RPAの利用率は技術大国インドの約5分の1、日本のトホホな事情
Automation AnywhereがRPAとAIの活用に関する調査レポートを発表した。調査結果によると、インドや米国ではこれらの技術に対する期待が大きく、すでに活用している割合も高かった。それに対して日本の状況は立ち遅れている。その割合はいかに。
Automation Anywhereが、RPA(Robotic Process Automation)を主とする業務の自動化技術とAI(人工知能)の活用に関する調査レポート「Making Work Human:5 Challenges(人間らしい働き方:5つの課題)」を発表した。調査結果によれば、調査対象者の72%がAIやRPAを業務の改善に役立つ技術として認識していた。一方、国別のレポ―トみると、日本では同様の回答が48.7%と下がり、RPAを利用している割合は13%に止まることも明らかになった。
日本におけるテクノロジーへの意識や業務自動化の状況を、世界規模で鳥瞰(ちょうかん)すると何が見えてくるのか。
RPAやAIによる業務改善に約半数は「興味なし」――日本の事情
RPAやAIが人間の仕事を奪うという論調がある一方、調査レポートによれば、調査対象者はそうした考えを持っていなかったとしている。具体的に、全体の72%がAIは人間に取って代わるものではなく、人間と連携できる対象だと考えていた。国別の傾向を見ると、こうしたテクノロジーを仕事のパートナーとして捉える従業員の割合が高いのは、インド(87.7%)や米国(82.4%)、英国(70.8%)で、日本は48.7%だった。
さらに同レポートは、従業員の関心が「RPAやAIが仕事を奪うのではないか」ということよりも、むしろ「AIによって業務がどのように改善するのか」ということに向いていたと主張。中でもインドと米国は、AIによる業務改善に高い関心を示し、「関心がある」と答えた従業員の割合はそれぞれ90.2%と75.5%だった。一方、日本で同様の回答は52.4%と割合が下がった。
RPAやAIへの期待度は日本が最低値、なぜ?
RPAやAI技術が長期的な生産性向上につながると考えている従業員の割合は、全体で57%。国別では、インド(86.5%)と米国(66.6%)が高かった。これらの国では、企業が従業員に対して、さまざまなRPAやAI技術を試すことを推奨している。
これに対して日本は、「生産性向上につながる」と考える従業員の割合は、最も低い36.6%だった。新しい技術によって生産性が向上するとは期待していないようだ。
AIについては、自身の仕事をどのように支援できるのかを知りたいとする従業員の割合はグローバルで66%。ただし、57%の従業員はAIが何なのかが分からずに議論していると感じているとも分かった。
Automation Anywhereは、AIが全てを可能にすると考える「AIウォッシング」の流行は、かつて企業の持続可能性を示すためにまん延した「グリーンウォッシング」に似ていると指摘されている事実にも言及する。同時に、企業に対して、RPAやAIの性能を誇張しないよう注意を呼び掛ける。こうした認識は既にインドや米国では広まっているが、日本ではAIに対する知識と議論がまだ不十分だという。
日本はインドの約5分の1のRPA利用率、直面する壁は?
では、これらのテクノロジーの活用状況はどうか。「現在の業務でRPAを既に利用している」と回答した割合は、全体の38%だった。この数字は今後継続して増加するとAutomation Anywhereは見ている。ただし活用状況は国別で大きな差があり、既に利用している割合はインドで66%、米国で49%なのに対して、英国では26%、日本では13%に止まった。
同社はRPAやAIの活用を拡大するに当たって、企業が直面する課題として、(1)技術、(2)スキル、(3)多様性、(4)信頼性、(5)レジリエンス(弾力性、柔軟性)の5つを挙げた。例えば5つ目のレジリエンスについては、変化を受け入れなければ技術の進化は遅くなり、従業員のスキルや企業の多様性、信頼性は向上しなくなるとしている。
なお、今回の調査は、米国、英国、インド、日本の4カ国で、各1000人の従業員を対象とした。さらに、RPAやAIを活用するに当たっての課題については、専門家にインタビューした。
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