原価も粗利も見えない「どんぶり勘定の収支管理」カンタン改善法(2/2 ページ)
ある中小規模の製造系企業は、受注案件の製造進捗(しんちょく)と予実管理に悩んでいた。経営に必要なデータである原価率や粗利をリアルタイムに把握できず、かといってパッケージシステムを導入しようにもコストがネックだった。選んだ解決法とは。
「案件管理アプリ」「製造進捗管理アプリ」の開発レシピ
では、どのようにして案件管理アプリと進捗管理アプリを開発したのでしょう。ここからは、開発方法について「自動計算」「データ連携」の2つのポイントに絞って説明します。
案件管理アプリと進捗管理アプリは、サイボウズのノンプログラミング開発プラットフォーム「kintone」を活用して開発を進めました。顧客マスターなどの他アプリとのデータ連携や、粗利率などの自動計算が必要になりますが、kintoneの「ルックアップ」機能と、「計算」機能によって簡単に設定できます。
前回は、Excelシートを読み込んでアプリを作成する手順について説明しましたが、今回は一から作成する方法について説明したいと思います。
まずは、ベースとなるフォームの設計です。フォームの設計は、「フォーム」タブを選び、フィールドのパーツを編集ペインにドラッグ&ドロップし、フィールドパーツの役割に応じた項目を設定します。
システム開発のように、要件定義もフィールドのデータ形式やビューも定義する必要はありません。現場スタッフの求める情報を望ましい形で扱え、必要に応じて改良もできます。
自動計算が必要であれば、フィールドに「計算パーツ」を配置し計算式を入力します。例えば、案件管理アプリでは粗利金額を一覧表に表示していますが、それは「見積総額−製造原価−経費総額」と計算式を入力するだけです。「粗利率」なら「粗利金額/見積もり総額」です。計算パーツは、四則演算とSUM関数(合計計算)が使えます。
他アプリとの連携も簡単です。例えば顧客名を入力するとき、手入力では面倒ですし入力ミスや表記の揺れといったヒューマンエラーが起きやすくなります。「ルックアップ」フィールドパーツを使えば、簡単にアプリ間のデータ連携が可能になります。顧客マスターと連携させることで(※)、該当するフィールドにデータを自動反映させることもできます。アプリ連携はkintoneで作成したアプリのみ連携が可能ですが、顧客マスターもフォームを設定していくだけで簡単に作成可能です(図7)。
こうした手順で2つのアプリを完成させました。コードを書く必要がないため、必要に応じて現場で機能追加や修正も可能です。荒削りなものでも、一度アプリを作成してみて使用感を確認しながらどんどん改良してみると良いでしょう。
次回は、kintoneで作成した見積書や請求書、各種伝票など、帳票を自社のオリジナルフォーマットの形式で出力する方法について解説したいと思います。
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