「Future of Work」は2020年の一大潮流となるか
働き方改革の次の考え方とされる「Future of Work」。言葉の定義や意味はまだはっきりとしていない部分もあるが、単なる働き方改革の延長線にあるものではなさそうだ。IDC Japanは、2020年の重要なキーワードとなると予測している。
従業員の満足度や労働生産性を向上させる手段として政府が打ち出した「働き方改革」が聞かれるようになって久しいが、最近取材に行くと「Future of Work」といったワードをときどき耳にするようになった。
IDC Japanは2019年12月に「2020年 国内IT市場 10大予測」と題して2020年の国内IT市場において注目すべき主要10項目を発表し、キーマンズネットでもその内容を取り上げた(参考記事)。そこでも「Future of Workの重要性が増大する」とあり、2020年の一大トピックの一つとなるだろうと考えられている。
Furure of Workとは? 働き方改革との決定的な違い
Future of Workとは「働くということを根本的に変えるコンセプトであり、働き方、スキル、さらには企業文化をも変革し、時間や物理的な場所に高速されないダイナミックな労働環境を支援し、従業員に権限を与え、人とマシンの協働を促進すること」だとIDC Japanは定義する。
IDC Japanの寄藤幸治氏(リサーチバイスプレジデント)は、「Future Workとは単なる働き方改革ではない。デジタルトランスフォーメーション(DX)によってワークカルチャーやワークスペース、ワークフォース(労働力)を大きく変え、企業が持続可能な競争優位性を獲得するための考え方だ」と解説した。ここでの「労働力」は、人間だけでなくRPA(Robotic Process Automation)やAI(人工知能)も含まれる。働き方改革との違いは、この取り組みが「持続可能な競争優位性」を目指す点にあるだろう。生産性の向上や従業員の満足度を重視する働き方改革と根本的に違うのは、既存の労働環境の改善を目的とするのではなく競争優位性を目指してより根本的な労働環境の変革を目指す点だ。
企業が競争優位性を獲得するには、優秀な人材の獲得と人材開発、場所と時間にとらわれない労働環境、ルーティーンワークの自動化の強化が必要だという。そのためにはこの3つの構成要素が必要不可欠であり、それぞれの領域でITの活用が必須だとIDC Japanは考えている。
こうしたFuture of Workに関する取り組みは、ITベンダーや国内のユーザー企業にも広まりつつあるようだ。2019年11月29日にシトリックスが「Citrix Future of Work Tour 2019」を開催し、渋谷区役所や日産自動車、角川書店での取り組み事例を発表した。渋谷区役所の事例については、キーマンズネットでもイベントレポートとして公開しているので、参考にしてほしい。
Future of Workの取り組みはまだ黎明(れいめい)期ではあるが、IDC Japanの予測通り、2020年の一大潮流となるのだろうか。今後を追っていきたい。
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