「IBMのメインフレームを買ってみた」ある少年の奇跡:453th Lap:金曜Black★ピット
「IBMのメインフレームを購入した」と聞けば、「どこかの企業が導入したんだな」と思うのが普通だろう。個人がメインフレームを購入して自宅に据え置いたという話には耳を疑うしかない。
しかも「個人」というのが、米国在住の18歳の大学生、Connor Krukosky(コナー・クラコスキ)くんだと聞けばさらにビックリだ。「Here's What Happens When an 18 Year Old Buys a Mainframe(18歳がメインフレームを買ったときに起こったこと)」という動画がYouTubeで公開されて話題になっている。
内容は2016年にサンフランシスコで開催されたイベントでクラコスキくんが講演している様子とスライドをまとめたもの。会場の爆笑も誘っていたその動画の内容から、彼の奮闘ぶりを紹介しよう。
クラコスキくんは、もともとビンテージコンピュータの収集家だ。生後18カ月で両親からコンピュータを与えられ、15歳で収集が趣味となった。彼の自室にはアンティークなPCがあふれんばかりに並んでいる。今回、彼が手に入れたのは「IBM z890」。2004年に発売されたメインフレーム機だ。
彼はオークションサイト「eBay」でIBM z890が売りに出されているのを見て、すぐに購入を申し込んだ。相手には「ちょうど自室の暖房がほしかったんだ」なんてジョークを言いながら。ちなみにIBM z890の筐体は高さが1.8メートル、重さも1500ポンド(約680キロ)ほどある。彼は両親に内緒にして237ドル39セント(約2万5000円)を支払った。
数人の友達とともに、ワゴン車でIBM z890を引き取りにいったものの荷台には載らず。牽引式の荷台車に筐体をくくりつけて自宅まで運んだのだが、自宅ではさらなる試練が待っていた。地下にある自室に筐体を運び込むために、屋外のテラスデッキの下をくぐり抜けて運ぼうと思ったものの隙間が足りず、穴を掘り下げて何とか運び入れた。部屋が地下でなかったら、自重できっと床が抜けていたことだろう。
運び入れた筐体にパーツやモジュールを組み込んで、起動してみようとしたら電源ケーブルは何とオリジナルの3ピンプラグ。これを加工して起動するも、ライセンス認証を求められたり、専用ストレージを自作せねばならなかったり、メインメモリーをまたeBayで探し求めたり……。とにかくやることが多すぎて、クラコスキくんは3カ月ほど地下室にこもりきりとなってしまった。
ついにIBM z890は実際に運用できる状態になった。講演を聴いていた人たちも、その画面を見て思わず拍手をするほどだ。IBM z890の起動までにかかったコストは運搬費用を除いて約340ドル(約3万6000円)ほど。IBM z890の発売価格は35万ドル(約3750万円)を超えていたというから、クラコスキくんは1000分の1の値段でメインフレームを手に入れたことになる。
実はまだ続きがある。クラコスキくんの奮闘を見たIBMのメインフレーム事業のお偉いさんが、彼をIBMのメインフレーム工場に招待した。しかも、その知識によって、彼は大学生であるにもかかわらず同社のメインフレーム関係の仕事に就いてしまったのだ。まったく、人間なにが幸いするか分からないものだな。
上司X: 個人でメインフレームを導入した18歳男子の話だよ。最後はIBMに就職するっていうね。
ブラックピット: おお、これはなかなかすごい話ですねえ。
上司X: 動画には、クラコスキくんが今回の件で学んだ「教訓」が面白おかしくはさみ込まれていて、それが会場の大きな笑いを誘っていたよ。
ブラックピット: 確かに「計画はちゃんと立てよう」「お母さんの言うことはきこう」みたいなことをマジメに言われると、思わず笑っちゃいますよね。
上司X: 確かにな。
ブラックピット: それにしても「よくぞここまでやった」って感じですよね。見た感じナヨッとした長髪の少年なんですけど、やっていることが大胆じゃないですか。
上司X: 穴を掘って筐体を搬入しちゃうぐらいだからな。
ブラックピット: 動画の再生回数だって200万を超えているし、IBMの人の目にも留まるはずですよ。僕も今さらながら何かやってみようかな。
上司X: また、そんなYouTuberを夢見る小学生みたいなことを……。彼にはビンテージコンピュータを集めるという、しっかりした意志があったからこそだよ。「何かやってみようか」なんて甘いことを言っているようじゃ、彼のような展開になるわけないじゃないか。せめて仕事だけでもマジメにこなすんだな。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.