2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とともに、デジタライゼーションを加速する手段として注目されるクラウドサービス。だが、既存のシステムと共存していることが多く、大半の業務システムがクラウド化されていない日本企業においては、両者の相性は必ずしもよくないようだ。
その悩みは、WinActorを開発したNTTグループにおいて、特にクラウドやネットワークに精通するNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTTコミュニケーションズ)でも同じだったという。それを解決するとともに顧客にも提供するため、クラウドサービスの雄であるSalesforceとWinActorをセットにしたサービス、WinActor® for Salesforce over VPNの提供を開始した。その背景と得られた知見から、クラウドとRPAの組み合わせには、どのような課題があり、どう解決できるのかを探る。
■記事内目次
- NTTコムが見出した、SaaSユーザーの課題
- クラウドサービスでのRPA活用の壁
- WinActor単体では手が届かない「かゆいところ」も解消
- Salesforceのライセンスもセットだから、『安価』に『直ぐ』始められる
NTTコムが見出した、SaaSユーザーの課題
−まずは、NTTコミュニケーションズの取り組み・サービスについて教えてください。
通信サービスのうち、IP-VPN(IP Virtual Private Network)では国内シェアNo.1の会社です。(出典:総務省 電気通信事業分野における市場検証(平成 30 年度) 年次レポート)
私たちのチームでは、SalesforceやオンラインストレージのBoxといったSaaS(Software as a Service)とユーザー企業を上記ネットワークサービスを活用してつなぐサービスを提供しており、2008年に開始した「Salesforce over VPN」は、10年以上の歴史があります。
IP-VPNを活用することで、通常のインターネット回線で通信を行う際のリスクとなる、?ウイルス感染、?データ盗聴、?異常トラフィック/レスポンス遅延を回避し、高セキュリティ、通信品質の安定を実現することができます。
−SaaSとVPNは非常に相性がいいソリューションなのですね。ユーザー各社におけるクラウド化の現状や抱えている課題について教えていただけますか。
小林氏: 2019年末時点ですと、企業の大小を問わずクラウドによるデジタライゼーションが進んでいます。ただ、すべてがクラウド上で有機的につながった状態には至っていない企業が大半です。新しい業務だけをクラウドで構築、あるいは技術的な制約などによって既存システムの一部だけをクラウド上に移し替えているケースが日本では多くみられます。
全体的な効率化やデジタライゼーションのためには、こうしたシステム間をつなぐことが重要です。ところが、日本でまだ広く利用されているレガシーな既存システムには、システムが互いにやりとりできる手段であるAPI(Application Programming Interface)を持たないものが多く、クラウドとの接続には課題があります。
デジタライゼーションの世界を進んだものにするためには、クラウド化だけでなく、シームレスなデータの行き来が課題になるのです。
クラウドサービスでのRPA活用の壁
−社内での業務課題をきっかけに、WinActorを使って自動化を図られたのでしょうか。
小林氏: その通りです。ただ、SalesforceをはじめとするクラウドサービスでのRPAの活用には課題がありました。クラウドサービスはある日、ユーザーが予期しないタイミングでアップデートが行われてUIが変更されることもあり、それにRPAロボットを対応させる必要があるのです。また、Salesforceにおいては個人単位でUIを変更することもできるので、システム部門が開発してユーザーに配布しても思うように動かない可能性があります。さらに、スケジュールの期日が近づけばポップアップでメッセージが表示されるなど、意図した通りにRPAロボットで操作できない要因を含んでいます。
−RPAの開発だけではSalesforceを利用する業務を自動化し、安定運用に乗せるのは難しいということですね。
川崎氏(アプリケーションサービス部門 第二グループ 第三チーム 主査): そのように感じています。そこで考えたのが、RPAでクラウドの画面を直接操作するのではなく、APIを経由して、安定的に動作させる方法でした。
小林氏: 技術的には、独自開発したWinActorのライブラリから定期的にSalesforceの管理用オブジェクトのステータスをチェックし、変化があった場合にAPIをキックします。するとWinActorのロボットが起動・業務フローを実行するという仕組みです。
WinActorとSalesforceが連携することによって、デジタル化が可能な領域業務は格段に広がります。WinActorの処理や判断をトリガーにすれば、Salesforceをハブに他のクラウドサービスとAPIで接続が可能です。Salesforceは充実したエコシステムによって多くのサービスと簡単に連携できることもあり、低いハードルでデジタライゼーションを推し進めることができるのです。
WinActor単体では手が届かない「かゆいところ」も解消
