ライセンス監査を受けた企業の60%以上で追加費用が発生:すご腕アナリスト市場予測(2/5 ページ)
ソフトウェアに関するライセンス監査では、実施企業の60%以上で追加費用が発生するという結果が出た。監査の実態に迫る。
ライセンス監査が一般化しつつある背景
半数以上の企業でライセンス監査を経験している状況にあるが、なぜ今ライセンス監査が盛んに行われているのだろうか。
まず考えられるのは、新たなテクノロジーへの切り替え時期がやってきていることが1つの要因として挙げられる。例えばSAPでは旧バージョンのSAP R/3や現行のSAP ERPなどの保守サポートが2025年に終了する「2025年問題」があり、Microsoftではオンプレミス版のデスクトップアプリであるOffice 2010が2020年10月13日、最新のOffice 2016も2025年10月14日には延長サポートが終了することが明らかになっている。
ソフトウェアベンダーとしては、新しいテクノロジーへ移行してもらう前に、現状の棚卸を実施しておきたいと考えるのは自然の流れだろう。当然ながら、クラウド化の流れが加速するなかで、オンプレミスユーザーの利用状況をあらためて確認しておくという意図もあるはずだ。
そしてもう1つが、ソフトウェアベンダーの企業買収や統合などが活発化するなかで、買収した組織のアプリケーションをユーザーがどのように使っているのかの実態をつかむために、ライセンス監査というアプローチをとるケースもあるだろう。
他にも、昨今ではAIやIoTといった新たなテクノロジーへの機能拡張なども盛んに行われており、以前に比べて企業のアプリケーションが一様でなくなってきている。その実態把握の意味でも、監査を実施したいと考えるソフトウェアベンダーは少なくないはずだ。
海外と事情が異なる監査対応窓口の存在
ソフトウェアベンダーのライセンス監査に対応するのは、日本の場合は最初にライセンス契約を行った部署、その多くがIT部門の管轄になるケースが多い。ただし海外の場合は、そのための専門職種による対応が一般的で、日本とは事情が異なっている。具体的には、ライセンス監査への対応やソフトウェア資産を管理するための専門の職種であるSoftware Asset Managerがその役目を担っている。
この違いは、日本と海外のIT投資における領域の違いが影響していると考えられる。開発サービスやSIサービスの方がライセンスに対する支出よりも多い日本に比べて、海外ではソフトウェアの持つベストプラクティスをうまく活用するカルチャーが強く、交渉相手がSIerよりもソフトウェアベンダーが中心。だからこそ、アセットとしてライセンスをしっかり管理する役割が求められてくる。
日本はまだその状況にはなっていないが、いずれクラウドを採用すれば、1年や3年という短期間のなかで契約更新していくことになり、新しいルールや条件がその都度追加されてくる。クラウド化することで資産管理としての役割は減っていくものの、交渉窓口としてソフトウェアベンダーと交渉する機会は増えていくことになるため、Software Asset Managerのような職種が日本でも台頭してくることが考えられる。
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