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「今すぐ使える」HRテックの最新動向──RPAHD・Donuts・セレブレイン・Holmes共催セミナーレポート

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人事の世界にテクノロジーを活用する「HRテック」はいま、世界共通のトレンドとなっています。では、テクノロジーでの解決が求められる人事の課題とは、具体的にどのようなものでしょうか。

採用に関与する部長以上の会社員・経営者300人を対象にしたアンケート調査(株式会社サーキュレーション、2019年6月)によると、解決すべき課題に挙げられたトップ3は、順に「業務改善・業務改革の推進」「優秀人材の活用」「人材育成・人材開発」となっています。

「生産年齢人口が急減し、人事労務管理や採用業務の業務負担も増す中、テクノロジーを活用した業務効率化で余力を生み出し、優秀人材獲得に向けた企画や応募者とのコミュニケーション、メンバーの能力開発といった最重要の業務に時間を割きたい」─。調査結果からは、人事担当者のそうした思いが伝わってくるようです。

東京都内で2019年11月29日に開かれたセミナー『採用業務をロボットでラクラクに!最新事例とデモ紹介』(RPAホールディングス株式会社(オープンアソシエイツ株式会社)、株式会社Donuts、株式会社セレブレインの共催)では、採用人事担当者のニーズに応えるマクロな視点でのHRテックの最新動向、ミクロな視点での採用業務効率化の事例、そして採用業務を自動化するデモ紹介の3つの講演が行われました。

本記事では、この日行われた3セッションの概要をご紹介します。

■記事内目次

  • 1. 2019年HRテック最先端「Employee Experience」の追求──セレブレイン・関氏が語る米国事情
  • 2. 9カ月で30人採用。SaaSで急成長のHolmes増井氏が明かすRecruiting Automation実践事例
  • 3. 1クリック型RPAサービス「RoboRobo」──誰でも、カンタンに、ラクラクに

2019年HRテック最先端「Employee Experience」の追求──セレブレイン・関氏が語る米国事情


株式会社セレブレイン パートナー 関 伸恭氏

人事戦略コンサルティングやヘッドハンティングなどの事業を展開する株式会社セレブレインからは、HR Tech事業を担当するパートナーの関伸恭氏が登壇。2019年10月に米国ラスベガスで開かれたイベント「HR Technology Conference & Exposition」の視察結果を報告しました。

1997年から開かれている同イベントは世界を代表するHR関連展示会で、今回はSAPやindeedといったリーディングカンパニーを含む450以上の企業が出展しました。

「1on1」「OKR」など、人事に関わる多くのキーワードは米国発祥です。それを踏まえ、関氏は膨大な展示内容の中から、日本ではまだ一般的といえないものの数年以内に広がりそうな動きを中心にピックアップしました。

昨年も同イベントを訪れた関氏によると「AIの応用を競った前回と打って変わり、今年のキーワードは『Employee Experience(従業員体験)』」とのこと。

長期にわたって高いパフォーマンスを発揮できる職場環境づくりというEmployee Experienceのコンセプトに照準を合わせたプロダクトが相次ぐのは「優秀な人材を引きつけて放さない(Attraction and Retention)という人事の本質的役割へのサポートが、いよいよツールとして体現してきた」(同)ためだといいます。

Employee Experienceにフォーカスしたツールの多くは「企業中心」の人事システムを、より「従業員本位」なものとして機能させることを目指していますが、それと同時に、導入のハードルを下げるための工夫もされているようです。

一例として関氏が挙げたのは、人事関連の情報や手続きを一元化したアプリ「Leena AI」。同アプリは、休暇申請フォームの入手や給与明細の確認、1on1ミーティングの日程調整などの日常的に発生する人事関連業務のリクエストに、すべて対話形式で応じる「使い勝手のよさ」が特長とのこと。

