN-1」のような大規模環境が、簡便にクラウドでも調達可能な素地ができたという部分に注目してほしい。
何を目的とし、どのように学習して、その結果をどうビジネス化するのか、その戦略は当然必要だが、「どのように学習するか」に関しては経験による知識やノウハウが非常に重要な要素になるはずだ。まずはディープラーニングに取り組んでみて、実用的なスキルを学ぶことが、今後のAI活用には重要だろう。数基のGPUによる小規模環境、少データによる機械学習研究とはまったくスケールが違うインフラを利用することで、より実ビジネスに直結する学習実践経験が積めるのではないだろうか。
なお、AzureとPFNの協業はこれにとどまらず、特定目的や業種に向けたソリューションも今後展開していく予定という。ディープラーニングがSaaSのように実行できる環境がそう遠からずやってきそうだ。
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