ビデオ会議、カメラが変わるだけで何が変わる? シスコの提案: 「ビデオ会議」の規模を超えた遠隔撮影も可能
プロカメラマンの配備なしで大会議室を撮影、遠隔でカメラワーク操作も可能な製品が登場した。「会議」の前提が大きく変わる可能性を秘めたシスコの提案を取材した。
シスコがビデオ会議ソリューションにソニー製カメラを採用する。カメラ分離型HDビデオ会議ソリューションとして2018年12月から発売する予定だ。ただのビデオ会議システムに、シスコはなぜハイエンドカメラを採用するのだろうか。プロ仕様のカメラで今までのビデオ会議の在り方はどこまで変わるというのだろうか?
2年半に及ぶ話し合いで成立した協業
シスコシステムズ(以下、シスコ)とソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(以下、ソニー)は2018年10月16日、協業に関する合同発表会を開催した。シスコのビデオ会議システムにソニー製カメラがラインアップされるという。
シスコシステムズ会長の鈴木和洋氏によると、両者の協業に向けた対話は2年半にも及んだという。「優れた技術を採用することで、シスコのネットワーク技術とのシナジーが起こることを期待している」(鈴木氏)
今回の協業によりシスコのビデオ会議ソリューション「Cisco TelePresence」に含まれる「Cisco Webex Room Kitシリーズ」に、ソニー製カメラを採用した「Cisco Webex Room Kit Plus PTZ」が追加される。ここで、今回の協業のカギとなるのが「PTZ」だ。
「パン、チルト、ズーム」で会議の何が変わる?
今回、ソニー製カメラが追加された「Cisco Webex Room Kit Plus PTZ」は、「Cisco Webex」製品ポートフォリオの中でも「中大会議室向け」として位置付けられている。
ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ プロフェッショナル・プロダクツ本部 副本部長 小島政昭氏によると、「PTZカメラ」は、遠隔操作でカメラのパン(横回転)、チルト(縦回転)、ズーム(拡大)が可能なため、1台で会議室全体をカバーできる点が特長だ。
「このPTZ(パン・チルト・ズーム)カメラは、専任のカメラマンがいないような大きめの会議室などで利用されることを想定した製品。ソニーグループが長年培ってきた技術が多数応用されている」(小島氏)
つまりは、この製品があれば、大きな会議室でも1台で発話者にズームしたり、全体を表示したりといった操作を、プロカメラマンを配置することなく遠隔から操作できるようになる。これにより、大会議室であっても、詳細を確認したり、発話者の表情、あるいは手持ちの資料などへのズームといった、臨場感ある映像を遠隔地に届けることができるようになる。しかも、導入するのは1台のカメラで済む。
プロ仕様のカメラともなるとセットアップやチューニングに一定のスキルが必要そうに思えるが、この点はソニーとして出荷時の品質を保証している。小島氏によれば、同製品では出荷前に1台ごとにAE(露出)とAF(ピント)、そしてAWB(ホワイトバランス)といった重要な機能の検査と調整を行っているという。導入後に現地で技術的な問題が生じることがないよう、細かな調整が図られている点は安心材料となるだろう。
なおシスコは、今回発表した「Cisco Webex Room Kit Plus PTZ」以外でも、ソニー製カメラを採用したビデオ会議ソリューションのラインアップを拡充し、日本国内およびアジア市場にて販売展開する計画としている。ソニーとしても、この協業を皮切りにシスコがグローバルで持つ販路を介してビデオ会議システム向けカメラの販売に注力する計画だ。
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