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単純労働をロボット化する「RPA1.0」から頭脳労働を担う「RPA2.0」へ––NECマネジメントパートナーの飽くなき挑戦

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
移管に関する FAQ やお問い合わせは RPA BANKをご利用いただいていた方へのお知らせ をご覧ください。

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RPA BANK

2018年12月に、従業員数10万人の巨大グループにおけるバックオフィス業務機能を一括で担う組織NECマネジメントパートナー株式会社(神奈川県川崎市)でのRPA活用取材(従業員数10万人を見据えた業務改革。RPA導入で終わらない定着までのノウハウとは――NECソリューションイノベータの挑戦)を実施した。

当時既に200体を超えるロボットが稼働し、ロボットの定着を見据えた業務可視化手法「HIT.s法」と「ハイブリッドRPA」の活用が特徴的な同社の取り組みであった。

現在同社では、単純労働に限定される「RPA1.0」から、頭脳労働へ自動化領域を拡大させる「RPA2.0」への取り組みに着手しているという。

数多くの業務の自動化により手作業時間の大幅な効率化を実現している同社が目指す第2世代RPA活用“RPA2.0”の取り組みについて、グループ内でのRPA推進の担当者やRPA2.0を実践している現場部門の担当者らに話を聞いた。

■記事内目次

<目次>

1. 単純労働のロボット化でなく頭脳労働にもロボットを

2. RPA2.0への懐疑的な見方も、実績で示すことで浸透する理解と期待

3. NECグループへの認知拡大と摘要業務の拡大を目指す


単純労働のロボット化だけでなく頭脳労働にもロボットを

──現在のRPAの活用状況についてお聞かせください。

渡辺将人氏(業務改革推進本部 シニアエキスパート): 業務改革をミッションとする当社では、いま「RPA2.0 」を合言葉に、コグニティブな自動化の適用を加速する第2世代のRPA活用を目指しています。これまでは多くのRPA導入企業と同様に、従来人間が行っていた手作業をロボット化する「RPA1.0」の範囲でのRPA活用を展開してきました。

しかしRPA1.0だけでは、たとえば非構造化ソースからの情報抽出など、人間の頭脳労働までをロボットに任せることは難しいため、業務改革の効果が限られることが段々とわかってきました。そこで今度はRPA適用の範囲をより付加価値の高い業務へとシフトしていこうとRPA2.0の取り組みを進めているところです。

──RPA2.0を担うツールの選定や導入はどのように進めていったのですか。

渡辺: 人間が行う作業とロボットが担う作業をプロセスレベルからコーディネートできるソリューションとしてWorkFusionの「Smart Process Automation」に着目しました。2018年春頃より検討を開始し、6月にはPoCを開始しました。

PoCでは主に、われわれが求める非構造化データの抽出がどれくらいの精度で行えるのかを試しました。非定形の帳票から目的とする情報を取り出す作業で、もともと人の目で見てここに情報があると拾ってきて、別の情報と合わせるという内容です。

この段階ではAIの学習レベルがまだまだ低かったものの、間違いなどは人間が補正することで、十分に実業務で役立つと判断できました。AIが提案した内容を人間が確認するというフローになるので、人手がゼロにはならないものの、関与度合いを最小化できるため従来よりも大きく効率化が可能です。

そしてSmart Process Automationは、人間が補正した結果を学び続けるため、日常業務で使えば使うほど精度が向上し、より効率化できるのも魅力でした。

もう1つの重要確認事項であった日本語のドキュメントへの対応も次第点に達しており、さらに秋には別のOCR製品と比べた検証も行ったところ、こちらも十分なアウトプットを確認できたことから正式に導入を決定しました。


NECマネジメントパートナー株式会社 業務改革推進本部 シニアエキスパート 渡辺将人氏

RPA2.0への懐疑的な見方も、実績で示すことで浸透する理解と期待

──現在どのような業務でSmart Process Automationを活用しているのでしょうか。

中村正寿氏(経理財務サービス事業部 審査サービス部 部長): 経理財務サービス事業部で段階的に活用を進めています。私が所属する審査サービス部での一例を挙げると、契約の確証や売上の確証など、確証に基づいて伝票を起こすに当たって、申請内容と確証内容とが一致しているかをチェックするといった内部統制的にも重要な作業をSmart Process Automationで行っています。

確証がデータ化されている業務は既にRPA1.0で自動化されていますので、Smart Process Automationは残る紙確証の業務を担うとともに、RPA1.0での処理と合わせて一連の売上審査プロセスを基本的にすべて担当しています。

その中で人間の関与が必要な際にはSmart Process Automationが提示して判断を仰ぎます。このため日常の業務の中で常に人が関わる必要はなくなり、しかも日を重ねるごとにAIは賢くなっていっていくので、将来的には十分な成果が得られるものと期待しています。

──RPA2.0ならではと感じられているメリットはありますか。

中村: 特に大きいのが帳票の読み取り精度の高さですね。RPA1.0ではきちんと読み取れるか否かは帳票の品質に大きく左右されていました。傾きがあったり縮小率の問題で正確に読み取れなかったりしたのですが、それがSmart Process Automationでは大きく改善されているので、これはコグニティブな技術ならではだと感じています。

そして、人間とロボットによるある意味で作業のクロスチェックができるようになったことで、単なる効率化に留まらず業務担当者の精神的負担までも軽減できるのも、RPA2.0ならではのメリットではないでしょうか。

──業務の現場からはどのような声が聞かれますか。

中村: 当初はかなり懐疑的な見方をする声が挙げられていましたが、実際につかってみたところ「(もっとできないかと思っていたけれど)意外とやるね」といった感想が多いですね。


NECマネジメントパートナー株式会社 経理財務サービス事業部 審査サービス部 部長 中村正寿氏

NECグループへの認知拡大と摘要業務の拡大を目指す

──今後RPA2.0をどのように展開していきたいと考えていますか。

中村: RPA1.0でカバーできる業務領域は全体の半分ぐらいですので、非定型帳票を扱う業務などそれ以外の領域にまで広げるのは悲願でしたが、これまでの実績から大いに可能性が見えてきました。絶対にやるべきことでもあるのでRPAの推進部門と協力しながら適用業務を拡大していきたいですね。

渡辺: 現在はAIが学び続けている段階であるため、人による確認も必ず入れるようにしていますが、次の段階としては一定のしきい値を越えたら人間による確認がなくとも次のステップに進めるようにしたいと考えています。

そしてNECグループ内にSmart Process Automationでの処理に向いている業務があったならば、しっかりと刈り取っていけるようグループ内での周知に務めていく構えです。

──「RPA1.0」から「RPA2.0」の取り組みの全体像が理解できたのと同時に、今後の更なる成果の創出を期待しています。貴重なお話をありがとうございました。

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