2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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2017年1月、「テンプスタッフ・テクノロジー」と「インテリジェンスの派遣」が統合して生まれたパーソルテクノロジースタッフ。国内最大級のIT・ものづくり分野のエンジニア派遣会社として、市場価値の高いITやハードウエアのエンジニアを、企業のニーズに応じて派遣し、働き方改革にマッチした働き方や雇用形態を提供し続けてきた。
そんなパーソルテクノロジースタッフでいま注力しているのが、RPAエンジニアの派遣事業だ。RPA普及期ともいえる現在、RPAエンジニアの人材事情はどのようになっているのだろうか。その取り組みについて、同社 執行役員 新規事業開発本部長 植木順也氏と、RPA推進部 部長 鈴木規文氏に話を聞いた。
RPA エンジニアに向く人材の傾向とは
──どのような経緯から、RPAエンジニアの派遣事業を手掛けるようになったのでしょうか。
鈴木氏: 2017年4月頃から、先進的な企業やコンサルティング会社、システム会社からRPAに関する人材の相談をいただきはじめたことから、お客様のニーズに応えるべく体制を整えました。昨年10月頃から引き合いが増え始め、現在も拡大を続けています。
──派遣するRPAエンジニアはどのように集めたのですか。
鈴木氏: 最初は当社にRPAツールの経験者はいませんでした。そのため、どのような技術要素や経験を持った人材なら親和性があるのかを自社で検証し、お客様に提案しました。私自身も社内のRPA導入プロジェクトに携わり、BizRobo!を用いてロボットの作成や管理をする立場にいましたので、現場の視点から、どのようなスキル、経験が適しているのかをアドバイスすることができました。幸い、就業先となる企業からも状況をよく理解していただけましたので、OJTをしながら一緒にRPAエンジニアを育てていきました。
──RPAエンジニアに向いている人材とはどのようなタイプでしょうか。
鈴木氏: 現在活躍している当社のRPA人材の中には、SEはもちろんのこと、もともとマクロやVBA、ETLツール、ワークフローツールを駆使して顧客の自動化を支援してきた人材が多いです。理由としては、現場の声を聞き業務を洗い出しながら開発を進める手法がRPA開発と似ているためです。また、中にはRPAツールは初めてでも、テストの自動化やWebからの自動情報収集などRPAに近い経験者や、Windowsの開発環境に馴染んでいるエンジニアもキャッチアップが早い傾向にあります。人物面では業務を改善通じて担当者に喜んでもらいたいという貢献意識が高い人材が多いですね。
──他にもRPA人材を扱っている派遣会社はあるようですが、そうした競合他社との違いはどこにあるのでしょうか。
鈴木氏: RPA人材派遣全体では、事務系の派遣スタッフにデスクトップ型のRPAツールの使い方を教育して派遣するケースが多いようですが、当社の登録者はエンジニアであるため、ITリテラシーが高いということが挙げられます。デスクトップ型・サーバー型のいずれのタイプのRPAも扱うことができます。
さらに当社所属エンジニアの中でも、RPAエンジニアとして配属されるのは上流工程やツールによる自動化の経験が豊富なエンジニアが中心です。そうした人材を研修後に派遣しているため、ロボット作成にとどまらず、エラー時の対応や複数のシステムとの連携など、より高度なカスタマイズができることも強みです。
RPA導入をご検討、またはすでに促進されている企業にとっては、立ち上げ期の課題を一緒に解決しながら進められるため、今求められるサービスであると考えています。実際、業務BPRやツール選定、RPAの運用ポリシーの作成支援に、当社のRPAエンジニア派遣をご利用いただいているお客様もいらっしゃいます。
派遣スタッフがITシステムをつくるための“作法”を心得ているというのは、やはり他にはない強みだと自負しています。もちろん、RPAのロボットづくりはシステム開発標準ほど強固なルールに縛るわけではありませんが、それでも一定のルールを決めておかなければ、実運用で変更に弱いロボットができてしまいます。これは、私自身が社内での導入で実感したことでもあります。
植木氏: また当社ではITエンジニアが4,000名近く業務従事しているため、求められるエンジニア像に対して訴求しやすいスケールがあると考えています。
RPA人材を育成するための手厚い研修プログラム
──RPAエンジニア派遣の顧客企業にはどういったところが多いですか。
