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導入しただけで満足していない? RPAで得るべき本当のメリット

RPAを導入したのに効果が出ない――ある企業が800%の投資対効果を達成する一方で、ある企業はこのような悩みを抱えています。その明暗を分けるものとは何か、企業はRPAで何を目指せばよいのか、事例を交えて紹介します。

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 こんにちは、Blue Prismの志村です。RPAの熱が高まるにつれて導入企業が増えています。しかし期待していた効果が得られず、導入企業からは「投資対効果が上がらない」「経営的なインパクトが得られない」といった声も上がっています。

 なぜ期待するほどの効果を得られないということが起こるのでしょうか。これはRPA導入に際して、全社的な業務自動化の取り組み、すなわち「エンタープライズRPA」の視点が欠如していることに起因しています。

 とはいえ、RPAを全社に浸透させ、効果を最大化することは容易ではなく、越えなければならない壁がいくつも存在します。例えば、セキュリティや内部統制の問題を整理しないままに横展開を進めれば、企業にとって大きなリスクとなるでしょう。

 そこで本連載では、エンタープライズRPAの導入と運用を成功に導くためのポイントを5回に分けて解説します。RPA活用を本格化させたい企業はもちろんのこと、これからRPA導入に着手されるという方もぜひ参考にしてください。

 第1回となる本稿では、そもそもなぜRPAに取り組むべきなのか、その「目的」を理解いただくため、まずは正しくRPAを導入および運用できた場合のメリットをお伝えしたいと思います。なお、本連載ではRPAツールによって作られたロボットを「デジタルワーカー」という名称で呼ぶこととします。

完全まとめ、RPAの導入効果

 RPAは「業務効率化」「コスト削減」という文脈で語られることも多いですが、実際には以下のようなさまざまな導入効果が期待できます。

RPAの導入効果
人と比べて、デジタルワーカーは仕事のスピードが圧倒的に早く、24時間365日稼働できるため膨大な仕事量をこなせる
ヒューマンエラーを削減して仕事の正確性が高まる
顧客対応の業務に適用した場合、対応時間が短縮されることにより顧客満足度が向上し、質問に対する回答品質が上がることで問い合わせ数の削減が見込める
従業員がデジタルワーカーの活用方法を熟知することによって仕事の設計が大きく変わり、これまでできなかった付加価値の高い業務により多くの時間を割けるようになる
従業員が単純作業から解放されて、よりやりがいのある業務に従事できるため、モチベーションや満足度が向上して離職防止の効果が見込める
個人情報や機密データに関する仕事を、人ではなくデジタルワーカーに任せることで、データ改ざんなどの不正を防止できる
RPAとAIの連携によって、より高度な業務が自動化でき、さらなる生産性の向上が見込める(AI-OCR、テキスト分析、チャットbot、アンチマネーロンダリングなど)

RPAの本質的なメリットは「事業価値の創造」

 上記の例は「スピード」「量」「品質」「顧客満足度」「従業員満足度」「コンプライアンス」「生産性」といったカテゴリーに分けられますが、RPAの本質的なメリットは、自動化により創出できた時間を活用できることによる「事業価値の創造」ではないでしょうか。

 現在、RPAツール「Blue Prism」のデジタルワーカーを70台ほどご活用いただいている大手資産運用会社のフィデリティ・インターナショナルの事例を紹介しましょう。従来、同社では業務部門がIT部門に対し、年間で約200件のシステム開発に関する新規および変更の依頼をしていました。しかし、実際にリクエストが受け入れられたのはたったの10件だったそうです。システム開発が追い付かないことで、業務の効率化もままならない状況でした。

 一方、Blue Prismの導入後は、業務部門側でロボットの運用体制をしっかり構築できたこともあり、IT部門に頼らず業務部門主導で自動化プロジェクトの推進が可能になりました。その結果、業務部門では付加価値の高い業務に人のリソースを投入できるようになり、それまで諦めざるをえなかった新しいことにもどんどん挑戦できているそうです。これはまさに、RPAが「事業価値の創造」に貢献しているよい事例だと思います。

ROIが約800%のケースも、エンタープライズRPAとは

 こうしたメリットは、全社的な業務自動化の取り組みがあってこそ得られるものです。部分的な導入に止まるデスクトップ自動化に対して、前述の通り、全社的な業務自動化の取り組みのことをエンタープライズRPAといいます。

 デスクトップ自動化は“Excelマクロ”のようなEUC(エンドユーザーコンピューティング)と同じで気軽に導入でき、デスクトップにおける個人の作業を効率化できるものの、効果は限定的です。また、作成したロボットの保守性が悪く、会社としてガバナンスが効かないというデメリットもあります。上述した事例のような大きな成果を上げるためにも、RPAは部門単位ではなく組織横断で取り組むべきテーマなのです。

 非常に競争が激しいこのご時世、最新のテクノロジーを活用して競争力を高める努力を怠る企業は、今後衰退する可能性が高いと思います。

 ここでもう1つ事例を紹介しましょう。欧州の大手通信事業者であるテレフォニカO2では、Blue Prism導入後、わずか3年間で160台までデジタルワーカーの規模を拡大し、約35%のバックオフィス業務の自動化に成功しました。そして、ミッションクリティカルな顧客サービス領域でも自動化を推進した結果、顧客対応のスピードや品質が向上したことで問い合わせの総数が約80%も減り、全体の投資対効果としてはおよそ800%を達成しています。エンタープライズRPAの取り組みによって企業の競争力を高めることができたケースといえるでしょう。

 まだエンタープライズRPAの取り組みを開始していない企業は、競争優位性を築くためにもぜひ検討してみてください。

 エンタープライズRPAの導入と運用を成功に導くためには、まずRPA製品自体に拡張性、耐障害性、セキュリティ、コンプライアンスといった特性が備わっている必要があります。そして製品のよさだけでなく、車輪の両輪として、成功に導くための運用モデルも必要です。これらのポイントについては次回以降の記事で詳しくご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。

著者紹介:志村裕司

Blue Prism ソリューションコンサルティング部長

野村総合研究所、セールスフォース・ドットコム、Box JapanといったIT企業で活躍後、Blue Prismに入社し、日本ビジネスの立ち上げメンバーとして尽力。プリセールス活動を中心に、導入プロジェクトへの参画やイベントでの講演も数多く務める。

企業紹介:Blue Prism

RPA(Robotic Process Automation)ソリューション、「Blue Prism」を提供する企業。2001年に創業以来、RPAのパイオニアとして、約15年にわたり世界中の企業における新たな働き方の実現を支援してきた。「エンタープライズRPA」というコンセプトのもと、拡張性、耐障害性、セキュリティ、コンプライアンスといった機能を提供し、クラウドやAI(人工知能)との連携もサポート。Coca-Cola、Pfizer、IBM、Nokia、Siemens、Zurichといった有名企業で多くの実績を持つ。

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