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EC時代の急成長企業が選んだRPAソリューション──関通の実践にみる活用拡大戦略とは

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RPA BANK

右肩上がりを続け、国内の消費者向け取引の6%超、企業間取引では3割超を占めるまでになったEC(電子商取引)。注文画面の背後ではいま、商品の保管や在庫管理、出荷作業などを担う「物流支援会社」が必要不可欠なプレーヤーとなっている。

その1社である株式会社関通(大阪府東大阪市)は、この10年で年商を7倍、従業員数を10倍以上に伸ばした成長企業だ。従業員自身が作業を見直して細かい効率化を積み重ねていく「ムダ取り活動」が定着した社内では、残業時間削減などの「働き方改革」を達成。併せて、物流支援業務に特化した独自のシステムを構築して同業他社に販売するなど、効率化のノウハウそのものの事業化にも成功している。

“現場発”の業務効率化が定着した同社では2018年、PC上での定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入。途中から使用ツールを切り替える判断で、導入規模をさらに拡大させる成果も収めている。本記事では、こうした同社の取り組みが披露されたイベント「BizRobo! LAND 2019 TOKYO」(9月18日に開催)での講演概要をリポートする。

■記事内目次

  • 1.“現場発”の業務改善が定着した社内にRPAを採用。月800時間相当の効率化を達成
  • 2.デスクトップ型ツールの活用経験を踏まえ、サーバー型の「BizRobo!」に転換
  • 3.ロボット活用のポイントは「横展開」「業務の見直し」「ミス削減への応用」

“現場発”の業務改善が定着した社内にRPAを採用。月800時間相当の効率化を達成

関西・関東の両地域に設けた18の物流拠点で年間800万個の貨物を処理し、さる2月にはEC大手である楽天と資本業務提携を締結した関通。この日のセッションでは冒頭、RPA以外も含めた同社全体での業務改善の取り組みについて、取締役の達城利卓氏(経営企画本部 本部長)が解説した。

EC市場の急伸で殺到する業務を前に、かつて慢性的な残業が生じていた同社では現在、従業員自身が作業中に気づいた改善のポイントをもとに、定期的な勉強会で1回数秒単位の効率化を積み重ねていく「ムダ取り活動」が定着。トップダウンによる作業簡素化の指示と両輪で残業時間の削減を進め、出荷業務の生産性を2倍に改善できた例もあるという。

加えて達城氏は、生産性と業務品質の向上を図る目的で独自開発された自社システムを紹介。在庫管理システムの「クラウドトーマス」や、作業指示の可視化でミス削減と属人化解消を図るチェックリストシステム「アニー」は社外への販売も行うなど、本業で培った知見そのものが評価を得ていることをアピールした。

このように、業務改善の分野で確固たる実績を持つ同社がRPAの導入検討を開始したのは2017年。テレビ番組で採り上げられていたのをきっかけに興味を抱き、数社の製品を比較検討したという達城氏は「このときは最終的に、操作性と価格面を重視してデスクトップ型のRPAツールを選んだ」と説明。2018年3月に導入後、活用のポイントをつかんでからは社員3人体制で実装を進め、導入半年のうちに月750〜800時間の効率化を達成できるまでになったと振り返った。

デスクトップ型ツールの活用経験を踏まえ、サーバー型の「BizRobo!」に転換

関通におけるRPAプロジェクトの詳細については、チームの責任者である同社経営企画部の井上裕喜氏が解説。当初導入したデスクトップ型ツールでは、受注処理を手始めに帳票発行や顧客に対する作業完了報告メール送信などの自動化を進めてきたと説明した。

同社ではRPAの導入後およそ半年間、期待したほどの時間削減成果が得られなかったという。もっとも、ツール操作への習熟が進み、効果的な活用方法が判明した2018年9月を境にペースが一転。それまでの数倍にのぼる時短効果を毎月達成できるようになった。

劇的な変化でRPA活用を軌道に乗せられた要因について井上氏は、作業を肩代わりする個々のロボットを作成する際にターゲットとした業務のほか、それに類似する他業務への「横展開が一気に進んだこと」と分析。ロボット化の取り組みを、目前の作業を改善したい個別部署の範囲だけに留めず、全社横断的な視点から共通する効率化のポイントを探っていく重要性を強調した。

RPAが社内に浸透していくにつれ、同社では新たな問題も表面化した。ロボットの稼働数が増加した2019年1月には、当初導入したデスクトップ型ツールでは対応していない「複数ロボットの同時稼働」が必要となる場面が発生。さらに同じく機能的な制約から、ロボットの稼働中は他のロボットの開発・修正をできないことも、プロジェクトの進行を妨げるようになってきたという。

さらに同ツールが、ロボットに対する“命令方法”として「画面上の座標でクリック位置を指定する」方式を用いることの影響も現れてきた。具体的には、ロボットの開発から時間が経過し、画面解像度が異なる他部署での横展開や、接続先ウェブサイトの改修が重なるにつれ「当初の指定位置で実行できない」エラーが多発するようになったという。

このままでは活用拡大に限界があると判断した同社は、既存ロボットの運用をアウトソースした上で、新たなRPAツールへの切り替えを数ヶ月間かけて検討。上記の問題点を全てクリアできることから、デスクトップ型ツールより本格的なサーバー型RPAツールである「BizRobo!」への移行を決定した。

既にRPAに習熟し、費用以上の効果が得られるようになった同社は、ツールの再選定にあたり「機能本位」の評価軸を採っている。実績を重ねたことで、評価の観点が「直感的な使いやすさ」「初期コスト」を重視していた当初から変わったのは見逃せないポイントだ。

ロボット活用のポイントは「横展開」「業務の見直し」「ミス削減への応用」

井上氏はまた、BizRobo!で同社が実装したロボットの実例も紹介。このうち、チェックリストアプリであるアニーとの連携では、各従業員が上司から指示された作業内容を閲覧しているかの確認を、総務担当者による手作業からロボットに移行させた。ロボット3体を組み合わせた自動実行で、従業員の時間的な余力を創出しただけでなく「仕事の抜け・漏れを早期発見できるようになった」(同氏)という。

月次報告の呼びかけをはじめとする社内メールの送信業務や、運送会社のWebシステムと連携した売上の自動集計など、ロボットの活用範囲は広範にわたる。中でも定量的な効果が大きかったのは、やはり汎用的な作業に応用して横展開を図ったロボットだという。

横展開の成功例として井上氏は「月100時間のリソース創出をもたらした帳票発行業務ロボット」、そして「月400時間を創出した顧客向け報告業務を代替するロボット」を挙げた。

こうした成果を踏まえ、同氏はRPA活用のポイントを3点に集約。「横展開のポイントを見つけること」以外では「導入前に業務を見直して『やらなくてもよいこと』『より簡単に、同じ成果を上げられる方法』を考えること」、そして「ミスの影響が大きい、正確な数値を取り扱う作業をロボット化して作業精度を向上させること」が重要だと説いた。

セッションの結びにあたり、井上氏は「請求業務、会計データ処理などの完全自動化」「物流の実作業に伴う事務作業への応用による月2,000時間相当の効率化」など、自社が掲げる今後のRPA活用目標を発表。そのために各部門長などを対象にした導入検討会を開くほか、ノウハウ共有や教育の体制構築を進めていくとした上で「RPA活用を通じ、本来人がやらなければならないサービスに特化していきたい」と抱負を述べた。

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