「マナミさん」「AIリーガルbot」の実力とは? チャットbot最前線:IT導入完全ガイド(3/6 ページ)
アスクルのECサイト「LOHACO(ロハコ)」の問い合わせ対応をするチャットbot「マナミさん」。誕生秘話と活用ノウハウとは。また、社内の不正を暴く「AIリーガルbot」など、組織内でのチャットbot活用事例も紹介。
チャットbotには親しみやすい「キャラクター」が必要
マナミさんのWebデビューは2014年9月。ところが当初、利用者は想定以上に少なかった。現在マナミさん運用を担当している小宮りか氏は、その理由をこう語る。
「当初から『マナミさん』にはキャラクター(人物イラスト)が必須だと考えていましたが、開始のタイミングでは、キャラクターデザインが間に合わず、LOHACOのロゴをキャラクターの代わりに表示してサービスを開始しました。それが、お客さまにサービスを理解してもらえなかった要因だと思います」(小宮氏)。
その後、社内で検討を重ね、すでにLOHACOサイトに登場していたキャラクターを用いることとし、スタートから約4カ月後に、チャット入力ボックスの横にマナミさんのキャラクターを配置できた。これにより顧客のサービス認知が格段に進み、マナミさんの利用数は10倍にまで伸びていく。
「このことでキャラクター設定の大切さを痛感しました。そもそもLOHACOはお客さまの『くらしをかるくする』ことをコンセプトにし、お客さまの隣人のような存在になることを目指したサービスです。もちろん、以前からFAQページは設けており、お客さまの自己解決は不可能というわけではありませんでした。しかしFAQを探して回答を見つけ出すことが苦手なお客さまもいらっしゃいます。そんな方に向けて、チャット上で回答したり、回答となる情報へのリンクを提示したりして、お客さまがすぐに欲しい情報へとたどり着けることを心掛けました。その際に、表情を持った親しみやすいキャラクターが必要だったのです」(小宮氏)
キャラクターに人間味をもたせるため、属性の設定にはこだわった。
「マナミさんは、LOHACOのターゲットである30〜40代の女性という設定です。一男一女の子供がいて、ペットは猫と犬を飼っています。その他にも、チャームポイントはお団子ヘアで、趣味は雑貨屋さんとカフェ巡り……といった細かいキャラクター設定を増やしていきました。雑談的な対話時の口調は『〜ですよね』などとくだけたトーンにし、Q&Aの内容に応じて表情を変える工夫もしました。そんなキャラクター設定と応答を考えるのは楽しい仕事です。キャラクターがあることで、開発、運用の側のモチベーションも上がります」(小宮氏)
ユーザーから送られる雑談にも、すこしひねった応答を返し、ユーザーを楽しませながらも、会話に区切りをつけてサポートサービスに本筋を戻すよう工夫しているという。例えば、「あいうえお」というメッセージが送られてきた場合に「らりるれろはこ!LOHACOについてのご質問はございますか?」といった具合だ。
ただし、顧客プロフィールや購入履歴などに関する問い合わせなど、個別対応が必要な問い合わせに対してマナミさんでは対応できないのが課題の1つだ。これに対応するため、16年11月にリリースされたLINE版マナミさんでは、顧客が希望する場合、有人対応に切り替える仕組みを作りこんだ。
チャットbot対応と有人対応を通して、顧客に寄り添う顧客サービスを貫くことで、満足度の向上や、ファン獲得につながったという。
「有人対応の最後に感謝されることが増えたり、お礼のお手紙が増えたり、差し入れのドーナツを送っていただいたりと、うれしい出来事がありました」(小宮氏)
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