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RPAで加速させるAI活用──UiPathが新サービスと提携戦略を発表

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「UiPath」を国内展開するUiPath株式会社は2019年7月30日、RPAとAI(人工知能)の連携に焦点を当てたイベント「UiPath AI EXPO」を都内で初開催。企業実務でのAI活用を促進する新サービスの開始ならびにAI関連企業・RPAユーザー企業との提携強化を発表した。

UiPathのユーザーが1,200社を超え、主要なRPAツールとして認知されている日本は、同社が研究開発投資の4割を充てる最重要市場だ。発表では、こうした強固な基盤を生かしてグローバル市場で先行したAI連携を加速させると同時に、RPAとAIが相乗効果を発揮できる新たな活用モデルを日本から発信する戦略が示された。本稿では、イベント当日の模様をダイジェストで紹介する。

<目次>

1. UiPath向けのマーケットプレイス「UiPath Go!」日本語版がオープン

2. RPAの機能を強化する「AI Fabric」

3.RPAとの融合が「誰でも使えるAI」を実現

4.日本発「RPA×AI」で、人材創出100万人の新構想



UiPath株式会社代表取締役CEOの長谷川康一氏

AI連携などのロボット公開サイト「UiPath Go!」日本語版がオープン

この日同社から発表された主要なトピックは

  • マーケットプレイス「UiPath Go!」日本語版の開設
  • UiPathユーザー100社を目標としたAI連携の実証実験をAI関連35社との協業で開始
  • 新製品「AI Fabric」のリリース

の3点だった。

このうちUiPath Go!は「コンポーネント」と呼ばれる、さまざまなソフトウエアロボットのダウンロードサイトだ。日本語版の開設と同時にリリースしたコンポーネント50種類(現時点ではすべて無料)のうち、AI連携関連は11種類。同サイトで入手したロボットをユーザーが自前で実装したロボットと組み合わせることで「手書き文字認識」や「テキストメッセージからの感情推測」といったクラウドAIサービスの機能をUiPathと一体的に活用できる。

AI Fabricは、UiPathが展開しているRPAソリューションのAI連携を強化する製品だ。ロボット作成ツール「UiPath Studio」では、操作画面上のフローチャートへのドラッグアンドドロップにより、AIの能力を容易に取り込めるようになる。またロボット管理ツール「UiPath Orchestrator」では、ロボットと連携するAIの管理もまとめて行えるようになる。


米UiPath AI担当バイスプレジデントのプラッブディープ・シン(Prabhdeep Singh)氏

RPAの機能を強化する「AI Fabric」

同イベントではUiPathのAI戦略について、米国本社のPDシン氏(人工知能担当バイスプレジデント)が解説。RPAの機能強化を図る中で特に重視しているAIの機能として

  • コンピュータービジョン(視覚的なユーザーインターフェースの理解)
  • プロセスの理解(自動化対象の選定に先立つ作業パターン分析の効率化)
  • ドキュメントの理解(文書の種類や項目配置の判断)
  • 会話情報の理解

の4分野を挙げた。

この4分野ではUiPath製品へのAIの「組み込み」を順次進めていく計画で、AIはRPAによる業務自動化の「下準備」や「サポート役」として活用されることになる。AI Fabricは、こうした場面でAIの導入および運用管理を速く・容易にするツールと位置づけられる。

一方、上記の4分野にとどまらないコンポーネントを提供するマーケットプレイスのUiPath Go!は、新たなデジタルテクノロジーと既存の情報システムをつなぐ「神経系」がコンセプト。業務の現場で採用される多様な生産性向上策の中で、UiPathのRPAを相互接続のプラットフォームとして機能させることを狙う。

RPAとの融合が「誰でも使えるAI」を実現する

同イベントのプレス向け説明会には、UiPathとパートナーシップを結んだAI関連企業35社の中から3社の担当者が出席。自社技術とUiPathを併用したAI活用のイメージを示した。

このうちチャットボットや画像認識などの機能を提供する米国Petuum, Inc.は、RPAで自動収集されたデータにAIが判断を加え、再度RPAでの処理に戻す用法を想定し、AI Fabricを通じたUiPathとの連携機能を準備中。プロダクトマネージャーのマイケル・チュウ氏は「現在のAIは実用的な精度に達しているが、応用に高度な専門人材を要することが普及を阻んでいる。AI Fabricで『誰でも使えるAI』を目指したい」と意欲を語った。

また、AIアルゴリズムモジュールを開発提供するPKSHA Technologyの子会社で、日本語チャットボットを手がける株式会社BEDOREからは代表取締役の下村勇介氏が出席し、UiPath社内での事例を紹介した。同社は、庶務関連などの社内問い合わせ窓口一本化を目的にBEDOREのサービスを導入。対話を設計する画面からのUiPath連携機能を用いて、応答後に生じる事務作業の自動実行を可能にした。これにより「RPAツールのユーザーアカウント有効化・無効化作業を85%自動化でき、最終的に社内問い合わせ対応全体の25%を自動化できる見通し」(下村氏)という。

さらに、製造・物流・小売など150社以上へのAI導入実績を持つ株式会社ABEJAの菊池佑太氏(取締役CPO)は「AIが裏方としてRPAを支える、あるいはAIの価値を最大化するためにRPAを利用するといった相互連携が進み、RPAとAIの境界は今後あいまいになっていく」との見方を披露。AIの継続的な運用環境を提供する自社のクラウドサービス「ABEJA Platform」とRPAの関係については、近くUiPath Go!でABEJA Platform とのAPI連携コンポーネントを公開すると述べた。

日本発「RPA×AI」で、人材創出100万人の新構想

RPAとAIの関係について、基調講演に立ったUiPath株式会社代表取締役CEOの長谷川康一氏は「非定型の手書き情報をAIでデジタル化し、RPAの活用領域を広げる」「AIに学習させるデータの収集・整理に伴う膨大な単純作業をRPAで効率化する」など、双方にとって連携強化が有益であることを強調。「『RPA+AI』ではなく『RPA×AI』」とも述べ、連携による相乗効果の大きさをアピールした。

さらに同氏は、先ごろUiPathが米国政府との間で75万人へのRPA教育を約束したことに触れ「日本でもAI・ロボットに通じた人材100万人の創出を目標に(UiPathユーザーの約1割にあたる)100社での実証実験を達成したい」との意向を表明。具体的には、RPA×AIによって実現でき、かつ企業実務へのインパクトが大きい機能として

  • 届いたEメールからAIが読み取った項目をRPAが顧客管理システムに登録し、さらにチャットボット経由で営業担当者に知らせる機能
  • 顧客管理システムの登録内容から見込み客の確度をAIで推測し、優先順位の高い顧客に関する情報をRPAが営業担当者にメール送信する機能

のテスト導入を提案した。

「ここまでできれば、RPAとAIを併せて導入したくなる現場も多いはず。早期に国内での成功事例をつくりたく、先駆的なユーザーの協力をお願いしたい」と訴えた長谷川氏の熱意に、約2,000人の来場者はどう応えていくのか。今後の進展が注目される。

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