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コア機能強化とソリューション拡充で、RPAは「ハイパーオートメーション」へ──UiPathトップが示す新製品戦略

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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを展開するUiPath株式会社は2019年10月30日、プライベートイベント「UiPath Forward ? Japan」を東京都港区のザ・プリンス パークタワー東京で開催。2,200人以上が参加した会場では、UiPathの新製品群が国内初披露されたほか、日本およびグローバルにおける事業戦略が明らかにされた。

本記事では、同社代表取締役CEOの長谷川康一氏と、UiPath最高製品責任者のパラム・カロン氏、ならびにUiPath創業者兼CEOのダニエル・ディネス氏が登壇した同イベント基調講演の模様をレポートする。

■記事内目次

  • 1.現場の知恵を反映した製品群で「日本型RPAを世界標準に」──日本法人CEO・長谷川氏
  • 2.RPA活用の「計画」から「効果測定」まで一気通貫のプラットフォームを提供──最高製品責任者のカロン氏
  • 3.RPA活用拡大でのリソース創出は「すぐ手に届く果実」──米国本社CEOのディネス氏

現場の知恵を反映した製品群で「日本型RPAを世界標準に」──日本法人CEO・長谷川氏

「UiPathのグローバル戦略は、日本型RPAを世界標準にすること。日本の顧客からの要望で始めた『1人ひとりにロボットを(A Robot for Every Person)』というコンセプトは、既にUiPathのグローバルのビジョン戦略になっている」

セッション冒頭、そう述べて胸を張った長谷川氏はまず、世界をリードする日本のRPA市場からフィードバックを寄せてきた自社製品ユーザーとパートナー企業への感謝を述べた。


UiPath株式会社 代表取締役CEO 長谷川康一氏

同氏は続いて、適切な用途での安定稼働によって多大な成果をもたらすRPAの実力をここまでユーザーが証明してきた一方「製品の提供側としては、活用成功までのハードルを低くする責任を感じてきた」と発言。その上で「この1年、日本のRPAが抱える課題についてグローバルの経営陣と共に考えた結果、みなさまと共に歩める製品群がそろったことが、今回イベントを開く最大の理由だ」と語った。

米国ラスベガスで2週間前に発表され、この日会場で実演された新製品は10以上。それらのポイントを、長谷川氏は「コア部分の強化」「エンドツーエンド(一気通貫)の自動化ソリューション」という2つのポイントから解説した。

このうちRPAのコア部分であるロボットの「開発」「管理」「実行」に関して長谷川氏は、データ分析用途にフォーカスして操作性を高めた開発ツールの新製品「StudioX」などの追加と、RaaS(Robot as a Service/ロボットをクラウド上で、必要なときに使用すること)を実現する「Cloud Platform」などが加わったことを紹介した。

また、エンドツーエンドの自動化ソリューションに関して同氏は、多様なツールを通じて「作業工程を分担するロボットと人間」や「ロボットの開発者と利用者」のスムーズな連携を促すと解説。これら製品群を全て日本語対応させた上で、2020年4月までに順次リリースすると明らかにした。

さらに長谷川氏は、UiPathの接続先となる主要なERPパッケージや、併用例が多い他社ソリューションに関して、先行事例に基づくノウハウを積極的に提供していくと表明。RPAとAIの連携に向けた実証実験にも引き続き注力するほか、ソフト面での施策として

  • 監査法人と共同で策定したガバナンス構築ガイドラインの提供
  • 業種・地域単位などでのユーザー会開催
  • ユーザーコミュニティの運営支援
  • パートナー評価制度と技術者認定制度の見直し

などにも重点を置くと述べた。

こうした取り組みの先にあるUiPathの未来戦略について、長谷川氏は「事務のコンピューター化によって生まれた様々なアプリケーションを連携させ、ユーザーの作業を解決する“ラストワンマイルズのアプリ”になる」とコメント。「受注管理」「売掛金管理」などの業務で作業の一部を置き換える手段を提供するだけでなく、各業務の現場で作業を一元管理できるソリューションとしても進化させていくビジョンを示した。

RPA活用の「計画」から「効果測定」まで一気通貫のプラットフォームを提供──最高製品責任者のカロン氏

この日発表された製品群の詳細については、プロダクトの責任者であるカロン氏が解説。新機軸となる「エンドツーエンドの自動化ソリューション」については「RPAの開発運用にあたり、その前後にかかる労力も抑えたい」との要望が特に日本から多く寄せられたのを踏まえ「オートメーションの領域を拡張する」製品として企画されたと明らかにした。