−WinActor×Salesforceで実現することができる機能とは、どのようなでしょうか。
佐竹氏: 社内ネットワークとVPN接続したデスクトップPC内のWinActorであってもリモート起動できることが挙げられます。Salesforceのステータスを見て動作する仕組みなので、Salesforceを操作できる場所であれば自宅からでもWinActorを操作することが可能ですので、作業場所を問わず動かすことができます。
そのうえで、WinActorのユーザーが強く望んでいる4つの機能も提供することができます。
1.ID/パスワード管理機能
佐竹氏: 1つめは「ID/パスワード管理機能」です。通常、人間が読める暗号化されていない文字列「平文」でロボットの中に直接書くことになるため、もしノートPCを紛失してデータを抜き取られたとしたら、その情報を使って社内システムにアクセスされて情報漏えいするリスクが懸念されます。
小林氏: SalesforceにIDとパスワードを保存しておき、WinActorが起動する時だけ読み込むようにできるため、直接記述によるリスクから守ることができます。その際の通信はセキュアなVPNサービスで接続しているのも特徴です。
2.ログ監視機能
佐竹氏: 2つめは「ログ監視機能」です。Salesforceのステータス変化でロボットが起動するため、Salesforceのログがロボットの稼働ログだと見なすことができます。
川崎氏: Salesforceのログはユーザーには編集することができないため、監査にも対応します。
また、NTTコミュニケーションズ内ではデジタライゼーションを可視化する取り組みにも活用しています。ログはSalesforceのレポート機能を使えば簡単にわかりやすく可視化できるため、使っている人を表彰、使っていない人はサポートするといった施策につながります。
3.電子メール送受信機能
小林氏: 3つめは「電子メール送受信機能」です。Salesforceがメールを送受信できるので、いろいろな使い方が考えられます。
WinActor単体だと、作業状況をPCで直接確認する必要があったのですが、この機能を活用すると、既存のメール環境を変更することなく、作業完了後にメールを受信することができます。 例えば、RPA作業完了後、メール通知により、そのまま人での作業部分へスムーズにつなげていくことなど、より業務プロセスに組み込んだ使い方も可能となります。
4.ロボット管理機能
佐竹氏: そして4つめとしては、「ロボット管理機能」があります。Salesforceの電子メール機能で自動的に稼働状況やアラートを通知することができるので、ロボット管理の手間は大きく削減できます。
−なるほど。RPAユーザーの視点で非常に重要な点が解決されるのですね。
川崎氏: その通りです。「RPAを入れても担当者の開発・管理工数がかかってスケールしない」、「ライセンスの有効活用ができていない」、「入れようと思っても詳しい人がいなくて検討が停滞している」、そんなよく耳にする問題について考慮したサービスにしました。
先ほど述べた4つの機能によって、デスクトップ型ならではの『手ごろな価格』『開発の容易さ』とSalesforceが備える『セキュリティ/ガバナンス』を両立することができました。
Salesforceのライセンスもセットで、『安価』に『直ぐ』始められる――将来を見据えたデジタライゼーション
−サーバー型RPAを購入するよりも、かなり敷居を低くしているという印象を受けました。しかしSalesforceのライセンスや技術までは賄えない企業もあるのではないでしょうか。
小林氏: その点も考慮し、クラウド基盤環境である「Salesforce Platform」のライセンスを無料でセットし、基本的な導入サービスも含む形態で提供しています。最初に申し上げたように、私たちはSalesforceの開発について10年以上の経験がありますから、さらに高度な利用の要望にも応えることができます。
佐竹氏: クラウドやAIなど、いろいろな商材を持っているので、様々な業務環境の変化に対応でき、先を見据えた支援をすることができるのが強みです。WinActorとの組み合わせは、その幅を広げるのに大きな役割を果たしています。
−最後にRPA導入で悩んでいる方へ、これまでの経験からアドバイスやメッセージをお願いします。
川崎氏: WinActorは自社で運用できるツールであり、それが理想だと考えています。ですから、自走できる体制を構築するまでの手厚い研修や、遠隔サポートが重要だと考えています。ですから、こうしたサポートサービスを年額ではなく、気軽にスポットで利用できるメニューとして用意しています。
小林氏: RPAの目的は、ツールの導入ではなく効率化やデジタライゼーションです。RPAはツールでしかありません。デジタライゼーションや本当の意味での効率化を実現させるところまでを見据えて、AIやクラウドの知見があるパートナーを選んでほしいと思います。
お客様がサービスに満足して末永く使い続けてもらい、顧客のビジネスの成功に貢献していくこと。これは通信サービスなどを継続利用する顧客に支えられてきた、NTTコミュニケーションズの根底にあるマインドです。RPAの導入にとどまらない、長期的なデジタライゼーションを実現するパートナーとしてお客様と向き合っていきたいと考えています。
−ありがとうございました。
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