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日商エレクトロニクスRPA失敗事例に学ぶ、RPA運用定着ノウハウ実践−セミナーレポート

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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「轍を踏まないで」――失敗しない近道を伝授、日商エレクトロニクスのRPA導入支援とは

IT分野の専門商社である日商エレクトロニクス株式会社(東京都千代田区)は、ホワイトカラー労働者の定型業務を代替するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを2017年6月から取り扱い開始したの に併せて、自社内でのロボットの運用も進めている。このほど体制強化が発表されたRPA導入支援事業においては、まず1ユーザーとして率先して難題に取り組み、その成果を顧客に還元する方針が明らかにされた。スピード最優先で進めてきた社内のロボット化について失敗を整理し「早く・うまく導入するための参考に」と情報共有を図る同社が2月21日に都内で開いたセミナーから、ロボットの運用定着に向けたポイントを紹介する。

検討3週目で試験導入するも本格展開に壁

「RPAの導入検討開始から3週目にはツールのテストを始め、3ヶ月間のPOC(概念検証)期間中だけで30のロボットが、12業務で稼働を始めた。確かな効果がすぐ得られ、担当者が喜ぶ姿に手応えも感じたが、そのままでは早々に壁にぶつかることも同時に分かった」。RPAユーザーとしての自社が駆け出しだった当時をこう振り返ったのは、日商エレクトロニクスの青木俊氏(ビジネスソリューション事業本部企画開発室室長)だ。

同社のRPA活用プロジェクトは、定型的な事務作業が多いと見込まれた経営企画部・財務経理部・人事総務部の3組織を対象にスタート。ロボット化すべき業務をRPA担当者がヒアリングしていくのに並行し、RPAの講習を受けた現場の業務担当者7人がロボット化の対象を直接検討して作成を進めていった。

「ノンプログラミングで誰でも作成可能というロボットを、実際どの程度作れるか知りたかった」(青木氏)。業務負荷が大きいPC上での作業のうち、人による判断や承認が伴わないものという大枠だけ示したところ、ロボット化の候補に上がったのは合計44業務。その3割弱が実装までこぎつけたことになる。ここだけを見ればなかなかの成果とも思えるが、いったい何が問題だったのか。

緩やかな統制でスピード最優先の活用を進めた結果、同社でまず顕在化したのは、会社組織の規律を乱す“不良ロボット”が出現するリスクだった。「『その場にいない従業員の出退勤記録を残す』、あるいは『確認を促すためのボタン押下まで自動化する』といったロボットが、勘のいい社員なら15分程度で作れてしまうと分かった」(青木氏)。その一方、ツールの研修を受けてもあまり手を付けない社員がいたことから「過剰なほどロボット化する部署」と「ほとんどロボット化が進まない部署」との格差も鮮明になっていた。加えて、作成する際の基準だけでなく作成後の管理方法もあいまいだったことから、担当者がそのまま異動すれば即座に混乱をきたす危険性もはっきり見えていたという。

直面する課題は「ルール」「管理」「組織」

導入プロセスの道半ばで判明した、これら課題への方策について青木氏は、約20ページにわたって運用ルールをまとめた「デジタルレイバーガイドライン」をPOC後に作成したと説明。ガイドラインの確実な運用を担保するチーム「デジタルレイバーセンター」を情報企画部内に設けたことや、ここにロボット作成を得意とする人員を集約して各部署からの作成依頼に応じていることも触れ、社内におけるロボット活用の成否を握るポイントが「ルール」に基づく「管理」と、その実行を担う「組織」づくりにあることを強調した。

現在のところ、同社がロボットで達成した作業時間の短縮効果は対象業務を担当する従業員の総労働時間との比較で1割強にとどまっている。既にロボットを導入している企業の参加者からは「自社でも切実な問題」として、導入効果の拡大見通しについても質問が寄せられた。

これに対し青木氏は「当初7人が3カ月をかけ、簡単なものから順に30のロボットを作っていたのが、現在はデジタルレイバーセンターの2人がより高度なものを、2ヶ月で12体完成させている」と回答。「効率も導入範囲も右肩上がりであり、今後1、2年で費用を上回るメリットが出てくるとみている。併せて、機密性の高い業務への応用や、労働時間削減効果の検証などを通じ、ロボット導入の多面的なメリットも追求していきたい」と述べた。

「紙から逃げない」ロボット×OCRの最新ソリューションを投入

間接部門からの全社展開を掲げたRPA導入企業として、ロボットの活用領域拡大を至上命令としている同社が「決して逃げられない、必須の問題」(青木氏)と位置づけているのが「紙ベースのデータ処理の効率化」だ。この日のセミナーでは、その大きな武器となるOCR(光学文字認識)について、同社が検証を進めている最新ソリューションのデモンストレーションも行われた。

今回初公開となったソリューションは、世界トップメーカーであるABBYY 社のAI搭載型OCRエンジンをRPAツールと連携させたもの。「OCRをAIと連携させたことで、様式の異なるさまざまな書類から必要項目のデータを正しく抽出し、統一的なリストとして整理できるようになった」(ABBYYジャパン株式会社戦略営業本部の岡田學本部長)という。整理されたデータをRPAツールに渡すことで、紙からデジタルに変換した情報の受け渡しまでを一貫して自動化できるのが特長だ。

デモンストレーションでは、日商エレクトロニクス企画開発室デジタルレイバーコンサルタントの西澤智司氏が、3タイプの請求書を卓上型スキャナにセット。読み取られた発注番号や支払日、企業名、金額などのデータが自動的に整理されてCSVファイルにまとめられる様子や、このCSVの内容と会計システム上での登録内容との照合をRPAツールが自動実行する仕組みについて解説した。

この作業は実際に社内で行われている業務をモデルにしており「1%に満たない不一致を洗い出すため、これまで年間360時間をかけていた手作業」(西澤氏)が、エラー処理を除けば完全自動化することとなる。絶大な省力化と「1つのひな形を登録しておくだけで紙面上の項目配置を推測し、異なるタイプの書類を読み分ける」(岡田氏)AIの賢さを見せつける結果に、会場からはどよめきも。「この構成の構築に必要な期間は」「手書き文字でも正確に読み取れるか」など、突っ込んだ質問も相次いだ。

導入するまでのハードルは限りなく低いRPA。ユーザー企業の関心はツール単体から、他のテクノロジーと連携させながら広く・深く使いこなす方法へと移りつつある。そうした中、導入後の仕組みづくりと共に、「紙」というオフィスの難題に向き合う手段としてRPAを位置づけたコンセプトは、詰めかけた220人の期待を超えたものとなったようだ。

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