SAPのクラウド移行先はどこに? Microsoft、AWS、Googleが支援を本格化:「例の崖」が来る前に、赤くない会社が集う
SAPユーザーのクラウド移行に主要プロバイダー3社がそろってシステム移行で協力する。2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」に取り上げられたことで注目を集める基幹業務システムの「2025年の崖」。渦中の古いSAP ERPユーザーも「崖」から救うか。
SAPジャパンは2019年5月15日、新たなプログラム「Embrace」を発表した。これは、「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud」といった大規模クラウド事業者(ハイパースケーラー)と、SAPのグローバル戦略サービスパートナー(GSSP)とのコラボレーションプログラムで、顧客システムのクラウド移行を促進する。
Embraceでは、SAPや大規模クラウド事業者、GSSPが提供するプラットフォームやソフトウェア、サービス、インフラストラクチャを利用して、顧客のシステム環境に即したクラウド環境の「SAP S/4HANA」に移行できるようにする。SAPはその際、「市場で認められたプロセス」や「リファレンスアーキテクチャ」に基づいて実施するとしている。
「市場で認められたプロセス」とは、SAP S/4HANAを導入するまでの業界別のロードマップで、大規模クラウド事業者やGSSPと共同で策定する。またリファレンスアーキテクチャには、顧客のアプリケーションを実行するために必要なSAPや大規模クラウド事業者のコンポーネントが組み込まれるという。
Embraceにはこの他にも新しいサービスが含まれる。
Embraceには「SAP MaxAttention」と「SAP ActiveAttention」という新しいサービスが含まれる。これらは、大規模クラウド事業者が提供するクラウドまたはハイブリッドインフラストラクチャを運用する顧客のサポートを目的とした新たなサービスだ。
SAPでは、顧客がEmbraceを利用する利点として、交渉期間の短縮やチーム編成の合理化、導入の迅速化、リスク管理の強化を挙げている。
SAPのエグゼクティブボードメンバーでクラウドビジネスグループ担当プレジデントを務めるジェニファー・モーガン(Jennifer Morgan)氏は、「SAPの顧客は、クラウドへの移行による成果として、オペレーショナルエクセレンスの確立やイノベーションの実現などを期待している。大規模クラウド事業者やGSSPとの協力によって、SAPは顧客が『インテリジェントエンタープライズ』になるまでの道筋を作る役割を担う」と述べている。
なおインテリジェントエンタープライズとは2018年6月の年次イベント「SAPPHIRE NOW」で発表したSAPによる企業ITのコンセプトを指す。企業ITを、ERPの情報を基にした「デジタルコア」およびCRMやSCM、HCMなどの周辺システムと、企業の内外を問わずデータを管理する「データプラットフォーム」に分けて考え、デジタルコアとデータプラットフォームと掛け合わせて有意な知見を導き出す「インテリジェントテクノロジー」をその中心に擁する。インテリジェントテクノロジーはオペレーションを効率化しながら、データから新たな知見や価値を生み出すドライバーとして機能するものとして位置付けられる。
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