見えてきた「5G」の世界、フェーズ1仕様とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)
次世代無線通信技術標準「5G」のフェーズ1仕様が確定した。「eMBB」「mMTC」「URLLC」と呼ばれる3つの技術に注目だ。
「5G」の主な要求事項
以上のユースケースごとに「5G」の要求事項をまとめたのが表1だ。ただしここに掲げられているのは、いわば努力目標であり、2020年にこの全てが実現するとは限らない。徐々にこうした数字に近づいていけるように、技術開発が将来的にも続いていくという、目安の数字として捉えてほしい。
実際の「5G」への移行はどうなるのか?
さて、ここで気を付けなければいけないのは、こうした性能や機能は「5G」用の新しい周波数帯を用いることを前提としていることだ。
NR技術は数百MHz帯から30GHz帯までの広い範囲の周波数帯をターゲットにして無線アクセス方式を一から考え直したものである。しかし先進的だからといって、既存の通信サービスをなくして一気にNRに移行する選択は現実的にはあり得ない。そこで、移行シナリオは次のように描かれている。
4Gの拡張、高度化
現在LTE基地局は4Gコアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)に接続している。その形態のまま、キャリアアグリゲーションや多値変調方式(256QAMなど)による高速化を進めて高度化しつつ、高スループットで面的なエリアカバレージを展開するとともに、NB-IoTをはじめとする低電力・広域利用可能なLPWA領域のユースケースのサポートも果たそうとしている。
5G導入初期段階:LTEとNRの併存、連携
2020年に商用展開が有望視されているのは、4Gコアネットワークの配下にNR基地局を位置付けるシナリオだ。NR基地局は単独ではなくLTE基地局と連携して稼働するため「ノンスタンドアローン5G」と呼ばれる。既に広いエリアをカバーして安定したサービスを提供している4Gコアネットワークを利用しながら、高速、大容量通信や多端末接続のニーズの高いエリアにNR基地局を立てて、NRならではの優れた特長を生かす構成である(図1のシナリオ0からシナリオ1への展開)。言い換えれば、LTE基地局のカバーエリア内で、ニーズがあるところだけ局所的にNRをアドオンする方法だ。
こうして新規設計や試験などへの投資を抑えながら、安定した品質で「5G」導入がスタートすれば、NRを利用したIoTサービスなどが活発化し、「5G」の技術的トピックの1つである「Massive MIMO」などの技術導入も加速すると考えられる。
5Gコアネットワークへの切り替え
その後、2020年代のどこかのタイミングで、コアネットワークをNR対応の5Gコアネットワークに切り替える。5Gコアネットワークは、上述した全ての要求条件に対応し、ネットワークを目的に応じて最適に分割して使えるネットワークスライシングに対応するものでなければならない。
切り替えが実現した時点で「5G」の普及期に突入すると思われるが、どのような形態をとるかは通信業者の思惑次第だ。図2のシナリオ1a、2a、2bに、LTEとの共存シナリオが示されている。5Gコアネットワークを利用した場合でも、LTE基地局をそのまま収容するケース、ノンスタンドアローン5Gを利用するケースがありうる。また、NR基地局がコアネットワークと制御情報もユーザーデータもやりとりする「スタンドアローン5G」(図2のシナリオ3および2a)が登場するのもこのタイミングである。
なお、高周波数帯を利用する場合、電波伝搬特性から従来のLTE基地局のように広い範囲をカバーできない場合が多いため、「スモールセル」の活用も「5G」のキーポイントの1つになると考えられている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.