チャットbot導入で念願の“ハワイ旅行”に、激務すぎる担当者の喜び:事例で学ぶ! 業務改善のヒント(2/2 ページ)
1000以上の項目がある社内規定について、従業員からの問い合わせが殺到していたメタルワン。チャットbotによって担当者の業務はがらりと変わった。同社のチャットbot導入プロジェクトとは。
AIだけに頼ると100点満点の答えを引き出せない
約3カ月でチャットbotは完成した。事業投資総括部で試用すると90%以上の回答率を得られた。ところが、同じチャットbotを営業部門で利用すると回答率が50%以下に落ち込んだ。意外な落とし穴があった。
原因は、質問者が使う言葉のゆらぎにあった。炭元氏は「営業部門ユーザーは社内規程で使う独特の表現に慣れておらず、一般的な口語表現でチャットすることが多かったのです。質問内容と社内規程で使われるキーワードを結び付けることが難しく、質問の半数が結果にたどり着けませんでした」と話す。
例えば社内規程には「経伺(けいし)」という言葉があるが、この単語を使って質問する人は少ない。そこで社内規程の文言を一般的な口語表現に言い換え、両者を結び付けるための類語集を作成した。「◯◯についての申し立て」という問い合わせに対して「経伺」に関連する回答が表示されるようにしたことで回答率は格段に改善した。
MZbotが搭載するレコメンド機能とサジェスト機能も回答の洗練やチャット回数の削減に役立った。前者は、複数の関連する規程を参照しなければならない場合、関連する規程を自動的に選出し、該当する場合はその規程にジャンプする。また後者はユーザーが質問文の一部を入力するだけで回答候補を複数提示する機能だ。レコメンドする内容を最適化したり、言葉を自動的に読み替えて曖昧な質問文に対応したりできるよう、カスタマイズも行った。これらの機能と工夫によって100点満点に近い受け答えに早くたどり着くチャットbotの実現を目指した。
社内規程を調べることにもノウハウが必要だ。例えば投資計画の審議に関する質問があれば、まず「その案件は既存か、新規か」を確認する。人の頭の中にあるノウハウや方法論を総動員して応対しなければならない。
同社のIT戦略をけん引するコーポレート管掌役員補佐(IT)の安達 譲氏は「機械学習で確率論的に回答を絞り込むだけでは、人手による応対の精度を実現するために途方もない時間がかかります。AIによる機械学習と人間によるルール設定を組み合わせることで、メンバーの頭の使い方を短期間でチャットbotに『移植』できました」と総括する。
チャットbotの登場で現場の働き方は大きく変化した。時差のある海外からも社内規程を確認できるようになり、利便性は各段に向上した。問い合わせ対応に追われていたチームでは人力による対応数が減り、一部の知識を持った人への依存も解消された。
ある社内規程のエキスパートは、チャットbotの恩恵を受けた1人だ。不安もなく長期の休暇が取れるようになり、ハワイ旅行を満喫したのだった。
(後編に続く)
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