匿名化ソリューションとは? 導入方法、代表的なソリューションを整理する:IT導入完全ガイド(1/3 ページ)
匿名化ソリューションはどう導入するのか、自社の要件でチェックすべきポイントを整理。国内3つの主要匿名化ソリューションの特徴も紹介。
データ匿名化ソリューション導入を検討する前にやるべきこと
2017年5月に施行された改正個人情報保護法において、「匿名加工情報」という概念が新たに取り入れられ、これまで取り扱いに厳重な制限が掛けられていたパーソナルデータの利活用の可能性が大きく広がった。たとえ個人情報が含まれている情報であっても、データを適切に加工して「匿名化」することで、本来の目的外の用途に転用したり、本人の同意を得ることなく第三者に提供したりできるようになったのだ。
このあたりの背景や経緯については、別途「匿名加工情報とは? 基礎概念、利用用途を理解する」を参照されたい。本稿では、こうした動向を受けて自社でも個人情報を含むパーソナルデータを匿名化して、ビジネスに役立てたいと考えている企業が、実際にデータ匿名化のソリューションを導入するに当たり留意すべき事項や、製品選定のポイントを幾つか紹介したい。
パーソナルデータ利活用のユースケースを整理する
データ匿名化ソリューションの導入を検討する前に、まずはどんなデータを何のために匿名化したいのか、自社のパーソナルデータ利活用の要件を整理しておく必要がある。データ匿名化は、「この手順を踏めばOK」という決まりきった道筋は存在しない。データを匿名化する都度、データの特質や利用目的に応じて適切な匿名化の方法を定める必要がある。
まずは、匿名化する対象のパーソナルデータを扱う事業やサービスの全体像を整理し、その中でどのデータを匿名化し、それを誰がどのような目的で利用するのか、業務・サービス全体の流れを整理する必要がある。その際にあわせて、匿名化の対象となるデータベースの規模やデータ項目などを整理しておくと、その後の検討がスムーズに運ぶだろう。
データを「識別子」「属性」「履歴」に分類して検討
こうしてデータ匿名化の「ユースケース」を整理した後は、いよいよ匿名化対象のデータそのものの分析に移る。一般的に匿名化を検討するに当たっては、データベースに含まれるデータ項目を「識別子」「属性」「履歴」の3タイプに分け、それぞれで適切な加工方法を検討すると分かりやすい。識別子とは、それ単体で個人を一意に識別できてしまう情報のことを指し、当然のことながら削除や置換といった加工が必要になる。
属性情報は、それ単体では個人を特定するまでに至らないものの、複数を組み合わせることで特定できる可能性が生じる。この情報をいかにうまく加工するかが、データ匿名化の肝ともいえる。これらの情報を粗い粒度に加工すればするほど個人が特定されるリスクは減るが、データの分布がオリジナルデータと乖離していくためにデータ分析の材料としての価値は落ちていく。逆に加工の粒度を細かくすれば、より精緻な分析が可能になる一方、個人を特定される危険性は高まる。
そのため、データに含まれる属性の種類や数、そして匿名化データの利用目的などを照らし合わせて、適切な加工レベルを見極める必要がある。これを行うに当たり、1つの指標になるのが「k-匿名化」と呼ばれる手法だ。同じ属性の組み合わせを持つデータが必ずk件以上存在するように匿名化を行うことで、個人が特定される可能性を「k分の1」まで低減できることを担保する。
さらに、個人の購買履歴やサイト閲覧履歴といった履歴情報も、場合によっては加工の対象となる。一般的には履歴情報だけでは個人の特定までには至りにくいが、非常に希少な履歴や特異な傾向を持つ履歴が存在する場合は、それを基に特定されるリスクもあるので、注意が必要だ。
個人特定のリスクを広範に検討・評価
その他にも、匿名化対象のデータ単体だけでなく、他のデータと照合した際の個人特定のリスクも評価しておく必要がある。データ単体では特定化のリスクは極小でも、外部のデータと突き合わせた途端にリスクが増大するケースもある。従って、ユースケースを丹念に追いながら、「どのような外部データと突合される可能性があるか」についてもあらかじめ検討しておく必要がある。
こうした検討を行った後に、初めて具体的なデータ加工方法を検討することになる。識別子の加工は一般的に「削除」「仮名化」といった手法がある。また属性に関しては、先に挙げたk-匿名化のほかにも「一般化」や「サンプリング」といった方法がある。
こうした一連の検討事項およびそれぞれの詳しい内容については、経済産業省から出されている「事業者が匿名加工情報の具体的な作成方法を検討するにあたっての参考資料(匿名加工情報作成マニュアル)」に詳しいため、ぜひ参照されたい。
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