HPE Cloud Volumesとは? 今あるデータをそのまま使うクラウドストレージサービスが日本でも利用可能に
日本でももうすぐ使えるようになる「HPE Cloud Volumes」はどんなものだろうか。何がメリットでどう使えるかをまとめる。
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は「HPE Cloud Volumes」(以降、Cloud Volumes)を2019年11月1日から国内でも提供を開始する。
Cloud VolumesはHPEが提供する従量課金制のクラウドストレージサービス。特徴は、HPE独自のパブリッククラウドをDRサイトとして利用でき、そのデータを「Amazon Web Services」(以降、AWS)や「Microsoft Azure」(以降、Azure)のインスタンスからiSCSIストレージとして接続して操作できる点にある。現在はAWSとAzureのみだが、間もなく「Google Cloud」も利用できるようになる見込み。
Cloud Volumesを使えば、例えば「AWSで開発したデータのクローンにAzureのアプリケーションからアクセスする」といった使い方が可能になる。AWSやAzureのインスタンスからは、どちらもiSCSI接続のストレージに見えるため、特別な操作は不要だ。1ボリュームあたり最大5万IOPSのパフォーマンスを提供できる。
東京DCからサービスを提供
サービス提供を前にした記者会見にはHPEストレージ&ビッグデータ クラウド・データサービス担当VP兼ゼネラルマネジャーであるアシッシュ・プラカーシュ氏が駆け付けた。プラカーシュ氏は、Cloud Volumesについて、「ビジネスアプリケーションのデータ移動ではなく、今あるデータをマルチクラウドで利用できるようにするソリューションだ」と説明する。サービス提供拠点は計画を含めると北米、欧州に複数あるが、アジア太平洋地域では今のところ東京が唯一の拠点だ。
「日本の顧客はHPEにとって非常に重要。Cloud Volumesは単一のGUIとAPIを提供しており、どの地域でも固定した価格で利用できる」(プラカーシュ氏)
Cloud Volumesとは? 一般的なパブリッククラウドと何が違うか
Cloud VolumesそのものはHPEが独自に提供するサービスだ。AWSやAzureのポータルからメニューで選択する種類のものではなく、HPEの独立性を維持して運用できる点がポイントだ。Cloud Volumesは「HPE Nimble Storage」(以降、Nimble)をベースに同サービス向けに開発されたストレージで、マルチテナント型でサービスを提供する。データセンターの詳細は明かされなかったが「各ハイパースケーラーのデータセンターに近い位置」に設置されているという。99.9999%のSLAを誇るNimbleをベースにしているため信頼性についてもそれに準拠するが、提供サービスとしてのSLAは99.95%としている。
Cloud Volumesのデータは256bit AES暗号化で保護される。またデータ保護は秒単位で差分を取得でき、課金は変更差分が発生したときのみ。データ保護は秒単位で実行され、変更差分のみに課金する。インスタントクローン、シンクローン機能を使えば短時間でテスト/評価用のデータを切り出せる。こちらも課金は差分のみだ。データの読み出しは費用がかからない。Cloud VolumesとAWSやAzureへの接続はそれぞれ各サービスの専用線サービス「DirectConnect」「Express route」をベースにした課金になるため、自社で個別に接続するよりもコストを低く抑えられる。利用料金や選択できるオプションは次の通りだ。
Cloud VolumesはNimbleがベースなのでHPE InfoSightに対応した機器であればオンプレミスもCloud Volumesも一括してモニタリングできる。パブリッククラウド利用時の課題であるインフラの詳細情報がブラックボックス化しやすい、という懸念をこの仕組みで回避する。この他、InfoSightが持つデータ配置の運用最適化支援機能や予兆検知なども利用できる。ストレージだけでなく、ソフトウェアスタックやサーバソフトウェアなどのモニタリング機能も強化しつつあることから、統合管理できる機器やインフラは増える見通しだ。
通常のパブリッククラウドよりも安く済む? エッジコンピューティングでの利用も
Cloud Volumesの東京リージョン立ち上げの責任者でもある高野 勝氏(日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム技術本部 エバンジェリスト)は「Cloud Volumesは発表以降、非常に評価が高い。高評価のポイントは、データ保護の操作にコストが発生しない点が挙げられる。何らかの災害や障害が発生し、リカバリーを実施する段階で実際のI/Oに対して課金する仕組みだ。インスタンスをシャットダウンしておけば課金が生じないパブリッククラウドもあるため、この特徴を生かせばコスト削減が可能ということも注目されている」と、市場の期待が高い点を強調した。
この他にも、エッジコンピューティングの効率化にも活用できるという。Nimbleをエッジに置きIoT(モノのインターネット)関連のデータを収集し、そのデータをCloud Volumesに送る使い方も想定できる。Cloud Volumesから先は、適宜クラウドアプリで運用するといったシナリオも想定されている。データ分析、画像解析など各クラウドサービスの得意分野で処理し、結果をCloud Volumesに戻す使い方だ。
Cloud Volumesの利用にNimbleは必ずしも必要なく、単独で利用できる。日本ヒューレット・パッカードはCloud Volumesに、Bronze(6万円)、Silver(60万円)、Gold(600万円)の3つのプリペイドパックを用意する。利用はHPEやHPEのパートナー企業経由で申し込む必要がある(月額クレジット型の決済は日本では未対応)。
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