UiPath最高製品責任者 パラム・カロン氏

壇上でカロン氏は、領域を拡張したUiPathの製品コンセプトをあらためて整理。コア部分の前段階では、ロボット開発の対象業務を選ぶ「計画」の自動化を図ったと述べた。

計画プロセスを自動化する具体的な手法としては、作業記録の動画やスクリーンショットに説明文を添えてすぐ共有できる機能や、業務をモニタリングしてボトルネックを特定できる「プロセスマイニング」の技術をM&Aによって獲得。これらを活用し、自動化候補の発見・分析・優先順位づけを行うツール「UiPath Explorer」ファミリーとして提供する。

また同氏は、コア部分の後に続く「測定」プロセスを自動化した新製品として、開発済みロボットの稼働実績や効率化目標の達成度などを数値化するツール「UiPath Insights」を紹介。さらに「Human in the loop(輪の中に入る人)」と名付けたコンセプトのもと、ロボットによる自動処理と、処理結果の確認などの承認作業や例外対応、エスカレーションといった人間のタスクを一体的に効率化していく「協働」プロセスを設け、ここにも新たなツールを用意したと述べた。

「協働」プロセスを担う新製品は、「人がロボットから引き継ぎ、次のロボットに受け渡すまで」のタスク管理ツールなどで構成する「UiPath Apps」だ。Appsの活用で、複雑で長時間にわたる事務処理にもロボットが適用可能となるほか、一時的に“手が空いた”ロボットが別のタスクを実行できるようになり、稼働効率向上にも貢献するという。

RPAの概念を拡張するような新領域での発表が相次いだ一方、従来からの「コア部分」における大きなトピックとなったのが、これも日本からの要望に応じたというロボット開発ツール「StudioX」のリリースだ。

同製品は、業務データの分析に携わる事業部門を主なユーザー層として想定。事務作業でなじみ深く、効率化ニーズも高いスプレッドシート操作の延長上で自動実行のロボットが作成でき、「変数」「型」といったプログラミング分野の知識を要しないのが特徴だ。ツール内部の基本構造は従来と共通で、StudioXで作成したロボットを既存の「Studio」でカスタマイズできる互換性も保たれているという。

StudioXの登場で「プログラミングには詳しくないもののビジネスプロセスに精通した人が、自ら業務を自動化できるようになった」と語るカロン氏は「RPA開発者の裾野を広げ、生産性向上ツールとして多くのインスピレーションを与えるだろう」と自信をのぞかせた。

RPA活用拡大でのリソース創出は「すぐ手に届く果実」──米国本社CEOのディネス氏

UiPathの「生みの親」でもある米国本社CEOのディネス氏はこの日、RPA活用を通じた生産性向上とワークスタイルの変革がとりわけ日本の産業界に不可欠である理由を、産業史にさかのぼって整理した。


UiPath創業者兼CEO ダニエル・ディネス氏

壇上で同氏は「英国に端を発した産業革命後の19世紀初頭、賃金水準や生産性でインドと肩を並べていた日本は(紡績機械の改良による)自動化と、それに伴う労働者の習熟を進めた。その結果、保護的な政策で停滞したインドに大差をつけただけでなく、1930年には英国をも上回る世界最大の繊維輸出国になった」と解説。加えて「100年前の生活を想像することさえ難しい現在の日本がまさに、生産性だけでなく働き方も変えてしまう自動化の威力を示している」と説いた。

労働生産性で先進国平均を下回る状況が続く現在の日本について同氏は、進化するテクノロジーを採り入れることで「働き方の枠組みを変える必要がある」と指摘。UiPathの新製品群について「われわれが提供するのは、企業の奥深くまで自動化を進め、従業員の自由な時間を創出するための『ハイパーオートメーションプラットフォーム』だ」と宣言した。

ディネス氏は、限られた財源の中でUiPathを採用した米国の国連本部が新たに300万人以上の難民を捕捉できるようになり、日本でも各業界の代表的企業への導入で効率化を達成している実績を強調。一方で「日本で現在1,300社を数えるユーザーの多くが、ロボット数台程度の活用にとどまっている」とも明かし、「今回われわれが示したコンセプトに乗れば、ロボット活用ゼロからでも一気に50台規模へ拡大できる。そこで得られる100人単位でのリソース創出は“すぐ手に届く果実(low-hanging fruit)”だ」とアピールした。

「導入しやすいスターターパッケージも用意しており、未導入の企業は今年のうちにRPAにチャレンジしてほしい。『いま、アクションを起こさなければならない』。それが私からのメッセージだ」と、強い表現で決断を促したディネス氏。長谷川氏、カロン氏と肩を並べたセッションの結びでは、日本の働き方改革と生産性向上に賭けた自社のスタンスを示すように「頑張ります」と日本語で決意を示した。

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