PCを襲う新たな脅威、手を触れずにHDDを破壊するアレとは:468th Lap:金曜Black★ピット
「手を触れずにあなたのPCを破壊してみせましょう!」と唐突に言われても、にわかには信じ難い。だが、今のサイバー攻撃技術ならできないことでもなさそう……というか、できてしまった。
それは、セキュリティ企業のESETが発表した「ブルーノート」という新たな脅威だ。ミシガン大学などの研究者によって実証された攻撃は、ある種の「現象」だ。
しかもトンデモない破壊力を持つというではないか。これを悪用することで、手を触れることなく、遠くのPCであってもHDDを破壊できる。一体、どんな攻撃方法なのか?
研究者らによれば、ブルーノートはスピーカーから特殊な音波を発信することで、その近くにあるHDDが破壊できる。音波の振動がHDD内部の衝撃センサーに誤検知を起こさせ、読み書きヘッドを急停止させるのだ。この結果、HDDが損傷したり誤動作したりして、ファイルシステムが破壊される。実際にWindowsとLinuxでクラッシュが確認された。
ブルーノート攻撃を受けると、作業中のデータはパーになるし、最悪の場合、PCが二度と使えなくなってしまう。気分がブルーになる現象だが、クラッシュしたWindowsが表示するブルースクリーンと音楽用語の「ブルーノート」をかけて命名された。
例えば、何らかのマルウェアを使ってこの音波を発生させたら。そのPCのHDDを破壊するだけでなく、周囲のPCを巻き込んで破壊することも可能になりそうだ。ブルーノートはHDDなら何でも攻撃対象にできる。HDDを内蔵した監視カメラシステムを故意にクラッシュさせるという使い方もできるそうだ。
ただし、ブルーノート攻撃が成功するには100dB(デシベル)を超える大音量を数秒間(一般的なPCなら5〜8秒、サーバ仕様の堅牢HDDなら100秒以上)、HDDのすぐそばで発生させる必要がある。これはハードルは高いと安心するのは早計だ。人間の可聴音域外の音でも問題ないので、いつの間にかHDDが壊されるという可能性はある。
研究チームによれば、HDDのファームウェアを調整すればブルーノートの影響を受けなくなるというので、HDDの改良が進むことを期待したい。また、SSDを採用するPCは影響を受けない。
ブルーノートの理論は発表されたが、具体的な手法は未公表だ。すぐさま脅威になる可能性は高くないが、用心するにこしたことはない。
上司X: HDDに音波を浴びせてPCをクラッシュさせる技術が生まれたという話だよ。
ブラックピット: その名も「ブルーノート」ですか。
上司X: そう、ジャズやブルースで使われる特徴的なサウンドで……。
ブラックピット: はいはい、Wikipediaからの受け売りですね。自分で調べるから、その辺で結構ですよ。
上司X: ぐぬぬ。しかし、ブルーノート、恐ろしいじゃないか。
ブラックピット: まさか音でHDDを破壊するとは。カンベンしていただきたいものです。
上司X: しかも人間が聞こえない音で破壊できるというから、さらに恐怖は増すというものだ。
ブラックピット: 最近ではWindowsも安定して、しばらくブルースクリーンなんて見てないのですけどね。また頻発することになったらイヤですねえ。
上司X: そうだなあ。こういった脅威を明らかにする研究者たちには頭が下がるよ。ハッカーたちが悪用しないことを祈るばかりだよ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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