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課題と市場変遷から導き出すBI強化の方向性すご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)

データ分析に関するプロジェクトが多く立ち上がる中、BIやDWHに触れた経験を持つ人も多いはず。そこで今のBIについて振り返りながら、今後強化していくべき方向性について考えたい。

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BI環境強化の方向性

 これまでBI環境における課題や市場トレンドの変遷について見てきたが、ここでBI環境をどう強化していくべきかの方向性について考えてみよう。方向性としては、一言でいうとバイモーダル、つまり第一世代と第二世代という2つの考え方を双方あわせ持つ必要がある。月次や週次のタイミングで必ず見なければいけないものがあれば、これまで利用してきたIT部門が主導する一元管理型のBIは残しておいていい。ただし、アジャイルな分析を許容して積極的にサポートしていくことが必要で、DWH内のデータを使ってもよし、それ以外にユーザー部門で契約しているSaaSやアンケートのデータなど独自のデータでもよい。ユーザーが自由に使えるモード2環境の中にそれらのデータを取り込んで試行錯誤を繰り返す。そして、全社にフィードバックすべき良い知見が得られたら、どうやってモード1のほうにフィードバックするのかを考える。そういった環境を持つ必要がある。

 そしてこの環境を生かしていくための進め方として、6つのステップを紹介する。

BI強化に向けた6つのステップ
図3 BI強化に向けた6つのステップ(出典:ガートナージャパン)

【第一ステップ】機能強化が必要なユーザー層を洗い出す

 まずツール周りでやるべきは、機能強化が必要なユーザー層を洗い出すことだ。現状利用している第一世代から第二世代に移行しようと考えた場合、基本的な機能となるレポート作成やダッシュボードを作るのはIT部門が担当していることだろう。しかし、一般的に不満を持っているのは、アドホック・クエリやデータ・ディスカバリなどを利用するパワーユーザーだ。そのような不満を受けて第二世代への移行を検討する場合、そもそも基本的な機能で十分なユーザーが大多数であれば、たった数名が困っていることのために大勢の環境を変えるのかという視点を持つ必要がある。第二世代に代えれば全員が幸せになるわけではないため、しっかりとどう強化していくのか、その方向をユーザー層から見極めていく必要がある。

【第二ステップ】既存環境をアップグレードするのか、機能追加をするのか判断する

 次に行うべきは、既存環境のアップグレードなのか、機能追加なのかの判断だ。実は第二世代の特徴でもある視覚に訴えかけたデータ・ディスカバリという機能は、すでに第一世代の代表的なベンダーからも提供されてきているため、既存環境をアップグレードすれば機能として手に入れられる可能性はある。新たに使いたいとユーザー部門が提案してきたものと、既存の環境をアップグレードすることで、どちらにメリットがあるのかをしっかり検討したい。もちろん、今ある環境のアップグレードは多くのユーザーに影響を与える可能性があるため、第一世代を利用している人たちにもメリットが提示できることが望ましい。

【第三ステップ】IT部門とユーザー部門の役割と責任を再定義する

 ここからは、会社の中での動き方を変えていくことが求められるステップだ。典型的なBIであれば、データ抽出してDWHに投入し、セマンテックレイヤーを作ったうえで、ユーザーに見てもらうというのが一般的な流れだろう。しかし自己完結型であれば、データを用意し提供するまでがIT部門の担当で、そこからデータを合わせ、自分の環境にてどう分析、加工するのかは基本ユーザーに任せることになる。このように、役割と責任を再定義することが大切だ。ただし、データの提供部分はこれまで以上に専門性が必要になってくる。

【第四ステップ】IT部門のデータ提供能力を強化する

 一般的にBIツールの話をすると、たくさんの利用者にいい環境を提供するといいことが起きるのではないかと考える人は多い。しかし、自己完結型のBIを使うと“あんなデータが欲しい”といったニーズが増えてくることになり、IT部門にも特定のニーズに活用できるデータを求める声が寄せられることになる。そういった声が多くのユーザーから届くのであれば、社内外のデータに精通したプロとしてのアドバイスができるようになるべきだ。できれば、求められたから提供するというよりも、なぜそのデータが欲しいのかをしっかりと確認するべきで、ほかのユーザーの取り組みが生かせる場面も出てくる。提案のできるデータのプロというロールをIT部門のなかに置くようにしたい。

【第五ステップ】次期アプリケーションの計画にデータ分析の視点を盛り込む

 いろいろな声が集まってくると、類似の要望が出てくることもあり、非効率な部分も出てくる。そこで、効率的に情報提供できるよう、次世代の情報インフラのあるべき姿を考える人材が必要だ。つまり、これからアプリケーションを導入していく場面で、しっかりとデータ分析の視点を盛り込んだ設計をしていくことを意識する必要がある。ここでは、データ提供をするエンジニアや分析をするアナリスト、そして次期アプリケーションにおけるデータの持ち方を考える人が役割として必要になる。こうした役割は、チームで担っても良いし、企業規模によっては一人で複数の役割を兼任しても構わない。

【第六ステップ】時期アプリケーションの計画にデータ品質の視点を盛り込む

 最後のステップとして、ビジネスの優先課題に対処するうえで、どういったデータを見るべきかを考える人が必要になる。例えばCRMに関連してカスタマージャーニーマップを作成しようとした場合、関連するシステムは多岐にわたる。そこで、自社ではどこにフォーカスするのか、どこが譲れないのか、誰かが決める必要がある。これをビジネス・プロセス・アナリストと呼んでおり、多くの場合、ユーザー部門が担う役割となる。今あるデータが信頼できるのか、それを一定レベルに担保するような役割を情報スチュワードと呼んでいるが、これは間違いなくユーザー部門でないと分からない。また、マスターデータをまとめていくマスターデータ管理の視点も重要になってくる。これらの役割が求められることを踏まえながら、データ品質について考えていく必要がある。

 これらのステップを踏まえたうえで、ユーザーが自律的に分析できる環境を整備しながら、活用すべきデータという視点でビジネス成長のボトルネックを探していくことが、すでに導入しているBIを強化して行くためには必要になる。

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