2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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エンタープライズ向けのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を提供し、英国に本社を持つBlue Prism株式会社。グローバルのみならず日本企業への展開も注力している同社は、2019年1月には新たな事業戦略「Connected-RPA(コネクテッドRPA)ビジョン」を掲げ、AI(人工知能)研究所を英国・ロンドンに設立したことを発表した。
事業展開をますます加速させるなか、同社でユーザーの成功と製品のかけ橋を担うCCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)のジョン・ターコフ氏は、実はかつてBlue Prismを利用するユーザーであったという。
日本で本格化するRPA導入プロジェクトを成功裏に進めるために、何が必要なのか。Blue Prism導入チームをリードし、300台以上のロボットによって業務改革を成功させたバックグラウンドを持つターコフ氏に、豊富な経験にもとづくヒントを聞いた。
■記事内目次
- 2年半で300台以上のロボットを作成した元ユーザーが、Blue Prismに入社するまで
- 10カ月で180台のロボットが完成。RPAスケールアップの秘訣とは
- 「未成熟だが活発」。日本においてRPAが秘めるポテンシャルとは
2年半で300台以上のロボットを作成したユーザーが、Blue Prismに入社するまで
−もともと、Blue Prismのユーザーだったそうですね。どのような立場でどのようにRPAに取り組んでいたのでしょうか。
ニューヨークメロン銀行という米国の銀行にて、全社レベルでの業務改革プロジェクトで責任者を務めていました。RPAに限らず、業務プロセス改革(BPR/ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)も含めてあらゆる効率化のツールを検討しました。どのツールを入れるかよりも、どれだけ人間の作業を代行できるのか、その一点だけを重要視していましたね。その視点を突き詰めていった結果、残ったのがBlue Prismだったというわけです。
そして、Blue Prismにとって30番目となる初期のユーザー企業としてRPAを導入しました。導入は私がリードする専門チームを組織して進められ、2年半の間に300台以上のロボットを作成。機械学習による文字読み取りの機能を取り入れるなど、先進的な経験もしました。
−量も見事ですが、質でも高いレベルの取り組みですね。その状況から、なぜBlue Prism社にジョインしたのでしょうか。
RPAによって人間のスキルに磨きをかけられることに興味を持ち、やがてもっと追求したいと考えるようになったのです。私のようなRPAの導入経験を持つ人材は非常に少ないこともあり、より世の中に貢献できる活躍の場があるはずだと、銀行を退職しました。
その翌日、私の行動を耳にして誘いの電話をかけてきた人がいます。それがBlue PrismのCEO、アレスター・バスゲートでした。
それ以来1年にわたり、カスタマーアドボカシー責任者(Chief Customer Advocacy)としてユーザーの立場での経験を生かし、Blue Prismの良さをユーザーに伝えながら関係を構築するチームでリーダーシップを取ってきました。このほどCCOとして営業から導入後のフェーズに至るまでの顧客体験全体に関わる責任者の立場となり、より深くユーザーの取り組みに貢献できることをうれしく思っています。
10カ月で180台のロボットが完成。RPAスケールアップの秘訣とは
−確かに、実際にユーザーであった経験はサービスにも生きそうですね。少し話は戻りますが、銀行ではどのようにしてRPAの導入を進めたのでしょうか。
コンサルタントを雇うことなく、Blue Prism社のサポートと私たちだけで導入を進めました。導入を始めた4年ほど前の時点では、RPAの人材は皆無という状況です。私のチームはビジネスチームから人を集めて、トレーニングを実施して開発要員に充てました。ロボットの名前は銀行創業者の名前にちなみ「アレックス」と名付けられました。まず、アレックスには大きく3つの役目があったことからお話ししましょう。
