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PCの持ち出し禁止で私用PCの残業? 働き方改革の実態イベントレポートアーカイブ(3/3 ページ)

IDC Japanは1月17日、「国内働き方改革ICT市場」に関する調査結果を発表。併せて、企業における働き方改革の取り組みの実態を説明した。

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約5割の従業員が月に1回以上の持ち帰り残業 ICT活用にとどまらない改革も必要

 ある程度ICTツールの活用が進んだとしても、働き方改革の成功、成果の持続のためには、ICT活用以外の視点でも改革が必要だと市川氏は強調する。

 例えば、ノートPCというICTツールがあったとしても、柔軟な働き方を推進しようと思えばPCの持ち出しに関するルールの見直しなどが必要だろう。しかし、IDCが17年12月にIT部門またはPCの選定に関し決定権のある回答者を対象に実施した調査によれば、大企業(従業員数500人以上)の約8割、中堅中小企業(従業員数499人以下)の約5割は原則として社内PCの持ち出しを禁止していることが分かった。

企業における「ノートPCの持ち出し」に関するルール
図5 企業における「ノートPCの持ち出し」に関するルール

「PC持ち出し禁止」の背景にはセキュリティ上の懸念だけでなく、持ち出しの許可によって管理者が把握できない残業が発生するという労務上の不安がある。市川氏は、労務規制の問題からPCの持ち出し禁止を命じるCIOも多いとして、裁量労働制などが拡大すれば企業の規制も緩和するのではないかと話した。

 とはいえ、「管理できないためにPCの持ち出しを禁止する」というのはあくまで管理者や経営トップ側から見た観点であり、管理者が把握できないところでの抜け道はあると市川氏は話す。

 実際に、同社が17年12月、ポータブルPCを中心に利用している企業ユーザーを対象に実施した調査では、5割以上の従業員が月に1回以上仕事を自宅に持ち帰っているという実態が明らかになった。

従業員が仕事を自宅に持ち帰る頻度
図6 従業員が仕事を自宅に持ち帰る頻度

 また、そのうち6割〜8割が「自宅のPC」「会社でも利用している自分のPC」など私用のPCを利用しているという結果も出ている。

従業員が自宅における仕事で使用するPCの内訳
図7 従業員が自宅における仕事で使用するPCの内訳

 さらに、月に数回以上自宅に仕事を持ち帰る人に、私用のPCを使う理由を聞くと、約4割が「会社のPCは持ち出し禁止であるため」と答えている。

会社貸与のPCを使わない理由
図8 会社貸与のPCを使わない理由

 「大企業を中心に、残業をさせず強制的に従業員を帰宅させるというルールを設けているが、生産性や仕事の量が変わっていないことで、家で残業せざるを得ないという実態が浮かび上がる」(市川氏)

 同氏は、働き方改革においてはICTの導入や活用と、それ以外の観点での改革の両輪が大切だと話す。すなわち、ICT活用に加え、企業文化や勤務形態、多様な人材活用、評価制度といったより広範囲な領域を視野に入れて、トップダウンで施策に取り組むことが必要だという。

 また、最後に同氏は「働き方改革を含め、ICTの活用は、今後企業がビジネス全体のレボリューションに追随できるかどうかの分かれ目にもなる。ICTツールを活用して会社の基盤を確固たるものにしようという理念があれば、企業はこの時勢に生き残ることができる」と締めくくった。

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