サイボウズは「サブスクリプション時代」の今をどう動く?
サイボウズ 代表取締役の青野社長は、グループウェア新時代を迎える今、使いやすさだけではダメだと語った。これからのグループウェアに求められるものとは。
2012年頃に一度は伸び悩んだものの、組織のチームワークが重視される時代になったことで再び企業の視線がグループウェアに集まり、過去の落ち込みを巻き返すサイボウズ。今、同社を支えるのはサブスクリプションモデルのクラウドサービスだ。
サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏は、「当社の売り上げの約3分の2をクラウドサービスが占めている」と現状を説明する。2019年夏には米国でAWS(Amazon Web Services)を基盤とした「kintone.com」のパブリックリリースを予定するなど、国外でのクラウド事業にも力を入れる。
「今はサブスクリプションの時代だ」と話す青野社長は、これからをどう考えているのか。「2018年12月期決算および2019年度の事業戦略に関する説明会」で今後の展開について説明した。
クラウド時代でグループウェアに求められるもの
大規模および中堅企業向けグループウェア「サイボウズ Garoon」は、クラウド版の利用比率が徐々に伸び、2019年はクラウド版の売り上げが全体の半分を占める勢いだ。同社は、今後大規模や中堅企業でもクラウド版の利用が主流になるだろうと見ている。
グループ合計で約7000人の従業員を抱えるグローバル電気機器メーカー明電舎もサイボウズ Garoonの導入を決めた。
こうしたクラウド時代においてグループウェアも他サービスと「つながること」が重要だとし、2019年にAPIを拡充する方針だ。青野社長は「クラウド時代はさまざまなサービスとつながってこそ便利になる。グループウェアも今後は使いやすさだけではなく、『どこまで連携できるか』が差別化のポイントになる」と説明し、アライアンスパートナーも増やす意向だ。
これに関連して、さまざまなビジネスパートナーが集まりサイボウズ Garoonをアップデートする「Frasco(フラスコ)プロジェクト」という実験的な取り組みも進行中だという。
非IT部門の導入が進む「kintone」、モバイル版のデザインをどう変える?
サイボウズ、2019年の目玉の一つがモバイル版kintoneのデザイン刷新だ。
同社によると、kintoneの利用社数は2018年12月時点で1万1000社に達し、東証一部上場企業の6社に1社が導入している計算になるという。
kintoneといえばIT部門が主担当となり導入するイメージを持つが、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で簡単に操作できるという特長もあり、企画部門や営業部門など非IT部門の担当者が導入する割合が8割(2018年8月時点)を超えたという。IT部門を介さずとも、現場主導でkintoneを活用する時代になりつつある。
だがモバイル版のユーザー満足度が低いことが分かり、2019年5月にモバイルデザインをアップデートする。主にはナビゲーション周りを改善し、スムーズにページ遷移できるようデザインを変更する。また、探したいアプリが簡単に探せるユーザーインタフェースに変え、通知やワークフローの操作性も改善する予定だ。2019年3月10日にプレビュー版をリリース、その後5月に正式版をリリースする流れだ。
独自の強みでグローバル市場と戦う
グループウェア以外にも、2012年にはメール対応を一元管理するクラウドサービス「メールワイズ」をリリースするなど、クラウドを起点にサービスを広げるサイボウズ。開発部門の体制も見直し、これからますますクラウドサービスに力を入れる考えだ。
青野社長は「今後はグローバル事業も拡大したい。世界のトップ企業と張り合うのは難しいが、ツールの提供だけでなく風土改革までを顧客に提案することで差別化を図り、グローバルの市場でも戦っていきたい」と締めた。
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