2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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普及が広がるRPAは、ソフトフェアが実際に動作する環境の違いから、大きく分けてデスクトップ型とサーバー型の2種類があり、管理統制上の理由などから、大規模に運用することになればサーバー型が欠かせなくなってくる。
ただ、サーバーの構築は専門知識を持つエンジニアが時間を掛けて行うためコストとスピードの面で課題感がある。また、メンテナンスも容易ではない。
そこで注目されるのが、RPAのソフトウェアをサーバーではなくクラウド環境に乗せる手法だ。RPAが一般化し、企業が規模の大小に関わらずその恩恵を受けたいとのニーズに応えるために、クラウドソリューションが登場している。クラウド上のサーバーですぐにソフトウェアを利用可能なSaaS(Software as a Service)によるRPA提供だ。
クラウドが提供する価値、そこにRPAやAIが乗ることによって何が期待されるのか。
企業が利用するクラウドコンピューティングプラットフォームとして選ばれ、多くの実績を誇るMicrosoft Azure。日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員で、クラウド事業の責任者を務める浅野智氏に、「クラウドのプロ」としての意見を聞いた。
■記事内目次
- 企業価値を高めるデータ活用の土壌はクラウドとAI
- クラウド上のプロセスもRPAがつなぐ役割を果たす
- 人手不足解消に向けてAzureを通じたRPAの提供体制を整備
企業価値を高めるデータ活用の土壌はクラウドとAI
−浅野さんは、どのような立場でクラウドとサービスに携わっていますか。
浅野氏(マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長): 一つは日本マイクロソフトにおけるクラウドコンピューティングプラットフォームMicrosoft Azureの責任者です。そして、付随するインフラサービス全般の担当でもあります。それは開発ツールやデータベース、運用管理ツール、AIやIoTも対象で、これらを組み合わせながら、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する立場にあります。
−デジタルトランスフォーメーションは、人によって解釈が異なるように思いますが、浅野さんご自身はどのように定義していますか。
データを活用することで新しい価値を創造し、ビジネスモデルを変革して企業価値を高めることを指すのだと理解しています。より多くの日本企業にデータを使って付加価値を提供できる企業になっていただきたいですし、マイクロソフトはそれを支援する企業でありたいと考えています。
−デジタルトランスフォーメーションを実現する中で、クラウドという存在について、どのようにお考えですか。
従来かかっていた、データセンターを作るコスト、ネットワークを引くコスト、常に最新のサーバーを買うコストなどは、クラウドを利用することで、ベンダー持ちになり、利用者は先行投資しなくてよくなりました。必要な時に必要な分だけリソースを購入して使うというモデルへの転換は、デジタルトランスフォーメーションを大きく後押ししたと思います。
その中で、蓄積されたデータをどう使うかという観点がデジタルトランスフォーメーションを推進する中で重要ですが、AIによる分析や、データを可視化するBI(Business Intelligence)ツールが一体で提供されるようになったことで、今までよりもデータの活用が行いやすくなっていると考えています。
このような形で、デジタライゼーションにいち早く手を出した企業が、データを使った付加価値を提供できるようになり、競争優位性を発揮している発揮しているわけです。
−マイクロソフト以外にもクラウドを提供する強いプレイヤーがいますが、マイクロソフトの強みは何だと考えていますか。
他のテクノロジー企業との違いは、流通やWebサービスがルーツではなく、人の活動を支援するパソコンなどのエッジ(末端)コンピューティングを起源とし、かつクラウドも提供しているハイブリッドな企業であることです。データを収集、クラウドに蓄積、AIで分析を行い、結果を見るところまで一筆書きで描けるのです。
また、テクノロジーを社会実装してきた経験が豊富であるというのも強みです。実は街中で見かける様々なサービスや社会インフラの裏ではMicrosoftの技術が多く利用されています。日進月歩の世の中、テクノロジー自体はコモディティ化してどれも同じようになりますが、このような強みはそう簡単に真似できないはずです。
−クラウドをとりまく環境の変化については、どのようにお考えですか。
技術進化の時々に合わせて、集めるデータ、解析すべきデータは変わってきます。それに応じて私たちテクノロジーベンダーも変わっていかなければなりません。
