2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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「働き方改革」が叫ばれる中、人的リソースを補う仮想知的労働者(デジタルレイバー)として期待されているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。その利用拡大とより高度な活用に向けて、RPAソリューション「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズ株式会社(東京都港区)は2018年8月1日、同ソリューションの導入企業を対象とした「BizRobo! ユーザーコミュニティ」を創設。8月27日にユーザー交流会「第1回 BizRobo! CAMP!!」を都内で開いた。デジタルレイバーと協働する職場づくりに取り組む企業の実務者にとって、会社の枠を超えた「ヨコのつながり」がもたらすメリットとは何だろうか。当日の模様をレポートする。
「成功事例のアピール」から「失敗と課題の共有」へ
BizRobo! のユーザー同士が集う初の機会となったイベントには、首都圏を中心に全国の導入企業から約80人が参加した。開催の狙いについて、イベントを企画したRPAテクノロジーズのカスタマーサクセス部長・藤田守氏は「『ツールの導入』ではなく『職場にデジタルレイバーを定着させること』がRPAの目的。そこで主役となるのはあくまでもユーザーで、われわれベンダーとしては真に役立つ知見をユーザー間で共有できるようにしたかった」と話す。
さらに藤田氏は「RPAの導入が進み、デジタルレイバーを全社的に定着させる段階へと入った現在、多くのユーザー企業は共通の課題を抱えている。オープンな講演の場で語られるような成功事例だけでなく、他のユーザーの失敗や今後の課題も大切な情報だ」と説明。「ロボット運用のスケールアップと深化を目指す企業同士が、最前線で“ありのまま”の実態を把握できる場にしていきたい」と意気込みを語った。
ロボット活用の「仕組み」と「人材」をどうつくるか
この日の催しでメインとなったのは、BizRobo! ユーザー3社による自社の取り組みの共有。最初に登壇したGMOクリック証券株式会社の古澤和也氏は「ビジネス部門主導でのRPA活用の取り組み」と題し、業務改革プロジェクトの一環として2017年3月から導入しているBizRobo! の運用状況を報告した。
古澤氏は、一時思うように業務のロボット化が進まず、作成したロボットの運用も定着しない時期があったと振り返り、対象業務の分析やロボットの仕様を工夫してきたと説明。また「手作業で業務が回っているのに、わざわざ新しくツールの操作を覚えてまで取り組む必要があるのか」など、現場から上がりそうな疑問に対しては、あらかじめロボットの推進担当者自身が「納得できる回答」を持っておくことが大切だとした。「『現場の業務をよく知っているあなただから(ロボットに代替させることが)できる』など、意義をしっかり説明すると協力が得やすい」(古澤氏)という。
続いて登壇したRPAホールディングス株式会社の浦田隆治氏は、RPAツールのベンダーであるRPAテクノロジーズを傘下に持ち、今年3月に株式上場したばかりの自社がユーザーとしてBizRobo! を活用している状況を報告。「成長企業では取引と従業員が急増し、それらの管理で多忙となりがちだが、当社はロボットを活用することで月次処理にかかる日数を減らし、管理業務の平準化に成功している」と述べ、ロボット導入前後の業務処理時間を具体的な数値で比較した。
ロボットの活用を拡大するコツについて浦田氏は「管理部門における入力作業のように、人間ならではの創造力・判断力を必要としない部分がターゲット。ロボットが作業しやすい状態に、いかに仕向けられるかがポイントだ」と述べ、ロボットに委ねる業務の整理法を解説。また同時に、ロボットと協働する人間の側も多様な働き方で生産性向上を図っているとして、時短勤務やリモートワークで事業に参画するスタッフの例を紹介した。
3番目のセッションで登壇した松本宗一郎氏は、関連18社がコンサルティングや人材サービスなどを展開する「レイスグループ」内で1年半前からRPAの企画開発と運用を担当。社員で唯一のRPA担当者でありながら、ここ半年あまりの間は8人の学生インターンを率いて350体のソフトウエアロボットの開発に成功したという。若い学生の力を借りた業務改善という“型破り”なアプローチに、会場からは驚きの声が上がった。
松本氏は「ヘッドハンティングを手がける自社の強みを生かし、ITに苦手意識がない上位校の学生を破格の時給で集めた。専門業務に関するロボット化でも、一度私が取り持てば、あとは現場と学生が直接やりとりして進めている」と説明。さらに「私がRPA専任であることも大きい。他の業務に追われない環境で技術をしっかり理解してから学生を集め、ロボット化の態勢が整ったところで能動的に社内営業をかけたからこそ350体をつくることができた」と振り返った。
つながりで得られる“発見”と“勇気”
各セッションのユーザーが自社の取り組みを包み隠さず話しただけに、発表後の質疑の場では他のユーザーからも取り組みの現況が明かされたほか、核心に迫る質問が続出。登壇した3人は「社内のロボット開発担当者に必要なITリテラシーの程度は」「BizRobo! の競合となる他社ツールとどう使い分けているか」「ロボットの誤操作でデータ処理のミスや情報漏えいが起こるリスクにどう備えるか」「作成したロボットに関する文書をどの程度詳細に残しているか」といった踏み込んだ内容にも具体的に答え、密度の濃い情報共有が続いた。
質疑の後は、参加者全員で集合写真を撮影。続いて設けられたネットワーキングの時間には軽食も用意され、初の催しで初対面同士が多かった参加者も、名刺交換から始めてすぐ打ち解けた雰囲気に。同じBizRobo! ユーザーとして共通する関心事について熱心に意見を交わす姿が各所でみられた。
3時間半にわたった交流の場は夕刻、盛況のうちに散会した。帰路につくある参加者は「他業種のユーザーと話す中で、技術的に共通のトピックに関しても自社とは異なる視点が得られた」と満足そうな表情。別の参加者は「RPAは新しい技術で分からないことだらけ。自社でどう進めるべきか迷うことも多かったが、先行するユーザーから今日『まずはやってみて、失敗から学べばよい』と聞き勇気が出た」と晴れやかな表情をみせていた。
主催側の藤田氏は「初回だけに不十分な点も多かったが、参加者の声をフィードバックして改善し、少なくとも四半期に1度のペースでRPA推進担当者同士の交流を続けていきたい」と総括。「今後も開発者向けの勉強会など、ユーザーに役立つイベントを一層充実させていきたい」と話していた。
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