社員2000人の次は認定技術者1万人 Salesforceはどのくらい頼れる?:今後必要なDXスキルはベンダーが教えてくれる時代に
「Salesforceエンジニアになりたいならば全力で支援する」。今後数年続くと予想される「商機」にセールスフォース・ドットコムが本気でエンジニア確保に動く。
セールスフォース・ドットコムがシステムインテグレーション(SI)パートナー拡大と認定技術者育成に向けた「DXアクセラレーションプログラム」を本格化する。
4月11日にSalesforce.comのCEOであるマーク・ベニオフ氏が来日、今後5年で日本国内の社員を2000人ほど増員して新オフィス「Salesforce Tower Tokyo」を開設すると発表したばかりだが(関連リンク参照)、自社人員だけでなくパートナー企業と技術者の拡充も急ぐ形だ。現在、日本国内に3700人程度いる認定技術者を3年以内に1万人規模に拡大することを目標とする。まずは初年度で新規パートナー企業80社の獲得を目指す。なお、DXアクセラレーションプログラム自体は新規だけでなく既存のパートナーも対象とする。
新たにコンサルティングパートナーを募る背景として、セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス本部 本部長 井上靖英氏は「DX(デジタル変革)は『いかに顧客に近づけるか』が本質。顧客接点を開拓し、成功にいざなえるエンジニアが市場で求められる」と説明する。
「セールスフォース・ドットコムはSFA(営業支援)だけでなく商談サポートやフィールドサービス、データインテグレーションツールも持っており、現時点でカスタマーリレーションシップに注力する企業はわれわれを除いて他にない」(井上氏)
DXアクセラレーションプログラムは「第4次産業革命に対応したエンジニアを拡充、規模の大小は問わず、SI企業に新たなコンサルティングパートナーになっていただくために活動を進める」というもの。具体的には、SFAやコールセンターではなく、顧客接点全体の変革を支援する企業として新規パートナーを募るプログラムだ。
新規パートナーを募るとしても「Salesforce案件で食えるか」が課題となる。そこで、同社は採用や人材育成、案件創出を含むサポート体制を整備する。
従来、Salesforceの認定アドミニストレーターになるためには有償の集合セミナーや模試、テストを経て認定技術者になるプログラムを受ける必要があった。この一部を、より学習しやすいオンライン体験学習プログラム「Trailhead」で提供、パートナー企業の負担を低減して資格取得に挑めるようにする。パートナー企業であれば模試も無料で行う。また、Salesforce案件が継続できるかどうかが心配な企業に対しては、パートナー企業間のマッチングも実施。大規模プロジェクトなどに継続的に参加できる仕組みを用意する。人材派遣会社などと協力し、Trailheadプログラムを介してキャリアチェンジを目指す働く女性のスキルアップを支援するプログラムも用意する。
「2025年の崖」と言われるように、日本企業のIT環境は従来型の俊敏性に欠けるシステムからデジタル変革に対応するシステムへの変革期にある。今後数年間は企業ITを支えてきた古いシステムが次々とサポート終了を迎えることから、各社ともリプレース特需を予想する。その一方でデジタル変革に対応した新しい技術を理解してシステムリプレースに関わる技術者の不足が予想されている。そのため、現段階から自社技術を理解する技術者をどれだけ育成できるかが、各社の重要テーマになっている。なお、大手SIではアクセンチュアなどが既にDXアクセラレーションプログラムに賛同している。
パートナー企業の採用支援や人材育成を含む支援活動についてはSAPジャパンも同様のアプローチを取る。いずれも日本法人独自の戦略としており、日本企業の「2025年の崖」を巡る陣取り合戦が活発化する見通しだ。
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