実例と実演で知る「プロセスマイニング」の効果と実際:プロセスマイニング入門〜マニュアルのない業務の真実を「発見」する技術(2)(2/4 ページ)
60日分の業務をたった5日に圧縮した実績もあるプロセスマイニング。実際に使う場合はどういう手順でどんな分析を行うのでしょうか。具体例と6つの分析アプローチを紹介します。
欧州を中心に普及が進むプロセスマイニング その活用例は
プロセスマイニングの研究は2000年代前半から始まり、オランダ、ドイツを中心とする欧州各国がリードしたことから、ビジネスへの応用は欧州の企業が進んでいる。米国やアジア、そして日本も「これから」という状況だ。
さて、プロセスマイニング実践企業の業種は製造、銀行、保険、建設、物流、運輸、テクノロジー、ヘルスケアなど多岐にわたる。プロセスマイニングの目的は、プロセス改善が最も多いが、コンプライアンス(法令順守)の観点からのプロセス監視や監査を目的とする企業も存在する。
また、社内の業務プロセスだけでなく、Webサイトへのユーザーの訪問履歴(Webアクセスログ)を分析対象とする「カスタマージャーニー分析」の事例もある。以降はプロセスマイニングを使って業務効率を改善した例を紹介する。
製造プロセスを3分の1に、保険業務は60日が5日に改善
オランダのあるメーカーは、製造プロセスに対するプロセスマイニングを行い、スループット(製品完成までのリードタイム)を3カ月から1カ月未満に短縮したケースが報告されている。
また、オーストラリアの保険会社Suncorpでは、家財保険の保険金の請求受付プロセスのマイニングを行ったところ、保険金支払いまでのリードタイムの長期化をもたらしていた大きなボトルネックを発見した。そこで、ボトルネック解消のための改善施策を講じたところ、以前は30〜60日も要していたリードタイムが、改善後はわずか5日になったという劇的な成果を得ている。
プロセスマイニングの実際 〜手順を知る〜
では、プロセスマイニングツールの画面を示しながら、プロセスマイニングをどのように行うのかを概説する。プロセスマイニングツールは、商用。非商用を合わせて複数あるが、本稿では「myInvenio」*を例に解説を進める。
* 注)「myInvenio」はハートコアが販売するプロセスマイニングツール。日本語版もまなくリリース予定だ。
データセットの準備
ERPやサプライチェーンマネジメントシステムなどから抽出したイベントログは、データの統合や、異常値や欠損値の削除などのデータクリーニングを行い、プロセスマイニングツールにインポート可能な「データセット」として整備する。
データのインポート
データセットが準備できたら、いよいよツールへのデータインポートである。
本稿解説で利用したmyInvenioの場合、インポートするために必須のデータ項目は、「案件ID(Case ID)」「活動内容(Activity)」「時刻(Timestamp)」の3つだ。多くのプロセスマイニングツールも同様のデータが必要だろう(「Case ID」は、myInvenioでは「Process ID」と表記されている)。
以下の例で示すイベントログは銀行のローン処理プロセスに関わるものだ。ここでは付加的な情報として、それぞれの活動(操作)を行った担当者名(Resource)や、部署名(Role)を含んでいる。
インポートする際は、この画面で、それぞれのデータ項目について、どれが「案件ID」で、どれが「活動」かなど、データ項目の種別を指定する作業(マッピング)を行うだけでよい。それぞれの項目の定義から行う汎用のデータ分析ツールよりもずっと簡易に操作できることがお分かりいただけるのではないだろうか。
マッピングが完了したら「Visualize Your Process(あなたのプロセスを視覚化する)」のボタンを押下すれば、瞬時にプロセスモデルが作成される。
プロセスモデル作成(Discovery)
プロセスマイニングツールの最も魅力的な機能が「プロセス発見」、すなわちプロセスモデルの自動作成機能だろう。プロセス分析に特化したツールだけに、数百万のイベントログデータであっても素早くフロー図を表示でき、プロセス発見までの工数が非常にシンプルな点も魅力といえる。
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