成熟したネットワーク機器市場が2017年に急伸したワケ:すご腕アナリスト市場予測(3/5 ページ)
緩やかな右肩下がりの成熟市場であるネットワーク機器市場が2017年には急伸した。その理由を探りながらネットワーク動向に迫る。
ネットワークの市場調査結果を見てきたところで、ネットワーク機器に関する最近のトピックスについて幾つか触れておこう。
Office 365を意識したルーターの拡張機能
機能そのものがコモディティ化しているルーターだが、最近では多くの企業が業務基盤として利用するOffice 365を快適に利用するための機能が搭載されてきている。そもそもOffice 365を利用する際には、多数のセッションが生成されるため、プロキシなどが持つセッションテーブルの枯渇によって通信が遅くなってしまい、中には通信できない状況に陥ってしまうケースもある。
そこで、トラフィックを識別してOffice 365のトラフィックをオフロードすることで、その他の通信は従来通りの経路によってセキュリティを確保しながら、Office 365トラフィックだけを直接仕向けることができるようになる。具体的には、頻繁に変更されるOffice 365の接続先アドレス情報をルーター自身が自動的に取得し、その情報をもとにトラフィックの識別を行うことになる。多くの企業で業務アプリケーションのSaaS移行が進んでいることの証だろう。
なお、最近ではSD-WANの機能をルーターとして取り込み、センター側のSD-WANコントローラーとやりとりできるような、SD-WANゲートウェイの役割を拠点のルーターが取り込む動きもある。
進む管理基盤のクラウド化
通常ネットワーク機器を管理する場合、ネットワーク機器に直接入り込んで管理コンソールにアクセスし、実際の設定や状態の可視化、トラブルシューティングなどが行われてきた。それが昨今では、ネットワーク機器をクラウド環境で一元管理することが可能な製品が増えつつある。
例えばヤマハでは、「Yamaha Network Organizer(YNO)」と呼ばれる統合管理の基盤をクラウドに展開し、設定や可視化などが可能な環境を2016年ごろから提供している。無線および有線の一元管理という意味では、シスコシステムズが提供するMerakiは純粋なクラウドソリューションとして無線有線問わず管理でき、Hewlett Packard Enterprise(以下、HPE)が提供するAruba Centralと呼ばれるクラウド管理基盤でも、有線無線双方の管理が可能になっている。正直に言えば、複数のネットワーク機器を統合管理するためだけにオンプレに環境を用意するというのが、今の時代に適したものではなくなってきている傾向もあるようだ。
自律的なネットワークに向けた仕組み作り
エンタープライズ向けのネットワーク機器の中でも存在感が大きいのは、トップシェアを誇るシスコシステムズであり、彼らの動向が今後のネットワークトレンドに影響を与えてくることは間違いない。
最近はSDN(Software Defined Networking)」をWANに広げて考えるSD-WANなどのキーワードが広く話題になっているが、AIなどの技術を活用してトラフィックからふるまいを判断し、自律的なネットワークへと成長させていくという「インテントベース ネットワーキング」と呼ばれる考え方をシスコシステムズが2017年に発表している。
まさに自律的にネットワークが最適な環境を作り上げる世界は、SDNの先に企業が進むべき方向性の1つを示している。全ての企業がこの考え方を受け入れるかどうかは未知数だが、注目すべき内容だろう。
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