鈴木氏: 現在、RPAエンジニアの派遣者数は70人ほどですが、引き合いのあるお客様の70%以上は従業員500人以上の企業です。大手企業から導入が進んでおり、検証フェーズから本格フェーズに移行して人員が必要となっている状況があるためです。業種別では、金融業、メーカー業、サービス業辺りが目立つものの、相談は多岐にわたり、ほとんどの業種から来ています。
──人材派遣と合わせて、求職者へのRPAエンジニア研修も行っていますね。どのような研修を行われているのでしょうか。
鈴木氏: 現在実施しているのは2種類の研修です。1つはRPA体感講座として昨年12月に開始しました。内容はRPAの基本となる動作(条件分岐やループ処理、ファイル入出力など)を、1日でたくさん触れていただくものです。BizRobo!を6、7時間ハンズオンで体感いただくのですが、先ほど申し上げたような上流工程経験者やVBA・マクロ、ETLツール、ワークフローツールによる自動化経験の豊富なエンジニアが参加し、RPAの基本となる動作や気をつけるべき点などを学びます。これまで160名の方に参加いただきました。
もう1つは、UiPathエンジニア育成研修で、こちらは1〜2週間かけたカリキュラムです。公式のeラーニングに加えて演習も実施するため、基本的な機能理解に加えてエラーの要素特定、例外処理への対応等もできるようになります。
──こうした研修は有料で行う企業も多くあります。あえて、無料で提供している理由を教えてください。
植木氏: 我々が派遣しているのはただ単にRPAが使えるエンジニアではなく、お客様の経営課題を解決するためのツールとしてRPAを使えるエンジニアです。当社のエンジニアとしてお客様先で業務させていただくにあたり、これまでの多分野における知識や経験と、RPAに関する知識を組み合わせることで、より高いパフォーマンスが発揮できるようになります。
決して特別な研修だとは考えていません。パーソルテクノロジースタッフのエンジニアとして、あくまで必要なスキルの一環として捉えています。
──今後のサービス展開や新しい取り組みなどについてお聞かせください。
植木氏: いまはお客様先で働く前に研修を行っていますが、今後は、就業中のRPAエンジニアの支援も行っていきたいと考えています。RPAツールがどんどん新しくなるなか、実業務におけるノウハウは現場で働いている人に蓄積されます。そこで、RPAエンジニア同士の交流会などを通して、就業先で役立つノウハウ共有ができると期待しています。
また、他のサーバー型RPAツールの研修も検討しています。そしてRPAの先にあるAIについても情報収集を行っています。
RPAエンジニアは、将来を見据えて社内に置くべき
──これからRPAを導入しようとしている企業に向けたメッセージをお願いします。
鈴木氏: 昨年1年間、私自身が導入する立場として苦労したことなのですが、本格導入した後にもRPAと長く付き合い続けるには、業務変化やエラー、イレギュラも想定した作りこみが必要だと痛感しました。RPAプロジェクトの初期段階から1人でもエンジニアが入ることで変更を簡易にしたり、エラー時に切り分けがしやすいログを残したりできます。また、課題が出てシステム部門とやり取りする際に、事象を正しく認識し伝えることが必要ですが、業務の言葉とシステムの言葉を“翻訳”する人がいるのといないとでは、コミュニケーションに雲泥の差が出てきます。
植木氏: RPAにおいては導入フェーズの企業が多いと見てはいますが、導入が進むにつれ、運用や保守工数の確保が必要になります。そうなるとメンテナンスを常駐者で行うことが求められるでしょう。プロパーの方で担う、外部ベンダーに委託するなどの手法がありますが、机を並べるロケーションに当社エンジニアを受け入れていただき、任せていただくこともやり方の一つです。お客様内にて当社エンジニアがBPRからロボットの変更や保守をタイムリーに対応することで、社員の方には非定型業務に集中していただくことができます。RPA導入の目的を生産性向上と捉えると、お客様内常駐で上流から携わるRPAエンジニアを置いていただくことのメリットは大きいと考えています。
現在は、パーソルグループ全体で、企業の働き方改革をさまざまな形でご支援していますが、エンジニア派遣領域を担う当社としては、RPAは人的リソースの効率化に劇的に寄与することができると考えています。今後も引き続きお客様の内側に入り、一緒に課題を解決できるRPAエンジニアを育成・派遣することで、労働力不足、生産性向上といったお客様の課題解消にむけた支援を行っていきます。
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