2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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2004年11月に創業し、外部企業へのエンジニア派遣や開発受託などを請け負う株式会社ビーネックステクノロジーズ。デジタル領域がビジネスのあらゆる分野に進出する中、優秀なエンジニアはどの業界でも欠かすことのできない存在となっている。同社は派遣社員のキャリア形成支援やよりよい労働環境の確保、派遣先とのトラブル予防などを十全に行い、公的機関から「優良派遣事業者」に認定(注1)。2013年には東証一部への上場を果たしている(注2)。
(注1)事業承継元の旧トラスト・テック時
(注2)2020年1月にグループが持株会社体制化
本社に約270名の内勤社員を抱えるビーネックステクノロジーズだが、不透明な人事制度や社内のコミュニケーション環境、勤怠管理、マネジメント面などの多くの課題を抱えていた。そこで、同社は代表取締役社長の西田氏の提案により、経営企画部、EV推進室(Engineer Value:エンジニア価値の最大化を目的として、エンジニアの適正価値の算出と、価値向上を実現するための制度・仕組み、先端技術を含む各種システムの導入・活用を推進する部署)、人事部からなる「全社戦略部門」を組織化。人事部主導で2017年度より、本格的な働き方改革に乗り出した。
人事部主導の制度改革では、企画・立案から実施、そして運用と大きなリソースを割く必要があるという課題がある。しかし同社は、特に作業量の多い運用フェーズに対して、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用することで課題をクリアし、遅れを取っている状態ともいえた人事制度や働く環境を大きく立て直すことに成功した。今回は、人事部長の松本氏に、RPA導入が働き方改革に与えた影響と、今後の展望について聞いた。
■記事内目次
- 1.人事制度の遅れを取り戻すために、RPAをフル活用
- 2.RPA活用による働き方改革で、残業時間を平均15時間に削減
- 3.2021年に「所定就業時間8時間→7.5時間で今以上の給与」を実現へ
人事制度の遅れを取り戻すために、RPAをフル活用
――社内で働き方改革を始めた経緯や、RPAを導入した目的などをお聞かせください。
松本光由氏(人事部長): 当社の働き方改革は、2017年度に始動しました。まず取り掛かったのは、人事制度というハード面の改革です。当社は、かつて40時間の固定残業を設定していました。これは1日に直すと約2時間、つまり9時〜20時までの勤務体制が当たり前の状態だったのです。この制度は働き方改革に逆行するものでした。私たちの働き方改革は、いわば“人事制度の遅れを取り戻す”ところからスタートしたのです。
早速、等級・グレード制度などを見直し、半期の業績を賞与に反映させる制度を導入。合わせて、これまで固定残業代に当てていた手当を基本給に組み込みました。それにより、社内に残業ありきではなく、就業時間内で業務を完結しようという新しい働き方を提示したのです。加えて、思い切ってコアタイムなしのフレックス制度を採用しました。営業職にとって、情報共有の面でデメリットがあることは百も承知でしたが、ITツールの活用で同じ時間・同じ場所で仕事をしなくても情報を共有できると考えたためです。
一方で、ソフト面(働く価値観や考え方)の改革がより重要です。当社の代表取締役社長の西田は、この取り組みを大いに支援してくれました。本人も社内で「ニコニコ No.1プロジェクト(通称、ニコわん)」という、働き方改革の推進プロジェクトを掲げたのです。「ニコわん」では、月2、3回、社長・役員と社員3~5名が本社に集まり、さまざまなテーマで話をします。それを、全内勤社員約270名に実施しました。その中で、社員に対しトップの考えを直接伝えるとともに、生産性やITツールなどのキーワードを伝え、社内で真剣に取り組んでいることを伝えてくれました。トップの意思と人事の施策が合致していたのは、非常に大きかったと思います。
一般的な人事部の施策の場合、企画から運用までに膨大な時間が掛かってしまいます。しかし当社は、その運用を全てEV推進室のメンバーがブレインロボ(BizRobo!)を活用し、RPAでサポートしてくれています。人事評価制度における評価のフィードバックも全てRPAを活用し、上司と1対1の状態で話さなくてもいい、デジタルフィードバックの環境を構築しました。
また、社員にモチベーション高く仕事に従事してほしいと思い、2017年度から社内公募も実施しています。募集プロセスや選考プロセスも全てデジタル化。人事部は、アイディアマンである社長の立案を企画・実装まで行い、運用はRPAによる自動化へ移行させました。これにより、企画を滞らせることなく次々と実施へつなげることができたのです。現在では、実行から改善までのPDCAサイクルをスムーズに回せています。2016年度まではマイナス要素の方が多かった状態でしたが、RPAをはじめとするデジタルツールの活用により、この2年で働き方改革の運用が大きく前進したと思います。
――マイナス要素の方が多かったということですが、具体的にはどんな側面があったのでしょうか。
松本氏: これまでの社内のカルチャーとして、年俸制で評価の仕組みが不透明であり、単発の業績で処遇が大きく変動することやマネジメントスタイルもオフィスごとにバラつきがあり、上位職の様子をうかがうというとても受け身な社風でした。半期の業績が反映されないため、働くことへのモチベーションも低くなってしまいます。さらに固定残業制の影響で、生産性や勤労時間に意識が向かないという課題も抱えていました。人事の視点でも、当時はあまり活気が見られませんでしたし、実際、退職者も多い状況でした。