統合されたユーザーインターフェースの背後では既存のさまざまなシステムと連携しており、専用のデータベースを独自に構築する必要はないといいます。

Employee Experienceの隆盛は、アイデア勝負の新興企業でも顕著なようです。関氏は、同イベントでスタートアップ30社がプレゼンを競った「Pitchfest」の模様を解説。Employee Experience重視を体現したプロダクトとして、マネージャーがメンバーに働きかけるタイミング・アプローチを提案する日本発のサービス「KAKEAI」や、高額なコーチングを手ごろなモバイルアプリに落とし込むアイデアで優勝した「Pilot」を挙げました。

近い将来、Employee Experienceのコンセプトは日本においても広がりを見せると予測した関氏は、以下の3点で、人事担当者に「発想の転換」が求められると分析しました。

  1. 従業員の「コントロール」よりも、個別事情に合わせた「パーソナライズ」を重視
  2. AIの活用を従業員管理に用いる「予測」から、職務との「マッチング」に用途を変える
  3. ビジネスを取り巻く環境がスピーディに変化する中、複雑なプロセスを定義することから、アジリティを重視した仕組みに変革

従業員に期待する職務上の役割が不明確では、そもそもマッチングができないことなどに注意を促した上で、関氏は「発展するテクノロジーを使いこなすためにも、まずテクノロジー以前の施策に力を入れ、人事と従業員の関係性を見直していくことが大切」と述べ、セッションを締めくくりました。

9カ月で30人採用。SaaSで急成長のHolmes増井氏が明かすRecruiting Automation実践事例

関氏のセッションにも登場したAttraction and Retentionの「Attraction」。つまり優秀なメンバーの獲得に注力する立場から “今すぐ使える” HRテックのモデルケースを報告したのは、急成長中のスタートアップである株式会社Holmesで採用責任者を務める増井隆文氏です。

増井氏は、自社で採用戦略を支えるATS(Applicant Tracking System)「ジョブカン採用管理」と、その運用を効率化する求職者情報自動転記ロボット「RoboRoboリクルーティング」の活用状況について詳細を明らかにしました。

「世の中から紛争裁判をなくす」とのミッションを掲げて2017年3月に設立された株式会社Holmesは、企業の契約に関わる業務全般を最適化する契約マネジメントシステム「ホームズクラウド」を提供する企業です。「ホームズクラウド」は、契約書の作成・承認・締結・管理に加え、契約の進捗管理やナレッジ共有も含め、契約業務を一元管理できるサービスであることが特徴です。Holmesは増井氏が現職に就いた2019年2月からの9カ月で、従業員数が20人から50人に急増しました。

1人で採用業務のほぼ全てを担当、しかも厳しい採用基準を設定しながら、増井氏は「9カ月で倍以上」の増員を達成しています。この圧倒的な成果の背景には「求める人物像の明確化」と「採用チャネルの絞り込み」があったといいます。

「会社の志やカルチャーへの共感が、スキルや経験と同等以上に大切。特に採用担当者自身が『社内の誰よりも会社を愛している自負』がないと採用はうまくいかない」、そう断言する増井氏は「4C(コミュニケーション・コラボレーション・カルチャーフィット・チャーミング)」で候補者の資質を判断していると明かしました。

同社の採用チャネルでは「エージェント」「ダイレクトリクルーティング」「リファラル」が検討対象になり「工数や予算を抑えつつ、転職意欲がある十分な母数を確保する方法を考えた結果、あえてダイレクトリクルーティングへの特化を決めた(増井氏)」そうです。

目的と手段が明確化された採用戦略を実現するには、言うまでもなく「決めたことをやりきる実行力」です。ただ、増井氏の場合はさらに「最新ツールの徹底的な活用」が重要な役割を果たしたといいます。

媒体を経由するスカウトメールやエントリー、さらに同時進行する多数の選考ステップを可視化・集中管理するため導入を決めたATSでは、既に社内でワークフローや経費精算のサービスを活用中だった「ジョブカン」を選びました。

場面別にあらかじめ用意したメールの自動送信なども可能なATS「ジョブカン採用管理」の活用で、同社の採用業務は大幅な効率化を実現しました。ただ一方、求人媒体それぞれの管理画面に集まった情報をATS側へ反映するには手作業での転記が必要で、「毎日1〜2時間」を要していたといいます。

