6000億円、ホントに持ってる? ビットコイン発明者を自称しちゃった男、資産大放出へ:528th Lap
「われこそは、世界で唯一のサトシ・ナカモトである!」と宣言する人は世界中にいるようだ。だが名乗ってしまった結果、持っているかどうかが怪しい資産を差し出す羽目になった男がいる。人は一人では生きていけないのだから、友人は大事にしたいものだね。
ビットコインといえば、もはや押しも押されもせぬ暗号資産(仮想通貨)の代表格だが、その“産みの親”とされる人物はいまだに不明だ。「サトシ・ナカモト」(Satoshi Nakamoto)氏がビットコインの考案者とされている。
しかしナカモト氏がどこに住む人物なのか、存命なのかそもそも実在するのか……などなど、その“正体”は全く明らかになっていない。世界には「自分こそがサトシ・ナカモトである」と自称する人や、「あいつがナカモトだ」と第三者が指摘する人が何人かいるのだが、結局現時点ではナカモト氏が誰なのかは不明のままだ。
そんな状況で、ナカモト氏を自称する1人がとある件で訴えられ、敗訴の上、55万BTCものビットコインを支払うハメになってしまったのだ。簡単に55万BTCとはいうが、現時点で約6120億円もの価値がある。いったい何があったのか?
まず今回の「自称サトシ・ナカモト」は、オーストラリアの投資家であるクレイグ・ライト氏だ。2016年5月にイギリスの公共放送局BBCのインタビューに応じ、「自分こそがビットコインの発明者である」と話した。
2009年1月に世界で初めて行われたビットコイン取引の際に使われたブロックチェーンの暗号鍵を所有しているとして、これを証拠としていた。
ライト氏がサトシ・ナカモトであると認めるビットコイン関係者がいる半面、「彼の出した証拠はインチキだ、断じてナカモト氏ではない」として糾弾する人も少なくない。
しかし彼がナカモト氏本人かどうかはともかくとして、初期のビットコイン開発に携わっていたのは間違いないようだ。現在よりもはるかにマイニングが容易だったビットコイン黎明期に採掘したビットコインを多数所有しているとされている。
しかし、「なぜ訴えられることになった?」という疑問が湧いてくる。実は決してナカモト氏を詐称したとかいう類いの訴訟ではない。
ライト氏以外に、ごく初期のビットコインのシステム開発に関わっていたデイブ・クレイマン氏という人物がいた。実際のところクレイマン氏とライト氏の2人がサトシ・ナカモト氏なのではないか? という推測も少なくなかった。そしてこのたびの訴訟は、まさにこの2人に関わるものだったのだ。
実はクレイマン氏、2013年に病気で亡くなってしまった。クレイマン氏が亡くなる以前、2人はビットコインを発明したさまざまな権利とともに、初期にマイニングした110万BTC以上のビットコインを共同で所有していた。ところがその死後、ライト氏は全てのビットコインと知的財産を勝手に所有。さらに「自分こそがサトシ・ナカモト」と主張した。
本来であれば、クレイマン氏の妻であるアイラ・クレイマンさんが相続してしかるべきだ。アイラさんの財産管理人は「ライト氏は2人の会社であったW&K Info Defense Researchが所有するビットコイン関連の知的財産と、55万〜110万BTCもの資産を独り占めした」として、2018年2月にアメリカ連邦裁判所に訴え出た。そしておよそ1年ほどの裁判の後、2019年8月28日に裁判所は「ライト氏はアイラさんへ所有するとされているビットコインの半分を支払い、関連する知的財産も譲渡するべし」という判決を出したのだ。
この訴訟では、ライト氏がホンモノのサトシ・ナカモト氏であるかどうかは問われなかった。その事実関係はともかく、2人が黎明期のビットコインに関わっていたのは間違いなく、ライト氏は当時のビットコインを所有していると結論づけられた。裁判中にライト氏は一貫性のない陳述をしていて、裁判を担当したレインハート判事はこれを心証良く思わなかったようで、ライト氏を「詐欺師」と厳しく断罪したそうだ。
そしてなにより、110万BTCものビットコインの現物を誰も確認していない。ライト氏自身は裁判の中で「約110万BTCは安全のために業者に依頼して保管してもらっていて2020年になったら返還される」と証言しているというが、それを疑問視する関係者もいるという。
しかし判決は判決だ。証明できないとしてもライト氏は55万BTCを支払わなければならない。
結審後、ライト氏は上訴を見送って裁判所の命令に従うとしているというが、アメリカに上陸したハリケーンを理由に支払いの猶予を申し立ててもいるそうだ。果たしてそもそも110万BTCものビットコインは存在するのか? その半額は支払われるのか? そしてライト氏はナカモト氏だったのか? まだまだあとを引きそうな事件だ。
上司X: ビットコインの発明者、サトシ・ナカモト氏とされている人物が55万BTCの支払いを求められた、という話だよ。
ブラックピット: ほえー。55万BTC、6000億円以上かあ。あるならちゃんと出しなさい、ということですね。それにしても2人で「サトシ・ナカモト」ってことはええと、初期の「藤子不二雄」みたいなものですかね。
上司X: いやそこは「ゆでたまご」じゃないか? というのは置いておいてだ、ホンモノのナカモト氏で、ビットコインの採掘が容易だったころなら確かにそれぐらい所有していてもおかしくはないかもしれないなあ。しかしビットコインって昔はいくらぐらいだったんだろ?
ブラックピット: ええと……。2010年5月に、1万BTCがピザ2枚との交換に初めて成功した、という記録がありますね。ピザ2枚は約25ドルだったそうです。
上司X: 1万BTC=25ドルだったってことになるな。つまりその当時に55万ビットコインを持っていたとしたら……資産価値1375ドルか。
ブラックピット: 現在の日本円換算だとして15万円弱、ってところですかね。
上司X: まさかナカモト氏もここまで資産価値が上がるとは思ってもみなかったろうなあ……本当に110万BTCを持っているなら、だけど。半分を差し出してももはや「別に…」って感覚なんじゃないのかね? 6000億円も手元に残るわけだろ?
ブラックピット: だから素直に従おうとはしてるんじゃないですかね? ビシッと払えたとしたら、やっぱり彼らが2人でナカモト氏だった、ってことになるんですかね。でもハリケーンがどうとか言い出してるみたいですけど(笑)。なんか言い訳がちょっとアレだなー。
上司X: アレってなんだよ(苦笑)。しかし55万BTCものビットコインが市場に出ることを警戒している暗号資産投資家もいるそうで、実際このニュースでビットコイン市場がバリッと動いた、なんて話もあるそうだ。まあビタ一銭、というかビタ1BTCも持ってない俺には縁遠いはなしだけどな……。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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