「残業させるな」そのムチャぶり、どうする?:こうして職場が病んでいく
部下がまた残業をしている。会社からは「残業させるな」といわれるが、仕事は減らない……。どうしたらよいのか、お悩みではありませんか。
今日もあなたの部下はまた残業している。そんな部下の姿を見て、「何にそんなに時間がかかっているのだろう?」「今まで何をやっていたのだろうか?」と、つぶやいてしまうことはないでしょうか。
働き方改革の一環として、“長時間労働の削減”や“ノー残業Day”を掲げる社内。「あなたの部署は、残業時間が先月から減っていない」という人事部門からの指摘を受けてしまった。しかし、仕事は減らないし、人も増えない。一体どうやって達成したらいいのだろうか――。こうした悩みを抱えてはいませんか。
私は、10年以上企業向け教育教材の開発に携わっており、昨今では不調者を生まない組織、社員がいきいき働ける職場づくりをテーマに、管理者への教育教材を開発しております。管理者がどのようなことを意識すれば「健康いきいき職場づくり」ができるのかを皆さんと共有したいと思います。
初回は、長時間労働への対応をテーマに管理者としてやるべきことを紹介します。
普段から部下を見ているか?
残業をなくすためには、「個人への対応」と「職場としての対応」の双方が重要です。まずは、前者のポイントを紹介します。
あなたは、部下の残業時間を正確に把握していますか?まずは、残業が多い社員への対応が必要です。
何が残業の原因になっているのかをヒアリングすると「業務量が多い」という答えが返ってくることがあるでしょう。この際に「Aさんはできていたので君もできるだろう」と比較して決めつけてはいけません。こなせる業務の量は個人差があり、その人の経験とスキルで対応するには「業務量が多い」ということなのです。
どうすれば時間内に終了できるのか話をすることが必要です。もしかすると、要求以上の事をやろうとして、あなたの想定以上に労力を費やしてしまっているかもしれません。その場合は、完成形のイメージを共有する必要があります。また、部下が「やり方が分からず周りの人に聞きたいけれども、迷惑を掛けてしまうので聞きづらい」などと感じている場合は、そもそも職場に助け合う風土が欠けてしまっているのかもしれません。原因と対策はさまざまです。その部下と向き合い、対策を一緒に考えることが大切です。
また、長時間労働になってしまう前にできることがあります。1つは部下が取り組んでいる業務の進捗を確認することです。これは、残業防止だけでなく、部下のミスを防ぐためにも大切なことです。「何も言って来ないから大丈夫」と思い込んでいると、何か事態が起こってからしか連絡が来なくなり、事後対応に追われることになります。
もし上司であるあなたが毎日忙しく、それが言動として表れていると、部下は「邪魔をしてはいけない」と感じているかもしれません。普段から相談しやすい雰囲気を心掛け、ときには上司から部下に声をかけて様子をうかがうことが大切です。
「体調への配慮」も忘れてはいけません。残業が多い従業員は心身の健康状態を崩しやすくなっています。単純なミスが増えてきた、遅刻や欠勤が増えてきた、少しのことでイライラしているなど「いつもとの違い」がないか、観察が必要です。「何か様子がおかしいかも」と少しでも感じたら、早めに声をかけましょう。その際、プライバシーも配慮し、場所を変えて話をするのが良いでしょう。場合によっては専門家へ相談するように勧めてください。あなたが全てを背負ってしまうと、知らず知らずのうちにあなた自身の調子が崩れてきてしまう恐れがあります。
削減、止める……職場の変化にためらわない
職場全体での取り組みも重要です。残業対策によってなんとか残業が減っていたとしても、現場が疲弊している、モチベーションが下がってきている、何か他の業務が犠牲になっている、など気付かないところに影響が出ている可能性も考えなければなりません。残業の問題に対し、職場としてどのような対応ができるのでしょうか。
まずは、現在のさまざまな業務について以下の視点で見ていくのも良いでしょう。
職場でできること | |
---|---|
削減する | 会議の回数や実施時間、参加者の見直しをする。 |
止める | 業務プロセスを細分化し、止めてしまっても良いことを見つける。 |
活用する | 他メンバーのナレッジを共有・活用できるよう、蓄積し、見える化する。 |
仕組み化する | 手戻りが頻繁に発生するプロセスについては、仕組み化を取り入れる。 |
何を実施するかは、管理者一人が決めるのではなく、職場のメンバーで考えます。もしかすると、管理者がいない場の方が、話が盛り上がり良いアイデアが生まれるかもしれません。
また、長年同じ業務に就いている従業員は、現状を当たり前と思い、何かを変えることに不安を感じます。まずは小さなことから実践し、その効果を皆で実感することが必要です。
取り組みを通して時間と気持ちに余裕ができ、定時には仕事を切り上げられるようになれば、家族や自己成長のために時間を有意義に使えます。自然と心が満たされて活力が湧き、職場でもいきいきと働けるようになるでしょう。職場全体がいきいきと健康的であることを目指しましょう。
次回は、この健康いきいき職場を作り上げるもう一つの要素「部下とのコミュニケーション」について掲載します。部下とは頻繁に話をしている――そう思っているのは本人だけで、知らず知らずのうちに、コミュニケーション不足を招いているかもしれません。
企業紹介:パナソニック ソリューションテクノロジー
パナソニック ソリューションテクノロジーは本格的なICT時代の幕開け前から30年にわたり、IT基盤の設計・構築、ソフトウェア、SIサービスでお客さまの業務課題解決に努めてきました。さらにICTシステムの設計・構築を起点に、Al・データ分析、IoT、働き方改革、そしてBPOまで分野を広げています。製造業や建設・物流・金融・エネルギー・自治体など、さまざまな業界・業務の知見を基としたソリューションで、お客さまの仕事の仕方・プロセスを加速度的に変え、成長につなげていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 部下が病んでいく職場
部下が1人でやり遂げた仕事も「簡単な内容、できて当たり前」と考える、プライベートのトラブルが原因で仕事に影響を出すとは許せない……。こんな考え方をお持ちではありませんか。 - 50代ベテラン社員が病むとき
今回はメンタルヘルス不調者を出さないために職場で何ができるか、「職場のよくあるシーン」を使って考えます。経験豊富なベテラン社員のAさんは、なぜ遅刻が増え、休みがちになってしまったのでしょうか。 - 新卒社員が病むとき
「職場のよくあるシーン」を使ってメンタルヘルス不調者を出さないためにできることを考えます。入社2年目の若手社員への対応について考えていきましょう。世代の違いからカルチャーショックを感じる人もいるようです。 - 休職者の穴を埋めるストレス
残念ながらメンタルヘルス不調者が出てしまった職場。人事部門や産業医と相談しながら対応を進めますが、現場では抜けた1人の穴埋めが大きな課題となります。最終回は管理者の役割について考えてみましょう。