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ロボット化の対象業務選定を進化させる「ディスカバリーボット」とは

2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を採り入れた組織の多くが導入初期にぶつかる“壁”となっているのが「対象業務の選定」だ。

導入推進担当者の説明を聞き、RPAに期待した現場から寄せられてくる導入候補が、すべてロボット化にふさわしい作業ばかりとは限らない。中には「ロボット化以前に、大幅な作業手順の見直しが必要」と分かる場合もある。それもまた業務改善に役立つのは確かだが、もっと手早く、大きな効果が得られるロボット化のポイントを見落としている可能性もある。

こうした業務効率化の対象選定プロセスも、もっと効率化できるのではないか。そんな提案が、RPAの先進地である米国から寄せられている。本記事では、2019年6月7日に東京国際フォーラムで開催された「RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019」で登壇した、RPA BANKのグローバルパートナーである米国RPA AI協会のロハエル・カーン氏によるプレゼンテーションを紹介する。

<目次>

1. RPAの課題はロボット化の抽出と選定にある

2.「プロセスディスカバリー」が、ロボット活用を加速してくれる

3.「ディスカバリースポット」と「プロセスマイニング」は似て非なるものである


RPAの課題はロボット化の抽出と選定にある

RPA・AI関連の業界団体として2013年に設立された米国RPA AI協会で、デジタル化ソリューション普及の責任者を務めるカーン氏は、アウトソーシングなどHR関連業界で要職を歴任。業務改善や生産性向上の実情に通じたエキスパートだ。

セッションの冒頭「世界のあちこちで『業務を自動化したい』『どのプロセスを?』『わからない』という会話が交わされている」と切り出した同氏は「RPAツールを購入するのは簡単だが、効果を出すのは容易ではない」と断言。その理由を次のように分析した。

「RPAに取り組む企業の多くは、確たる戦略や目標がないまま業務のデジタル化に着手する。そこで単に目についたターゲットをロボット化していくだけでは、隠れている最も効果的な導入ポイントに気づくことができず、また業務フロー全体でデータの流れを最適化するのも困難だ」

「また、経営の観点から業務のロボット化を成功させるには、投資に見合うだけの効果が得られなくてはならない。そのためにもまず、現状の業務を評価して改善の目標値を定める必要がある」

カーン氏は続けて、理想的なRPA導入の流れを、以下の3段階に整理した。

1.現状を把握して非効率的な作業を抽出、導入効果と実現可能性を踏まえてロボット化の優先順位を決める「プロセスディスカバリー」

2.基幹業務の処理に耐える管理体制を整え、様式の統一が不十分なデータの処理にAI(人工知能)も併用しながら、業務の自動化・半自動化を進めていく「プロセスオートメーション」

3.ロボット化した工程の継続的なモニタリングをもとに、さらなる改善を続ける「コンティニュアスインプルーブメント」

実際にこうした段階を踏んでRPAを導入した、ある業務受託企業では、計画的なRPAの導入によって業務負荷を着実に軽減。課題としていた高い離職率を年間23%から14%にまで改善したという。

また、ある大銀行の不動産担保ローン部門は業務増への対応として、部署をまたいで進む決裁業務の一連の流れを精査。もっとも効果的なポイントをロボットに置き換えることで変動金利の処理を適正化し、成約率の向上につなげたという。

「プロセスディスカバリー」が、ロボット活用を加速してくれる

プロセスディスカバリー、あるいはコンティニュアスインプルーブメントの段階で、ロボット化の対象業務選定を速く・的確に行うためにはどうすればよいか。カーン氏が示した解決策は「ディスカバリーボット」の活用だ。

ディスカバリーボットとは、業務上行われるデータ処理の内容や頻度をモニタリングするソフトウエア。カーン氏によると「業務フローの最適化に先立って、社員が業務時間中、PCでどういう処理を行っているか理解するためのもの」だという。

社員各自がPC上で行う作業内容が詳細に把握できるというディスカバリーボット。その利用に伴って問題となりうるのは、効率化の対象となる業務そのものの進め方だけでなく、業務とは直接関係しない私的なネット閲覧なども明らかになりうる点だ。

こうした懸念についてカーン氏は「ディスカバリーボットの運用では、業務と無関係なPC操作について、具体的にどのようなサイトが閲覧しているかといった詳細には立ち入らない」と説明。本来業務に充てられている時間の割合を明確化するなど、あくまでも業務改善の範囲で利用するものだと述べた上で「現状をとらえ、継続的な改善モデルを確立するためにも、RPAツールの導入に先立って業務をトラッキングすることを検討してほしい」と呼びかけた。

「ディスカバリースポット」と「プロセスマイニング」は似て非なるものである

まだ耳慣れない概念である「ディスカバリーボット」。その詳細と活用イメージについて、講演後のカーン氏に聞いた。

―今回のセッションの要旨は「対象業務選定でつまずきがちなRPAのユーザーに対する、ディスカバリーボット活用の提案」ということだろうか

「ディスカバリーボットは重要なツールだが、ソリューションの1ピースだ。自動化を実現する最初のステップとして紹介している」

「実際の運用は、作業の現状に関するデータを扱うディスカバリーボットのほか、作業を自動実行するRPAツール、業務プロセスをデザインするワークフローソフトなどと統合された形で、データ分析やプロセスデザインの専門家によるサポートのもとで行われるだろう」

「企業は、顧客が求めるサービスをグローバル規模で、迅速に提供するために巨大なオペレーションを構築するが、その改善には時間も費用もかかってきた。既存の作業状況をトラッキングできるディスカバリーボットは、そうしたコストの多くを解消し、経営的にインパクトのあるメリットをもたらすためのものだ」

―現状の業務プロセスを把握するツールとして「プロセスマイニング」が注目されている。ディスカバリーボットは、プロセスマイニングとは異なる技術か

「ディスカバリーボットでは、業務に用いられるアプリケーションの作動時間や、そこで用いられたファイル、送受信されたデータのほか『どの作業にどのくらいの時間がかかっているか』も把握できる。プロセスマイニングと似ている部分はあるが、より包括的で詳細な状況が分かる」

―従業員がPCで行う作業内容を詳細に把握できるとすれば、プライバシーや労務管理上の配慮も必要となるのでは

プライバシーは当然重要だ。ディスカバリーボットでは、業務と無関係なアクセスに関して、それがあったことを示すだけで具体的な内容は明かさない運用ができる。

ただ例えば、8時間の労働時間中に業務と関係ないネットサーフィンが半分以上を占めているなら、そうした事実をディスカバリーボットの導入後に隠すことはできない。決められた時間に働く約束をしている以上、これはやむを得ないだろう。

ディスカバリーボットを導入する企業の責任者に対しては、把握の対象とするアクセスの範囲をあらかじめ特定することを推奨している。これにより、プライバシーとセキュリティーは完全に守られ、労務管理上の問題も生じないと考えている。

―具体的なソリューションは企業が提供することになると思うが、今後の日本での展開はどのような見通しか

ソリューションとともに、米国での先行事例から得たナレッジを日本に伝えたいと考えている。詳細はグローバルチャプターのパートナーでもあるRPA BANKを通じて、発表する予定だ。

ディスカバリーボットやRPAを組み合わせた業務自動化においては、社内の諸部門が足並みをそろえて取り組む必要があり、企業文化に合わせた進め方の違いも出てくる。ぜひ日本市場を熟知したパートナー企業とともに普及を進めていきたい。

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