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「Office 2010」サポート終了まであと2年、Office 365、G Suite導入で見落としがちな5つの注意点(2/3 ページ)

「Office 365」や「G Suite」といったクラウドオフィススイートを導入するのに重要なのは、機能やコストだけではない。導入に当たり盲点となりがちな5つの注意点とは?

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導入前に見落としがちな5つの注意点

 「Office 365」や「G Suite」などのクラウドオフィススイートを導入する際は、機能やコストに目が向きがちだが、それ以外にも考えるべきことが多い。そこで、導入前に見落としがちな5つの注意点について解説しよう。

まず、Excelのマクロや関数の互換性をチェック

 パッケージ型からクラウド型のオフィススイートに移行する場合、まず考える必要があるのが、既存パッケージとの互換性だ。クラウドオフィススイート導入後も使用感を損なうことなく既存のデータを利用するためには互換性への配慮は重要である。

 特に注意すべき点が、「Excel」など表計算ツールで利用するマクロや関数だ。キーマンズネットで実施した調査「オフィススイートの利用状況(2018年)・前編」で利用中のオフィススイートの中で使用頻度の高いツールを聞いたところ、最も多かった回答が「Excelのような表計算ツール」であった(図2)。まだ、多くの業務でExcelなどの表計算ツールに依存する割合は高い。Microsoft Officeは現在のOffice 2016に至るまでに何回かアップデートを重ねているが、その都度マクロが動かないなど互換性に関する声も聞く。中小企業では、予実管理や実績管理といった重要な経営情報をExcelで管理する企業も少なくないため、オフィススイートを変えることでデータの不整合が起きないよう、影響範囲も含めて考えたい。

利用中のオフィススイートで使用頻度の高いツール
図2 利用中のオフィススイートで使用頻度の高いツール(出典:キーマンズネット「オフィススイートの利用状況(2018年)/前編」)

今のインフラ環境で万全か?

 クラウドオフィススイートは、コミュニケーションツールやクラウドストレージなどの機能も備えるため、今まで社内のファイルサーバに置いていたファイルやデータをクラウドで管理したり、チャットで会話しながらデータを共同編集したりする場面も増えるだろう。ただ、これらのツールを利用するには、当然ながらインターネット接続やWi-Fi接続が必須となる。

 これらのツールや機能を従業員が日常的に利用するようになると、インターネットやイントラネットのトラフィックは一気に増大し、さらにオンライン会議やビデオチャットなども加わるとさらに回線は圧迫する。そのため、クラウド型に移行する前には、ネットワーク環境の見直しも必要だ。

 特に古いプロキシサーバを利用している場合は、同時接続数が限られているケースが多いため、クラウドオフィススイートを導入することでプロキシサーバなどのリプレースが必要となるケースも考えられる。どうしても機能や使い勝手にばかり目が行きがちだが、業務に支障なく利用するにはインフラ環境にも目を向けたい。

自社のセキュリティポリシーを策定する

 Office 365は「OneDrive」、G Suiteは「Googleドライブ」といったクラウドストレージを提供している。社内のファイルサーバや外部のストレージサービスと併用する企業もあるだろうが、クラウドオフィススイートを導入する場合は、それらに付随するストレージサービスを利用することでシームレスなファイル共有や連携が可能となる。

 組織内外のユーザーとも簡単にデータを共有できる利点があるが、フィッシングメールといった手口により、何者かにIDやパスワードが盗まれ、クラウドストレージ上の機密データが盗まれるリスクもゼロではない。安全に利用するためには、利用者はクラウド上に保存して良いデータかどうかを慎重に見極める必要がある。ただ、その判断を従業員個人に任せるのではなく、組織主導で運用ルールやポリシーを策定し、従業員に周知すべきだろう。

導入設計と従業員のITリテラシー

 クラウドオフィススイートは、Office 365であれば「Word」「Excel」「PowerPoint」、G Suiteであれば「Googleスプレッドシート」や「Googleドキュメント」といったオフィスソフトだけにとどまらない機能を備え、それらを連携できるのが大きなメリットだ。ただ、機能が多いだけにどう利用すれば良いか分からず、いつの間にか使われなくなる機能も出てくるだろう。そのためにも、導入前に提供される機能を全体的に考え、それぞれの機能をどう組み合わせて活用するかを戦略的に考えるべきである。

 また、クラウドオフィススイートは、管理者に事前の告知はあるが、機能が頻繁に追加されたり仕様が変更されたりすることもあり、「ある日突然、ボタンの位置が変わった」などと利用者が混乱する可能性もある。また、使い方や操作法を覚えてもアップデートにより過去のマニュアルはすぐに役に立たなくなる場合もある。そのため、ユーザーには使い方を理解する力が求められる。利用を推進する立場の人間は、導入の際に従業員のITリテラシーも併せて考える必要がある。

費用を考える場合はトータルコストで考える

 コストについては、「そろそろ移行を考えるべき?『Office 365』『G Suite』導入につまづく原因はどこにあるのか?」でも触れたが、パッケージ型からクラウド型への移行コストを考える場合、単純にツールの利用料金だけではなく、移行後のトータルコストで考えなければいけない。

 パッケージ型のオフィススイートの機能としては、あくまでもオフィスソフトが中心であり、クラウド型のオフィススイートのようにストレージや情報共有ツールなどは含まれない。また、メールサーバも自社やレンタルサーバで運用する場合は、運用費用もかかるだろう。これら全てを、クラウドオフィススイートに置き換えた場合に、どうコストが変わるかを考える必要がある。

 また、コストをできるだけ抑えたいという思いも理解できるが、その点だけではなく、Office365やG Suiteを導入することで得られる価値についても目を向けたい。

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