「それは規約違反です」、死者に送られたPayPalからの手紙:474th Lap:金曜Black★ピット
誰しも、不治の病や不慮の事故で亡くなってしまうことはある。もちろん本人は無念だろうが、残された家族やパートナーにとっても、大切な人を失った傷を癒すにはある程度の時間が必要になるというものだ。
最近では、故人が利用していたネットサービスの扱いが問題になることが多い。故人のアカウントをそのまま保持するのは現実的ではないから、多くの場合は残された者たちが規定の手順に従って死亡証明書などを提出してアカウントの削除を申請する。
英国でPayPalのサービスを利用していたユーザーの遺族は、故人のアカウントを無事に停止できたものの、同社の無神経な対応で困ったことに陥っている。一体何があったのだろうか。
英国に住んでいたリンゼイ・ダードルさんは2018年5月31日、37歳の若さで亡くなった。1年半前に乳がんの診断を受け、その後、がんは肺と脳に転移した。夫のハワードさんは妻をみとった後で、幾つかのネットサービスに彼女の死を連絡した。
PayPalもその1つ。PayPalの規約に従って、ハワードさんはリンゼイさんの死亡証明書、遺言、身分証明書などを提出し、彼女のアカウントを停止する手続きをとった。
3週間後、リンゼイさん宛てにPayPalからダイレクトメールが送られてきた。「故人に手紙を?」とハワードさんはいぶかしげに開封したことだろう。手紙には「重要:この通知を注意深く読んでください」と書かれていた。そしてハワードさんはその内容にがくぜんとした。
「あなた(リンゼイさん)が死亡したことにより、約3200ポンド(約47万円)の未払い金が存在し、PayPalの規約15条4項に違反しています。この規約違反の解決のためにPayPalは法的手段に出る可能性があります」。
リンゼイさんが亡くなったことで銀行口座が凍結されたり、クレジット決済が停止されたりすることは当然だ。それによってPayPalの決済ができず、「規約違反」に該当することはあり得る。だが、亡くなった人に対して「規約違反です」と通知することは通常の対応なのだろうか。
ハワードさんはPayPalに連絡する。さすがにこれはマズいと思ったのか、PayPalは謝罪と債権を放棄を申し出た。PayPalからは「技術的問題によるバグ、人為的ミス、そして正しくないメールのテンプレートが使用されたという3つの要素が重なって、不快な思いをさせてしまった」という説明を受けたそうだ。
ハワードさんはパートナーを失った失意の中でPayPalとのやりとりを重ねるにつれ、「この経験を世に知らしめるべきだ」と、自らBBCに情報を提供したのだ。自身は「自分は理性を保っているし冷静な人間だ」と語り、告白が怒りや恨みによるものではないことを強調する。
もしかしたらPayPalは、これまでにも似たような対応を普通に行っていたのかもしれない。表面化していなかっただけで、ハワードさん同様に深く傷ついた人がたくさんいたかもしれない。今後は慎重かつ誠実な対応をしてほしいものだ。
上司X: PayPalが亡くなった人に規約違反の連絡をして一騒動という話だよ。
ブラックピット: 「死ぬのは規約違反」って、それはさすがにどうかと思いますよ。
上司X: いや、そんな連絡ではなかったようだよ。
ブラックピット: あれ、そうでしたっけ?
上司X: PayPal側は、「亡くなっているけど、未払いのお金があるよ」ぐらいのニュアンスで手紙を送ったつもりだとは思うな。
ブラックピット: でも、そもそも、亡くなった人宛てに送るのが間違いですよね。「死者にムチ打つつもりか?」といわれても仕方ないでしょう。
上司X: 確かにそれはあるな。もうこの世にいない人に連絡してどうするって話だ。
ブラックピット: しかるべきところ、今回のケースなら夫のハワードさんに連絡すれば、PayPalも債権放棄することもなかったんじゃないですかね。お金にまつわるサービスなのだからそこはそれ、ちゃんと回収しないと。
上司X: キミが言うとガメつく感じるから不思議だな。それにしても、亡くなった場合に未払いになったお金についてどうなるかはネットサービスを利用するときにチェックしておくべきだな。俺もキミもいつ不慮の事故か何かでこの世から消えるか分からないからな。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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