全員、出社義務なし、テレワークで各社員に合った働き方を実現するシックス・アパート(4/4 ページ)
「出社義務」をなくすと、社員はどんな働き方をするのか? 定期代支給まで撤廃したシックス・アパ―トの独特で先端的な働き方改革の現場をのぞいた。
社員を管理するより、自発性を引き出す工夫を
オフィスを縮小して賃料を削減したり、社員の定期代がなくなったりしたことで、2016年上半期に比べ、SAWSを開始した下半期は、約4000万円の経費が削減できた。だが、これは目標ではなく結果にすぎない。本来の目標は、各社員のライフスタイルに合った生き方と働き方を実現することだ。
「例えば、大阪に住んでいるご両親を病院に連れて行き、待合室で仕事をした社員がいました。以前なら有給休暇を使わざるを得なかったでしょうが、SAWS導入後は空き時間を活用しながら仕事ができるようになりました。また、暮らしやすさを求めて地方に移住した社員もいます。一人一人の事情に合わせて柔軟な働き方ができるのは、非常に良いと感じますね」(古賀氏)
シックス・アパートには、社員を管理するという発想がない。むしろ、社員をできるだけ管理しない方向で取り組みを進めているのだ。
社員を監視するより、社員が自発的に仕事に取り組む仕組みを工夫する方が有益だと思い、制度の導入や改善を続けていると語る古賀氏であるが、実際のところ、社員の仕事ぶりはどう評価しているのだろうか。仕事ぶりを監視しない以上、成果物の出来によって社員を評価するしかないといえるだろう。
同社の場合、例えばエンジニアなら、書き上げたプログラムは「GitHub」にアップロードし、誰が何行のコードを書いたか、バグの数やその対応はどの程度行ったかなどを全て共有。広報や人事のように業績の数値化が難しい部門でも、リーダーとメンバーがきちんと話し合いを行った上で、達成すべき指標を設定している。
また、SAWSの導入により、社内の風通しが良くなったことも特筆できる点だ。
「フリーアドレス制にしたことで、出社するたびに違うメンバーと隣り合わせになります。また、近所に住んでいる社員同士が連絡を取り合い、新しくできたコワーキングスペースを見に行くことも多いようです。結果的に、チームや部門といった枠組みを超えた社内コミュニケーションが、以前より活発化していると感じますね」(壽氏)
社員数30人規模の企業だから、あるいは、EBOによって社員が株主となった企業だからこうした働き方が実現できたのではという意見もあるだろう。古賀氏も、そういった見方を否定はしてない。しかし、工夫次第では他の企業でも導入が可能なのではないかと語る。
「仮に大企業であっても、30〜50人程度の部署でプロトタイプ的に導入してみれば、効果のほどが実感できると思います。また、業績と給与を連動させるような仕組みを工夫すれば、社員のセルフマネジメントを促し、生産効率を高めることが期待できるでしょう。現在のSAWSは、決して完成形ではありません。これからもさまざまな改善を続けていきたいですね。また、地方自治体や他企業とも協力し、当社で実現できた働き方改革のノウハウを、さらに広げていきたいとも考えています」(古賀氏)
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