そこで私たちは「所定就業時間を7時間半にしよう」という目標を掲げたのです。施策としては、まず固定残業制度を40時間から20時間にし、最終的に固定残業制度を廃止して給与に含みました。思い切ってコアタイムなしフレックスも導入。その結果、2018年度の残業時間は平均15時間まで減少し、今年度も同様の数字で推移しています。「これを10時間にできたあかつきには、所定就業時間を7時間45分に変更させてほしい」と上層部にはコミットしています。
RPA活用による働き方改革で、残業時間を平均15時間に削減
――RPAの導入と働き方改革の推進で、どのような効果が得られましたのでしょうか。
松本氏: RPAの導入で、社員それぞれの勤怠状況をタイムリーに把握できるようになりました。残業時間が40時間を超過しそうな社員はフレックスで勤務時間の調整を促したり、欠勤の多い社員には健康状態を確認するための面談をしたりするなど、それぞれの問題が発生してから対処するのではなく、早期かつ事前に対応できるようになったのです。事前に収集したデータから、問題を抱えている可能性がある社員に対しては、各部長陣に情報をシェアできるようにもなりました。ただ理想を語るのではなく、デジタルによって問題を浮き彫りにし、我々(ヒト)が中心となり問題解決し、一生懸命頑張る社員に精一杯応えたい。その思いが届いてきたのか、現場の部長陣からも積極的に情報が集まっています。現状理解が進むことで、より効果的な施策を打てるようになりました。
その施策の一例として、月1回のe-NPS(Employee Net Promoter Score:職場に対する愛着度・信頼度の数値化指標)を実施。3カ月に1回は、付録的なアンケートを実施しています。具体的には、上司とのコミュニケーション度合い、挑戦したい部署、自己啓発の状況、設定した目標の難易度合いや達成度合いなどを調査するアンケートを行いました。当社には約110人の営業職がおり、約7割は新卒もしくは第二新卒と若い世代が中心です。また、営業オフィスは管理職を中心に少人数で閉鎖的です。普段ストレスのたまりやすい環境下にある彼ら彼女らにとって、こうしたアンケートは、 一種のガス抜きにもなっています。最初は社員も恐る恐るという感じでしたが、最近は生の声が収集されます。生の声を上げることでアクションを起こしてくれるということが伝わったのかなと思っています。アクションを起こした結果として「この会社のカルチャーが合わない」「私は営業向いてない」などを一人で悩んだ末に退職するという社員は大きく減少しました。
――今後、生産性向上のためにどのような領域へチャレンジしていきたいですか?
松本氏: 当社では現在、社内公募で特定部署への募集を行っています。しかし、社員の「私は将来この部署をやりたい」という情報を事前に集められていれば、よりスピーディに人員の移動が可能になるはずです。それにより、社内のリソースを活用しやすくなるのではと考えています。今後は、そうした先を見据えた情報の収集とリソースの最大活用を心掛けていきたいですね。
2021年に「所定就業時間8時間→7.5時間で今以上の給与」を実現へ
――働き方改革のミッションは、社内でどのような位置付けにあるのでしょうか。
松本氏: 現在、経営企画部、EV推進室、人事部が3本柱となり、全社戦略部門として機能しています。つまりEV推進室の進めるデジタル化は、重要な経営戦略の一つと定められているのです。本来EV推進室は社内に点在する情報を、一元化して活用しようという意図で始まりました。それが、現在はあらゆる業務にRPAを導入する推進力となっています。
――数多くの成果が出ている中で、今後の課題や展望などをお聞かせください。
松本氏:: コアタイムなしフレックス制度については、9割の社員が「続けてほしい」と答えており、将来的にはリモートワークも視野に入れています。一方、当社ではe-NPSを導入していますが、会社に対するスコアが劇的に改善したというわけではありません。目の前の仕事を楽しめていない要因の一つに、マネージャー層の存在があります。当社には若いマネージャーが多く、経験が浅く余裕がないためにイライラが部下へ向かいがちです。給料はいい、有給も取りやすい、でも上司が厳しい。この環境を変え、社員一人ひとりの満足度を高めていくことが大きな課題の一つです。そのためにも中間管理職層への働きかけを重点的に行っていきます。
また、社員一人ひとりに「生産性は何か」という本質的な理解を進められていません。私自身、生産性の向上とは“自分でできることが増える”ことに直結すると考えています。ここでいう“できること”とは“付加価値を生む仕事”です。Aという役割に対して、それを超えたBという職域にチャレンジしてみるという環境を構築したい。それを実現するのがRPAなどのデジタルツールよる“定型的・作業的業務の極小化”だと考えています。チャレンジして失敗しても、恐れずに次へ挑もうというカルチャーを醸成していきたいですね。
その上で、こうした働き方を浸透させて、2021年には就業時間7.5時間で、今以上の給与体系を実現したいと思っています。その実現には一人ひとりの仕事の質を高めないといけません。そこで私たちは、人事制度を作った際に「事務職」という職群を廃止し、社員全員が「総合職」であると定義しました。社員一人ひとりが業務を通じて付加価値を生み出す。そのために定型的・作業的な業務は極力排除しようと考えました。それにより、同じ社員数でもアウトプットの質を高め、生産性を高める。その恩恵を社員に賃金や賞与などの形で還元するのです。最終的には人材業界でトップの処遇を実現し「ここで働きたい」と思ってもらえる会社づくりを目指していきたいですね。
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