その一つとして、5G通信の環境が整ってきました。低遅延や大容量のデータ伝送ができるため、今まででは実現できなかったことが実現できるようになってきます。例えば車の自動運転のようなものですが、これを実現するための課題があります。例えば、自動運転を行うにあたり、1台の車から多いと1日10TBものデータが発生するため、それをクラウドに全部送るのは現実的ではありません。そうなると、エッジ側で処理すべきデータと、クラウドに送って活用するデータの棲み分けが必要であり、このような点で我々の強みが生きるのではないかと考えています。
クラウド上の処理もRPAがつなぐ役割を果たす
−さきほど、活用可能なデータの変化に応じて貴社のようなテクノロジーベンダーのソリューションにも変化が求められるというお話でしたが、RPAも同様でしょうか。
RPAは業務から生み出されるデータに合わせて自動化するものですから、もちろん変わっていくでしょう。AIとの組み合わせた活用も期待されます。今だとAI-OCRと呼ばれる手書き文字認識ですね。他には、AIの学習に必要なデータを分類することにより、AIを育てるのという観点でもRPAは使えるでしょう。センサーからデータを取得して成形するまでのプロセスにおいて、データの形が不揃いでも、RPAでつなげるだろうと思います。一連のプロセス全体が完全にデジタルでつながるために、プロセスをコントロールする役割として期待されます。
−RPAもクラウドに乗せる動きがありますが、どのようにお考えですか。
RPAもモノやコトが起きているエッジからデータを集めるわけですから、ハイブリッドの知見が重要になってくるものと考えています。
ただし、マイクロソフトとしてはRPAを提供していません。Azureはプラットフォームとして必要な環境を整える役割であり、「Azureとパートナーのソリューションがつながったときに、どのような付加価値を生み出すか」に重きを置いています。ですからRPAを利用したいというニーズに対しては、RPAソリューションパートナーと一緒になって応えるべきだと考えているからです。
もちろん、RPAと組み合わせるためのパーツは多数取りそろえ、つながるようにする仕組みは用意しています。一例を挙げると、データを統合するツールや分析ツール、結果を利用するアプリケーションを簡単に作れるツール、アプリをつないで一連の処理を自動化する「Flow」などです。
また、RPAに限らずシステムのテンプレートを作れる機能としてARM(Azure Resource Manager)があります。これを使えば、例えば、人事用のRPAソリューションを作ったとして、それをAzure上に乗せてソースコード化すると、他の企業にコピーして提供できるようなツールです。
※ ARM(Azure Resource Manager)はアプリケーションのインフラとなるリソース(ストレージ、ネットワーク、仮想マシンなど)をデプロイし管理する機能で、ARMテンプレートはそれら複数のインフラリソースをグループ化してまとめてデプロイし、管理できるJSON形式のテンプレート。様々なテンプレートが Azure クイックスタートテンプレートに公開されている。
人手不足解消に向けてAzureを通じたRPAの提供体制を整備
−2018年7月、「Robot As A Service on Azure」をRPAテクノロジーズ株式会社と共同開発すると発表がありました。その目的について教えてください。
日々、需要が高まる領域なので、企業の付加価値を高めるラインアップとしてRPAは不可欠であると考えています。この取り組みでは、「BizRobo!」や「Blue Prism」といったRPAツールをAzure上に構築し、全国の企業が簡単に利用できるようにするものであるため、人材不足という課題に対して、一つの解になると考えています。
とはいえ、RPAは導入時につまずくことも少なくないので、全国に広がるパートナーネットワークを持つRPAテクノロジーズと協業することで、しっかり課題に対応できるだろうと期待しています。
−クラウドであれば、ハードル低く始められそうですね。
そうですね。ただ、次の段階として、どうすればもっと簡単に使えるようになるのかが課題になると思います。そのためには、インダストリー毎のソリューションテンプレートのようなものを用意するのが一つの解になるでしょう。ロボットをゼロから作るのではなく、ほぼパッケージ化された状態で用意されていて、ドラッグ&ドロップで使えるようにするのが望ましいです。両社で話し合いながら、ニーズの高いところからパッケージをたくさん揃えていくことになると思います。
RPAテクノロジーズから出てくるニーズは現場寄り、マイクロソフトはインフラ寄りだと予想されます。課題やニーズの収集、そして営業面においても、両社の特徴をつなぎ合わせて補完できれば協業としては理想的ですね。
最初は限られたラインアップだとしても、ゆくゆくは、細かな多様なニーズに対応する無数のソリューションの中から、自分たちに合わせて、スマートフォンのアプリのようにダウンロードしてすぐ使えればいいですよね。ITはエンジニアのためではなく、現場で使うためのものですから、誰でも使えるようにしたいと考えています。
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