「紙に手書き」文化が根強い中小企業の業務デジタル化の現在地
「紙の文書に手書きのサイン」が色濃く残る中小企業。電子サインといったソリューションが出始めている中、中小企業への浸透具合はどうだろうか。アドビシステムズは、中小企業における業務デジタル化の現実を調査した。
アドビシステムズは2019年9月30日、従業員数300人以下の中小企業を対象に実施した「業務効率化に関する実態調査」の結果を発表した。今回の調査は、主に電子サインソリューションの活用動向を目的としたものだ。
「業務のデジタル化は重要」、では現状は? 調査で見えた実態
業務デジタル化の重要性に対する認識度合いについて、「紙ベースのプロセスからデジタルでのプロセスへ移行する『業務のデジタル化』はどのくらい重要だと思うか」という問いに対して「重要(極めて重要・重要)」だと回答した割合は、62.9%だった。職種別で見ると、特に事務業務に従事する従業員が「重要(極めて重要・重要)」だと感じており、全体の70%を占めた(図1)。
図1 紙ベースのプロセスからデジタルでのプロセスへ移行する「業務のデジタル化」は、どのくらい重要だと思うか(構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない)(出典:アドビシステムズ)
アドビシステムズは「事務に従事している従業員は日頃から紙の書類を取り扱う機会が多いため、業務効率化が期待できる業務のデジタル化の重要性を実感している」と分析する。
さらに契約書への署名方法について「現在、一般的な契約書はどのようにして署名を取得しているか」との問いに対しては、「紙の書類にペン等で署名」が最多で89.8%だった。「電子サインソリューションを使用している」と回答した割合はわずか3.9%だった。
「紙の書類にペン等で署名」と回答した層に対して書類の保管方法を問う項目では、「紙の書類として保存する」が58.5%、「デジタル文書として保存」が31.3%だった。これらを総合すると、中小企業では「一般的な契約書は紙の書類にペン等で署名し、紙の書類として保存」するのが最も多い結果となった(図2)。
アドビシステムズは、「紙の書類として保存するには保管場所が必要になり、紛失の危険性もある。デジタル文書として保存すれば物理的な保管場所の確保は不要で、紛失リスクを軽減できる。署名も電子サインにすれば署名した書類の郵送は不要となり、郵送費用の削減にもつながる。署名した書類は電子メールなどで瞬時に相手に届くため、署名完了までにかかる時間を大幅に短縮できる」と書類の電子化の利点を挙げる。
加えて「電子サインは業務のデジタル化による利点を享受しやすい。電子署名とタイムスタンプによって行われる電子契約は改ざんの危険性が低く、クラウドで管理することからアクセス履歴を残しやすい」と同社は考える。さらに電子サインを使用した電子契約は印紙税が不要で、紙の契約書を送るための送料や倉庫代などの保管料もかからない。業務負担やコストの削減にもつながるとしている。
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