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部分導入か全体導入か、カスタマイズは必要か? クラウドERP導入前に確認すべきポイントを整理IT導入完全ガイド(1/3 ページ)

ERPの導入やリプレースは企業全体の業務に関わるため、慎重に検討する必要がある。「部分導入か全体導入か」「基本機能だけで運用できるか」など考えるべき点は多い。本稿では導入前の確認ポイントを整理したい。

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 「いよいよERPもクラウド移行が本格化か? 今どきの『クラウドERP』の最新事情と導入ポイント」では、クラウドERPが注目を集めている背景や、コストの考え方、導入を検討する際に押さえておくべきポイントについて解説したが、本稿では、クラウドERPの導入や、既にオンプレミスで運用しているERPをクラウドERPへ移行するに当たって留意すべき点について幾つか紹介したい。また、実際に製品やサービスを選定する際に鍵となる注意点についても、具体的な製品の機能を例示しながら解説する。

ERPのクラウド移行に当たって留意すべきポイント

IaaSへのリフト&シフト? それともSaaSへの乗り換え?

 ERPをクラウド化するといっても、IaaS環境で運用するERPとベンダーが提供するクラウドERPサービスとでは意味が異なる。両者の違いを混同したまま検討を進めると、社内で思わぬ認識の食い違いが生じる恐れがある。クラウドERPには、大きく分けて以下の2つの導入方法がある。

 1つは、オンプレミスで運用するERPを、クラウドベンダーが提供するIaaS環境に移行するというもの。いわゆる「リフト&シフト」と呼ばれる方式である。この場合、ERPのアプリケーションは自社で管理する必要があるが、インフラの運用をクラウドベンダーにオフロードすることで、負荷やコストを削減できる。

 そしてもう1つが、SaaS型のクラウドERPにリプレースするというものだ。既存のERPをリプレースする際は手間が掛かるが、リプレース後においては「バージョンアップ作業が不要」「月額課金型のため初期導入費用を抑えられる」「利用範囲やユーザー数を柔軟に増減できる」といったクラウドならではのメリットを受けられる。

 この両者は、ERPのクラウド化と言っても似て非なるものであり、クラウドERPを導入する際は、まずどちらの方式を目指すのかあらかじめ明確にしておく必要があるだろう。

クラウド移行の目的をあらかじめ明確化しておく

 実際に製品選定に入る前に、リプレースする目的を明確化することが重要だ。「他社がクラウドにしたから、うちもクラウドにしよう」という上層部の号令を受けて、目的が不明確なまま「まずリプレースありき」でプロジェクトを進めると、導入メリットが何も得られず、予算の無駄遣いに終わるケースもあり得る。

 また、業務現場、管理部門、経営層のそれぞれでERPに求める期待値や要望は異なるため、社内の認識を整理することも重要だ。なんとなくクラウド移行プロジェクトを進めても、いざ仕様を詰める段階になって「結局、何がやりたいのか」となり、結果的に行き詰まってしまう。

 ERPをクラウドへ移行することで、現場の利便性向上やコスト削減、インフラ運用管理の削減とさまざまなメリットがある。そのため、クラウドERPを導入するに当たり、まずは「何を優先させるか」を明確にした上で検討を進める必要がある。導入目的を判断軸として考えることで、クラウド環境でのERP運用とするか、クラウドERPにリプレースをするかで迷うことはなくなるだろう。

アドオン開発とバージョンアップに対する考え方をあらためる

 2000年代初頭のいわゆる「ERPパッケージブーム期」にERPパッケージを導入し、アドオンの追加やカスタマイズを施した企業は、バージョンアップの際に膨大な手間とコストを費やし、中にはバージョンアップを断念して老朽化したプラットフォーム上で塩漬け状態を余儀なくされたケースも少なくない。

 過去にこのような経験がある企業は、同じ轍を踏まないためにも、カスタマイズやアドオン開発はできるだけ抑えたいところだ。特にクラウドERPを導入する際は、大規模なアドオン開発を行うとクラウドERPならではのメリットが失われてしまうため、製品を選定する際は、自社の業務要件を広く満たす製品を選びたい。

 なおクラウドERPを導入するメリットの1つに、バージョンアップ対応が不要な点がある。ベンダーにより、自動的にアプリケーションのバージョンアップが適用されるため、今までのようにユーザーが膨大なコストと時間をかけてバージョンアップ作業を行う必要がなくなる。しかし、ベンダーによるバージョンアップ後の動作検証は必要だ。自動バージョンアップと動作検証をワンセットで考えた上で、クラウドERPの長期的な運用コストを見積もっておきたい。

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