2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用ではよく、最初に導入した部署以外への「横展開」が推奨される。これは、社内の業務プロセスに共通点が多いのを生かし、既存のソフトウエアロボットを“使い回し”することで、投入した開発コストを最大限回収しようという発想に基づくものだ。
定型業務の中には、同一組織内に限らず、おおむねどこでも内容が共通しているものもある。その1つが毎月発生する「買掛金処理」だ。この「受け取った請求書を、元となる契約内容と照合し、責任者の承認を得て会計システムに反映する作業」は、世界中のあらゆるオフィスで行われている。
もし、こうした作業に特化した既成のツールを使えば、自社によるRPAの開発負担は大幅に軽減することができる。また、RPAを使ってタスク単位で自動化するよりも、より本質的な業務プロセス自体の改善につなげることもできる。こうしたアプローチを実践するのが、複合機と文書管理ソリューションのリーディング企業である富士ゼロックス株式会社(東京都港区)だ。
「特化型ツールを用いた業務効率化のメリット」について、請求書処理に特化したクラウドサービスである同社の「買掛金管理自動化支援ソリューション」を、グループ自らの業務プロセス変革に採用している担当者らを取材した。
■記事内目次
1.「業務自動化」「プロセスの一元管理」を同時に実現
2.紙の請求書をクラウドで処理。ロケーションフリーというメリット
3.特化型の強みをRPA連携でスケール。導入効果を最大化するための発想
「業務自動化」「プロセスの一元管理」を同時に実現
──請求書の内容をPDFなどから読み取り、支払い承認のフローを経て、会計システムに登録するまでの工程を自動化・可視化する「買掛金管理自動化支援ソリューション」の社内活用を2019年2月から検討開始し、10月の本格稼働に向けてテスト中と伺いました。現況はいかがですか。
近藤陽一氏 (富士フイルム ビジネスエキスパート株式会社 執行役員 総合ビジネスサービス本部 オフィスサービス統括部長): 現在取り組んでいるのは、富士ゼロックスと関連会社の総務部門が全国の拠点で行う買掛金処理の自動化です。オフィス家賃、駐車場料金の支払いなど月間3,000件にのぼる請求を対象にしています。
当社は富士ゼロックスや関連会社を含む富士フイルムグループのシェアードサービス部門として、この3,000件の受託を少しずつ拡大してきました。今回、既に移管を終えている500件の中から、クラウドサービスと連携させやすい200件を切り出してテストを始め、既に3カ月が経過しました。
まだ本格稼働前の段階ですが、それでも手入力からの切り替えによって従業員の余力を創出できており、最終的には「1人月相当」の業務削減効果を期待しているところです。
──とても順調な滑り出しですね。
塚田充氏(富士ゼロックス株式会社 全社改革室): はい。請求業務への導入にあたっては標準機能をベースに、何点かのカスタマイズを依頼しただけで、すぐ運用に入ることができました。
実はこの業務には以前、別のOCR(光学文字認識)やプロセス管理ツールの導入を検討したことがありました。しかし、単体の機能をつなぎ合わせた構成では期待したほどの効果が見込めず、途中で実用化を見送っていたのです。
その点で今回は、請求書のテキスト認識から承認フロー、データ登録までの進捗をまとめて把握し、1件あたりの処理に要する総時間を大幅に短縮できるようになりました。
時間だけではなく、作業者の心理的負担を軽減できたことも大きな効果です。請求書の処理においては発注データと請求書、実際の支払額の整合が取れているかという突合作業に正確性が求められ、心理的な負担も大きくなってしまいます。自動化により時間を短縮するだけでなく、心理的負担を軽減でき、正確性を向上させることにもつながりました。「特化型ツール」ならではのメリットを強く感じています。
近藤氏: 業務を受託する場合は、作業そのものの品質向上はもちろん、委託元が内部統制上の問題をクリアできるよう「実行した履歴を確実に残すこと」が重要になります。
従来当社では、会計システムに請求書の内容を手入力する際に「入力結果を別の担当者がチェック後、Excelシートのチェック欄を埋める」という作業がありました。今回のツールでは、本来の工程だけでなく、こうした付随的な作業まで自動化された環境が整うことになり、仕事のやり方自体が変わろうとしています。
紙の請求書をクラウドで処理。ロケーションフリーというメリット
──今回のツールは、Webブラウザから操作するクラウドサービスですね。
塚田氏: はい。そこが1つの大きなポイントです。いまだに紙ベースでのやりとりが多い請求書の処理は、場所に制約されないクラウドの活用で、大幅に効率を高められる余地があります。
──クラウド化で、具体的にどのような効率化が見込めるのですか。
塚田氏: まず分かりやすい点として、支払いの承認がスピードアップできます。例えば当社では、役職者もネット接続可能なPCやモバイル端末を持って外出しています。出先でのちょっとした空き時間にも承認作業を行うことができるので、これまでにあった、承認のために役職者の帰社を待つという時間的なムダがなくなりました。
近藤氏: 承認を得るまでの工程も、格段に速く進む見込みです。
