「SD-WAN」最前線、WAN最適化の大きな潮流となるか?(3/6 ページ)
複雑化するインフラへの柔軟な対応が求められるWAN環境。最適な環境づくりの担い手として注目されるSD-WANの最新動向とは?
当初はMPLSネットワークコスト削減の目的でスタート
このような機能に注目するのは、広域に多拠点展開する大規模な企業がほとんどだろう。特に海外拠点で高価なMPLS回線を利用している企業の帯域を有効に利用する手段としては最適だろう。また、遠隔拠点にネットワーク運用管理技術者が不在である場合にも役に立つに違いない。そうしたユーザーをターゲットに、従来のMPLSネットワークのコストを削減し、遠隔拠点のネットワークを円滑に運用管理するものとしてSD-WANは登場した。
このSD-WANを最初に提供し始めたのは、スタートアップ企業である。SD-WANは通信事業者や拠点ルーターベンダーの寡占状態だったWAN市場に風穴を開けた。もともとONUG(Open Network User Group)というユーザーグループの要望を盛り込んだものだっただけに、システムを自前で運用する文化が浸透している米国でSD-WANのコンセプトは広く受け入れられた。
その最大の眼目はネットワークコストと運用管理コストが削減できることだ。特に、先進技術の採用に積極的で、システムやネットワークの運用管理を自前で行える技術者が多い米国だからこそ、ネットワークコストだけでなく運用管理コスト削減も最大のポイントになっているのだろう。
一方、日本国内では、MPLS VPNや広域イーサネットが比較的安価で、その一部を安価な回線に置き換えビット単価を下げることのコストメリットは海外ほど大きくはない。さらに、国内のWANは安価なブロードバンドベースのIP-VPNやインターネットVPNも非常に多く利用されており、既に十分にコスト最適化されている。
なにしろブロードバンドベースのWANは1回線月額1万円前後のものが多い。SD-WAN製品の拠点当たりの投資コストがこれに比べて高価な場合は、SD-WANを採用して帯域利用を効率化するよりも、これまでの延長線上で回線を増速したり回線数を増やしたりする方がメリットが大きいと考える企業が多い。
また、日本企業ではWANの運用管理を自営しようと考える企業自体が少ない。むしろアウトソーシング先のベンダーにSD-WANで運用管理の効率化を図ってほしいと考える企業も多い。さらに、ビジネスもアプリケーションもあまり変化せず、拠点も変わらず、クラウドも利用しないという企業では、SD-WAN導入の必然性に乏しい。
そんな事情もあり、日本で導入意欲が高まるには、欧米と比べて少し時間がかかると考えていたが、2018年の調査からは、SD-WANが国内企業にも受け入れられ始めている現実が明らかになってきている。
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