しかしその後、この作業を自動化するオプション機能としてリリースされた1クリック型RPAサービス「RoboRoboリクルーティング」を追加したところ、増井氏が関わる時間は1日15分程度と、従来のおよそ「8分の1」にまで激減。

ここで創出された余力を「候補者の見極め」や「自社サイトでの採用広報」といった、より本質的なタスクに振り向けた結果、スカウト送付は目標の139%、応募者数は同128%に達し、計画通りの内定承諾者を無事獲得できたといいます。

増井氏は、今回の成功を踏まえ、「企業規模の拡大にともない、採用におけるメッセージの伝え方も変わっていく」と予測。より候補者の興味にマッチしたアプローチに向けて、採用活動にマーケティングオートメーションツールを採り入れる準備も進めていると説明しました。

受発信する情報の流れがさらに増し、かつ変化の度を増していくと見込まれる中で、増井氏は「自動化された採用業務フローに素早くATSを適合させていくため、これからどうRPAを使っていくかが重要になる」と述べ、セッションを終えました。

1クリック型RPAサービス「RoboRobo」──誰でも、カンタンに、ラクラクに

国内5,000社の導入実績でシェアNo.1を誇るジョブカン採用管理、そして採用情報一元化のプロセスを担うRoboRoboリクルーティングのユーザー報告に続き、両ツールの詳細についてはジョブカン採用管理担当の加藤卓大氏(株式会社Donuts ソリューション事業部 シニアコンサルタント)ほかベンダーの担当者が補足説明し、操作の実演も行いました。


株式会社Donuts ソリューション事業部 シニアコンサルタント 加藤卓大 氏

国内の主要な採用媒体と連携できるジョブカン採用管理は、このうち6媒体について自動連携機能を標準装備しています。

RoboRoboリクルーティングは、この6媒体以外との自動連携を実現する追加機能に位置づけられています。具体的には入力データの自動連携のほか、採用媒体からATSへのPDFファイル(履歴書、職務経歴書など)の転送、さらに自社の求人に関する最新情報をATSに集約した上で各求人媒体へ自動反映する機能なども備えます。

「一般的なATSが機能ではカバーしきれず、どうしても手作業が残ってしまう領域の自動化を実現できる」(オープンアソシエイツ株式会社 RaaS事業部 テクニカルディレクター 田中聡氏)のが、RoboRoboの特長とのことです。

田中氏は、同社が今後も加速度的にRoboRoboのラインアップを増やしていくと説明。サービスを通じて「採用担当者がコア業務に集中できる環境づくり」にコミットしていくと宣言しました。


オープンアソシエイツ株式会社 RaaS事業部 テクニカルディレクター 田中 聡 氏

本セミナーを企画し、国内RPA市場を早くから開拓してきたRPAホールディングス株式会社で執行役員を務める武藤駿輔氏(オープンアソシエイツ株式会社RaaS事業部 事業統括)はプログラムの結びにあたり、テクノロジー活用の「理想と現実」について次のように述べました。


オープンアソシエイツ株式会社RaaS事業部 事業統括 武藤 駿輔 氏

「即効性の高い生産性向上策として期待されるRPAも、実際にはツール操作への習熟や運用体制の構築がハードルとなり、特に中堅・中小企業、スタートアップに定着できていない実態がある。そこで『RPA』ではなく、皆さまが必要としている『労働の代替』そのものをご提供したい」(武藤氏)

セッションで紹介されたRoboRoboは、汎用型のツールだったRPAをピンポイントの自動化サービスに“仕立て直す”ことで、導入の手軽さ、簡単さを徹底追求したものだといいます。

「人事、経理、法務などの分野で今後もRoboRoboの対応業務を広げていく予定で、ぜひ機能のリクエストを寄せてほしい」との武藤氏の呼びかけを受け、満席となった会場の参加者は「今すぐ自動化したい自社の作業」のリクエストを手元のアンケート用紙に書き込んでいました。

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