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中国電力グループ「エネコム」が挑む「RPA×地方創生」

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と聞くと、大都市圏にオフィスを置く大手企業での導入イメージをされる方も多いのではないだろうか?そんなイメージが強い中、地方の中小企業でも実務に活用可能なRPAを普及させるユニークな取り組みが広島から始まっている。中国電力グループで中国地方の通信・情報インフラ基盤を支える株式会社エネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)のクラウド型RPAサービス「EneRobo(エネロボ)」だ。その狙いや事業体制、今後の展望などを同社に聞いた。

中小企業での利用が可能なRPAクラウドサービス「EneRobo」

きっかけはRPAをテーマにしたグループ企業の勉強会だったという。開催の翌日には情報システム部門全員で勉強したい。すぐ進めてもらいたいと。

続いて開催した一般向け研修会でも「取引先などに『広島からRPAを広めたい』と呼びかけた説明会でも、翌日からさっそく研究を始めた企業もあったほど。意気に感じ、まずやってみるという地域性がRPAにはぴったりだと感じます」。そう語るのは、エネコムでRPA事業を統括するITサービス事業化プロジェクトの梶川祐朗部長だ。

中国電力グループの情報通信事業者である同社は、中国地方を地盤に通信インフラ構築やITシステムの開発運用などをグループ内外から受託。2016年12月から本社所在地である広島市内で最新鋭のデータセンターが稼働を始めたのを機に、クラウドサービスの提供にも注力している。

EneRobo(エネロボ)の事業は、RPAテクノロジーズ株式会社と共同開発した地元の中小企業にも利用可能なソフトウエアのライセンス提供と購入企業への導入支援を柱に17年7月スタート。第一弾として、ロボットが稼働するプラットフォームをクラウドサービスとして提供する「エネロボクラウド」と、実行中のロボットが通信障害で止まらないよう安全な通信環境で支える「エネロボコネクト」が同11月にリリースされた。

既にエネコムでは、クラウドの運用とロボットの開発や教育で約50人のシステムエンジニアが携わっているが、同社は順次要員育成をすすめ、400人規模のロボット開発体制にしてゆく予定だ。さらに、蓄積したノウハウをもとにRPA技術者の育成を希望する他社へのサポートも積極的に進めてゆきたいと言う。

RPAを本当に必要としているのは地方の中小企業

自社のほか、地元経済に密着した代理店を通じたPRで徐々に認知度を高めつつあるエネロボクラウドは、いかなるミッションを担っていくのだろうか。梶川氏は、事業の狙いを次のように説明する。

「例えば業務の生産性を高めたい中小企業がITシステムを入れようとしても、費用や運用面でのハードルが高いことを、私たちは長年の経験で知っています。現在、国を挙げて働き方改革が進められていますが、ムダな会議や残業を減らすといった”削る”取り組みだけでは収益につながらない上、大都市圏以上に深刻な地方の人手不足にはまったく対応できません、これが現実です」

「さまざまな職場で柔軟に採り入れられ、定型業務の自動処理を短期間のうちに実現できるRPAの威力は絶大です。これまでは大企業での採用が先行してきたものの、現実的な生産性向上の選択肢が限られている地方の中小企業こそ、もっともRPAを必要としている存在といえるのではないでしょうか。大小問わず、少しでも多くの企業で業務のロボット化が真剣にご検討いただけるよう、ツールはなるべく簡単な操作で、手軽に試せるものにしたい。そうした考えから、リーズナブルで使いたい時に活用可能なクラウドサービスでの提供に着目しました。」

エネロボクラウドが想定する活用シーンは具体的で多岐にわたる。「部品メーカーが納入先のシステムから受信するデータを自社システムと同期する転記作業」「複数の宿泊予約サイトと契約した旅館が部屋在庫管理のために行うサイトの定期巡回」、さらには「港湾事務所発表の大型客船入港情報に連動した土産物の発注」まで。経済活動のあらゆる場面に潜む煩雑な定型作業の担い手を、人からロボットに置き換えていった先で、地方創生の実現がもたらされるという同社の確信は揺るぎない。

「将来的には、広島をクラウド型RPAの一大開発拠点に育てていくつもりです。優秀なITエンジニアとして大都市圏へ流出していく地元出身者に、住み慣れた街で活躍し続ける道を用意したいのです」(梶川氏)

広島発RPAロボットデータセンターを標準化、世界に

より手軽なRPAツールとして普及を図るエネロボクラウド。使用場所を選ばないクラウドの利点を生かして今後全国的なPRを強化していく一方、あくまでもリーズナブルなサービスを基本とするため、標準サポートは最低限に留めるという。

同社が思い描くのは、サードパーティーが提供する関連サービスで成り立つ”エネロボのエコシステム”だ。「エネロボクラウドをベースに電話窓口の充実などで差別化を図るパートナーが現れれば、ぜひ歓迎したい。ユーザーの利用状況を把握しやすいクラウドサービスの特徴を生かせば、ロボットの効果的な活用法を助言するコンサルティングなど、継続的な付加サービスなども十分成り立つのでは」(梶川氏)。RPAの普及にともない、デジタル化されずオフィスに大量に積み上げられる紙問題も顕在化し、再注目されているOCR(Optical Character Reader、光学的文字認識)との連携による紙ベースのデータ処理への対応なども今後強化していく予定という。

「Excelは今では誰でも利用していますよね。私たちは、Excel同様に、RPAをPC上で使うのが誰にとっても当たり前という状態を目指していきたい」。地方発のイノベーションを熱っぽく語る梶川氏の名刺をふと裏返すと、そこには一切の迷いを感じさせない筆致で、こう大書されていた。

「RPAを広島から」

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