バッテリーレスの環境発電IoTデバイス「EnOcean」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(3/5 ページ)
IoTデバイスへの給電を不要にするバッテリーレスの「EnOcean」。数キロをカバーするエリアへと進化した新たなEnOceanの実力とは?
独自LPWAで広域もカバー可能に
一方、屋外利用に目を転じると、問題になるのは電波到達距離である。見通しのきく地点間なら200メートルほどがカバーできるというが、それでは他のLPWAに比較して短い。そこで開発されたのがEnOcean独自のLPWAだ。
2013年ごろからテストされており、LoRaWANやSigfoxなどの登場よりも少し早いが、「EnOcean Long Range」として規格化されたのは2017年のことである。こちらの規格では、モノポールアンテナ受信機を利用した場合で見通し3〜4キロ、フラットアンテナの場合で同6〜8キロの電波到達が実証されている。建物が密集する都市部ではこうはいかないが、300〜400メートルのエリアならカバー可能という。
他のLPWAと違うのはもちろん電池が不要なことだが、伝送速度も1250bpsとSigfoxに比べるとだいぶ高速だ。従来のEnOcean仕様では低消費電力に重きを置いて出力は1mWだが、こちらは10mWにして距離を稼いだ。ライセンス不要なのは同じだが、発電機構は屋外設置になることもあり比較的大電力が使える太陽光発電が有利な選択になるだろう。
既に2017年3月に日本で対応製品が提供(サイミックスによる)されており、第一号の適用例になったのはNTT東日本の農業IoTソリューションである。生育条件管理の自動化、生産性の向上および霜害、害獣、盗難の監視などの実証事件が行われている。
参考までに、他の近距離エリア通信仕様やLPWA仕様との主な違いを下表に示す。
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