私たちが今後、全国の拠点から買掛金の処理業務を集約していく際には、取引先に請求書の送付先を変更していただく必要がありますが、これを徹底するのは容易ではありません。
担当拠点が変わった後も、引き続き従来の拠点に紙の請求書が届く事態は十分考えられ、転送を待っていてはそこから数日間のロスが生じてしまいます。
ここで、クラウドが役立ちます。請求のベースとなる契約内容さえ事前に共有しておけば、請求書を受け取った拠点からスキャンデータがアップロードされ次第、ただちに処理担当の拠点で確認と登録が行えるのです。「どこにいても処理ができる」というのは、我々のように全国に拠点を持つ事業者にとっては非常に大きなメリットだと改めて感じています。
──確かにスマートですね。「紙」に関係する業務効率化といえば、担当者の関心が高いトピックのひとつに「OCRの実用性」があります。今回、請求書ファイルからデータを読み取る機能の精度や使い勝手はどうですか。
石倉あつ子氏(富士フイルムビジネスエキスパート株式会社): OCR製品には、導入前に帳票類の読み取り位置や読み取り項目を設定しなければならないものもあるようですが、このクラウドサービスは既に請求書に特化した設定が整っており、いわゆる「非定型で、多様な」フォーマットの請求書に対応しているため、すぐ使い始めることができました。
AIによる学習機能もあり、例えば「ビルAとビルBで、賃料請求に同じ書式が使われている」という場合、間違ってAと関連づけられた読み取り結果をBに修正すると、AとBの区別は次回から正しく行われるようになりました。オフィスの賃料などは毎月発生するものですから、一度教えれば以降はその通り認識されるというのは非常に便利です。
文字1つ1つの読み取りはさすがにパーフェクトとまではいきませんが、確認や修正には、さほど負担を感じません。これは文字認識された結果とスキャン画像が画面内に並列表示され、比較がしやすいためです。これだけで、紙の原本と首っ引きで画面を見つめていたころに比べれば相当楽になりましたね(笑)。
関連づけのミスと同じく、文字の誤認識についても修正結果をAIが学習しており、使い込むほど賢くなっているのが実感できます。
特化型の強みをRPA連携でスケール。導入効果を最大化するための発想
──特化型ならではの行き届いた機能がそろうとのことですが、用途が限られるぶん「費用に見合った効果が得られるか」も気になるところです。
塚田氏: クラウドサービスなので料金体系には、処理件数に応じた従量部分もありますが、コストメリットの面では「毎月の定額部分を吸収できるか」がポイントになります。
言い換えると、費用対効果の面でこのツールをなるべく有利に活用するには「期間を通してコンスタントに、一定以上の作業量を処理する」という平準化が欠かせません。
近藤氏: さきほどお話ししたとおり、私たちのテストでは「受託済みの500件中、連携させやすい200件」を先行させました。残る300件の接続先は、ツールが出力するデータをそのまま受け取れない会計システムで、実は当社グループ全体では、これと同じシステムが少なからず採用されています。
もし、いま受託済みの500件全部、さらに今後上積みで受託していく作業を処理できれば、スケジュールを分散して平準化を図りながら、費用を大きく上回る効果が得られるでしょう。さらに言えば、請求書が届く部署は総務関連以外にも多くあるため、システム連携の方法さえ確立できれば、スケールメリットを得るのはむしろ容易だと考えています。
石倉氏: 特化型ツールと自社システム連携をサポートする具体的な方法は、いくつか考えられるようです。このうち、当社が当面課題としている300件については、社内の活用事例が豊富なRPAを使って実装する予定です。
──汎用的なRPAツールで得られない「特化型」の強みを最大限引き出すため、RPAとの併用が有効というのは興味深いですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。
塚田氏: 近く始まる本格稼働で、まずは「買掛金処理の作業負担が確実に減る」という実績を重ねていきたいです。最終的には、このソリューションの適用領域を「富士ゼロックスと関連会社の総務部門」から「富士フイルムグループ全体」にまで広げるのが目標です。
近藤氏: 働き方改革の一環として、指定場所に固定されず、作業に応じて最も効率的な仕事場所をその都度自分で選ぶ「ABW(Activity-based Working)」というスタイルが注目されています。
特化型ツールの導入で請求書処理の「紙」の制約を取り払ったことで、買掛金処理もABWが可能な仕事となりました。受託業務として求められる品質やガバナンスを維持しながら、どこまでABWを実現できるか。先駆けとなるようなチャレンジができればと考えています。
石倉氏: AIが苦手なパターンを割り出して対策を立てるなど、請求書の読み取り精度を100%に近づけるための努力。そして請求内容チェックのスピードアップに欠かせない「契約情報の一元化」にも取り組んでいくつもりです。
──さらなる成果が楽しみです。今回は貴重なお話をありがとうございました。
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