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肩越しに手元を見ながら作業を教えてくれる 「遠隔操作ロボット二人羽織」って何?5分で分かる最新キーワード解説(2/3 ページ)

まるで自分の両手のように自在に動く「二人羽織」ロボット。今後、どういった活用が期待されるのだろうか。開発の背景を聞いた。

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操作者の動きに合わせて自在に動くロボットヘッドとアーム、ハンド

 2個のカメラを備えたロボットヘッドは、私の目の位置からの視点を、立体映像として操作者にリアルタイムに伝える。ロボットヘッドは、操作者が装着したヘッドマウントディスプレイの動きに合わせて滑らかに回転し、対象者の手元や前方など見たいところを映し出す。

 ロボットアームの動きは、操作者が両手に持ったリモート操作モジュール(Oculusタッチコントローラー)の空間での動きに同期している。右手を上げれば右のロボットアームが上がり、前に持っていけば前に動く。

 ロボットハンドの動きは、リモート操作モジュールのサムスティックと6個のボタン/トリガーで制御する。これにはだいぶ慣れが必要だが、ものを指さすのは簡単、少し練習すればものをつかむくらいはすぐできそうだ。

 図4に見るように、手元の細かい作業をロボットハンドで指示したり、部品などを選んで手渡したりできるほか、両手にロボットアームを固定して手の動きを直接ガイドすることもできる。ロボットハンドは繊細なタッチで柔らかいボールをつまむことも可能だ。街なかでの道案内などにも使えるように、スマートフォンとの通信による遠隔操作も視野に入っている。

図4 左:Fusion試作機の全体像 右:Fusionを背負ったところ図4 左:Fusion試作機の全体像 右:Fusionを背負ったところ
図4  Fusionの利用シーンの例(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科提供)図4 Fusionの利用シーンの例(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科提供) 図4  Fusionの利用シーンの例(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科提供)

試作機はスチール部分が多いため、相当な重量に見えるが、実際はバッテリーを内蔵した状態で約10キロ、バッテリーレスで外部から給電する場合は約8キロだ。背負った感じは、外見から想像するよりはずいぶん軽い印象だ。

滑らかな動きは合計27個のモーターの精密制御による

 モーションコントローラーを使うVRゲームをしたことがあれば、何が起きているのかは類推できるだろう。自分の手元のデバイスを動かして画面の中のヒーローの身体や道具を自由に動かすのと同じように、現実のロボットが動いてくれるのだ。ちょっと失礼な表現かもしれないが、ロボットアームを操作している自分は、離れたところにいる人に憑依した背後霊になったような感じだ。逆にFusionを装着した自分は、誰かから包容されながら何かを教わっている感覚になる。そういえば、子どもの頃に折り紙を教わったとき、母がこんな風にしてくれた記憶がある。そろばんを初めて教わったときもそうだった。

 もちろん母親に比べてロボットアームやロボットハンドはずいぶんとぎこちないが、それでもそんな古い記憶が自然に呼び起こされるような、一種の安心感のようなものを感じた。おそらくそれは、ロボットアームが身体性をもっているからなのだろう。触ろうと思えば触れる、現実にそこにある「モノ」が先生である操作者の意思を伝えてくれる。障がい者や認知症患者にとって、単なる映像や音声によるサポートよりも、直接的で理解しやすいガイドができるのではないかという印象を得た。

 そんな身体性を感じさせる一因は、ロボットアームやロボットハンドの動きの柔らかさだろう。まだまだ改善の余地がたくさんありそうだが、何より人間の腕の動きを感じさせる自由度の高さがそう思わせる。人間の腕の自由度は7軸なのだが、多関節の産業用ロボットは6軸の自由度で3次元空間を思うままの位置と姿勢をとることができる。このロボットアームは、9個のモーターを使って、産業用ロボットよりも多い、人間と同じ7軸の自由度をもたせている。ロボットヘッドは3個のモーターで自由度は3軸、ロボットハンドのほうは、試作機では手のひら、親指、人差し指を3個のモーターで制御している。左右のロボットアーム、ロボットヘッド、ロボットハンドでモーター数は合計27個。それぞれのモーターを適切に制御しなければ、この柔らかい動きは不可能だ。

 ロボットハンドは取り外し可能で、手首用のバンドに取り換えれば、ロボットアームが装着者の手首を直接動かすこともできる。手作業を誘導することもできれば、視覚障がい者の道案内などの際に方向を指示することもできるだろう。

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