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取り扱い品目2万超の試薬メーカーが経験した初めてのERP導入、失敗と次の挑戦事例で学ぶ!業務改善のヒント(1/2 ページ)

在庫コントロールが難しい薬品業界にあって常時2万品目以上を取り扱うメーカーの業務改革。一度目に失敗した点を、どう改善したか。一大プロジェクトの奇跡を紹介する。

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 試薬メーカーである東京化成工業は明治27年(1894年)、和漢薬卸業「浅川商店」として始まった創業100年超の企業だ。昭和21年に現社名に変更後は化学メーカーとして、研究開発用試薬を軸に医薬品や化学品、電子材料など多岐にわたるニーズに対応した製品原料を供給している。現在は北米や欧州、中国、インドなどにも関連会社を置いており、従業員数は約国内外合わせると約800人、年商規模は数百億円にのぼる。


取扱品の一例(「ナノカーボン部分構造」(左)や「OLED」(右))(出典:東京化成工業)

 品目が多岐にわたることもあり、多様な製造設備を保有、常時2万8000以上の品目を取り扱う。取引先も、医薬や生物学などの研究機関や学術機関、エレクトロニクス系メーカーの研究開発部門など、多岐にわたる。これに加えて、受託合成や大量製造サービスも受け付けており、管理工程の異なる複数の製品を同時に供給している点が特徴といえる。プロセス系製造業の中でも、かなり高度な多品種少量生産を行っている企業といえるだろう。

 同社は国内外拠点で導入済みのERPについて、新たにデジタル変革を目指したリニューアルを計画しているという。本稿では代表取締役社長 浅川 誠一郎氏が語ったERP導入の本音と、反省を生かした次期リニューアルプロジェクトの狙いを紹介する(注)。


注)本稿は2018年4月10日開催のSAPジャパンプレスセミナー「中堅中小企業向けビジネスのアップデートと今後の戦略について」の場で取材した内容を基に編集部で再構成した。



管理精度向上、商機拡大にはROI評価を覆しても導入が必須

 同社の企業沿革をたどると、ITシステムの導入は非常に早く、1971年には既に在庫管理をシステム化している。さらに、1985年には米国に現地法人を設立、1999年にはEU(ベルギー)に拠点を置いている。そこからさらに、2005年には中国(上海)に、2008年にはインドに法人を設立、合わせて各地に物流拠点を置いている。


製造拠点や設備(出典:東京化成工業)

 しかし、意外にも同社がERPを導入したのは2003年、「SAP R/3」時代のことだ。前述の通り、当時は既に海外に法人を設立していた時期だが、当時はERPを導入していなかった。

 「高額な投資ゆえにROIだけで判断すると悪い結論しか出なかった。しかし、本格的なグローバル展開にはERPが必須と判断し、SAP R/3導入を決断した」(浅川氏)

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