アレックスには、人間がやりたくない仕事をしてもらう。これが一番の目的でした。
そしてもう一つ、新ビジネスで売上を伸ばすための手助けです。いいアイデアがあっても、予算上の都合でシステム化は後まわしと判断され、実現には至っていない案件がありました。RPAならはるかに低コストで実現できると聞いたビジネス側の担当者は、アレックスに飛びつきました。
さらに、リスク削減という観点でもアレックスは活躍します。内部監査部門はもともとロボットに対して否定的だったのですが、「ロボットはミスをしない」という情報を発信しているうちに、監査チェックリストをつぶしていくような業務をアレックスに頼みたいと逆に依頼されました。コスト削減の観点よりも、精度が高くリスクを下げる効果が評価されました。今では多くの監査業務を代行するようになりました。
−攻めと守り、両方でアレックスが活躍したわけですね。続いて、進め方についても教えてください。日本ではスモールスタートで成功事例を作って、それを拡大していくのが正攻法だという見方もあります。どのようにして2年半の間に300台以上ものロボットを作ったのですか。
最初は3つのパイロットプロジェクトから始めました。ですから規模的にはスモールスタートと言えるでしょう。しかし、その後が速かった。10カ月後には30プロジェクトで180台のロボット導入を成功させました。私たちの場合、あらゆる部門から「自動化してほしい」という依頼が多くて、早く進めなければならない事情がありました。経験上、ゆっくり進める必要性は感じません。
−ターコフさんは短期間でうまくスケールアップさせたわけですが、同じようにRPA導入を成功させるヒントを教えてください。
他の企業における拡大に成功した事例も含めて分析すると、5つの共通点があると考えています。これは金融に関係なく、すべての業界に共通しています。
- クリアなビジョンを持っている
- クリアな戦略を持っている
- 新しい技術導入にまつわるリスクを恐れない
- リーダーシップからのコミットメントがある
- 人に対するケアをする
4は、RPAを使って変革を全うするのだというコミットメント。5は、「優秀な人を育てる」「RPAによって影響を受ける人に配慮する」という2つの意味です。
日本ではRPAに注目が集まっているところですので、スケールアップの詳しい経験は、ぜひお伝えして回りたいと考えています。
−他社の事例を見てきて、逆に失敗するケースに共通点はありますか。
圧倒的に多いのは、1と2が欠けている場合ですね。ビジョンと戦略がないと失敗してしまいがちです。
「未成熟だが活発」。日本においてRPAが秘めるポテンシャルとは
−CCOの立場で、RPAに取り組む日本の状況をどのように捉えていますか。
率直に表現すると、未成熟だと言えます。ところが未成熟にも「活発」と「非活発」の2種類があって、日本は現在の世界でもっとも活発です。学ぼうとする熱意と姿勢もあり、早く成熟するポテンシャルがあります。
日本は世界でも大きな経済を持ち、強いメンタリティーがあり、テクノロジーも先進的です。 そんな土壌でRPAが活発に議論されるのは当然の事象で、まったく驚くことではありません。
−ありがとうございます。最後に、日本の読者に伝えたいことはありますか。
Blue Prismにとって、日本は非常に重要な市場です。私たちは、まったく新しい考えを取り入れながら「進化」と「改革」を推進してきました。たとえば、今年に入って発表した「Connected-RPAビジョン」は、企業が最先端のクラウド、AIおよびコグニティブ技術に簡単にアクセスできるようにして、革新的な競争力を得ようというものです。これは、こうした先進技術をドラッグ&ドロップだけでBlue Prismに取り込めるというものです。これは私が銀行に勤めていた時代には想像できなかったことです。
こうした新しい考え方を吸収して活用できるのが、日本のマーケットだと思います。成熟国として、競争力を獲得していくことでしょう。
銀行での経験に加えて、米国でのコミュニティでは他のユーザーの声もずいぶん耳にしています。頻繁に来日して、こうした私の経験を日本でもお伝えしていくとともに、積極的に会話を続け、CCOとしてよりスマートな製品を開発していきます。
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