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AIは40年前に発売したレトロゲーム「パックマン」を見るだけで再現できるって本当?:564th Lap

ゲームのプレイ画面を見ただけで自動で再現するAIがあるという。誕生から40周年を迎えたパックマンでの研究結果を紹介する。

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 2020年に誕生から40周年を迎えるレトロゲーム「パックマン」。日本のみならず世界中でプレイされ「業務用ゲーム機として最も成功した」としてギネスにも認定されているゲームだ。ゲームの内容を理解している人ならばその操作は簡単だ。1980年の発売から40年が経過した今日では、AI(人工知能)がパックマンのプレイ画面を“見るだけ”で再現できるという。一体、どういうことなのだろうか――。

 GPUの開発、販売事業を展開するNVIDIAは、2020年5月22日に同社の技術で構築されたAI「GameGAN」を発表した。「Generative Adversarial Network」(GAN:敵対的生成ネットワーク)を採用したニューラルネットワークモデルだ。

 GameGANは、ゲームのプレイ動画を「見る」ことでゲームを模倣し、人間がプレイできる状態のアプリとして出力できるという。同社はパックマンでの実験結果を自社ブログで紹介した。

 NVIDIAの研究機関であるNVIDIA Researchは、パックマンの開発元であるバンダイナムコから提供されたパックマンのゲームプレイ動画約5万本をGameGANに「視聴」させ、同時にゲーム操作に対応するキー入力も学習させた。このプロジェクトはGPU「NVIDIA Quadro GV100」を4基搭載したワークステーション「NVIDIA DGXシステム」を使って進められた。

 GameGANの敵対的生成ネットワークは、「生成ネットワーク」と「識別ネットワーク」の2つの学習機構を持つ。生成ネットワークがゲームプレイ動画からパックマンの振る舞いをシミュレートしてゲーム環境を作成し、識別ネットワークが判断して結果を生成ネットワークにフィードバックする。これを繰り返して学習の精度を上げていく。

 GameGANはゲームの生成と検証を繰り返し、「パックマンは壁を通り抜けられない」「パックマンはドットを食べる」「パックマンがパワーエサを食べるとオバケモンスターが青くなって逃げ、それを食べることができる」「パックマンは迷路の端に至ると反対側にワープできる」「パックマンがオバケに捕まると画面が点滅してパックマンは消滅する」といった基本ルールを学び、再現していった。

 特筆すべきは、GameGANはゲームエンジンを持っていないのに、学習結果をアプリケーションとして出力できるという点だ。プレイ画面を見てゲームを模倣するならば、操作方法や動作アルゴリズム、キャラクターデザインなどはAIが自分で考えプログラミングしなければならない。4日間の学習で、GameGANはパックマンを再構築した。その出力結果の完成度は高く、バンダイナムコの関係者が驚くほどだったという。

 研究チームはこのプロジェクトの目標として「自律型コンピュータを開発する時のシミュレーション環境をAIによって生成する」と掲げている。自律型コンピュータ実用化のためには、現実の世界と同等の環境での実証試験やシミュレーションを繰り返す必要がある。AIが映像を見るだけでシミュレーション環境を設計できるような仕組みを作るということだ。

 実際にGameGANが開発したパックマンのデモは2020年の夏に公開予定だという。またパックマンと同じ研究がFPSゲーム「DOOM」でも取り組まれている。


上司X

上司X: AIがパックマンの動画を見たたけでそれを再現した、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: すごいですね。そしてパックマン40周年おめでとう。かつて地元のスーパーの屋上にあった小さなゲームコーナーで、50円を投入してパックマンをプレイしていた頃が懐かしいですよ。攻略パターンを暗記して挑んでました。


上司X

上司X: パターン通りに動くとオバケ×4で1600ポイントだな、……ってなんだ? その完全に昭和の「パックマンの思い出」は。それって昭和世代の記憶じゃないのか?


ブラックピット

ブラックピット: その話はいいとして、GameGANの話ですよ。


上司X

上司X: そうそう。人間なら、ゲームの動画をしばらく見ればそれがどういうゲームか理解することはそれほど難しくないだろうが……。


ブラックピット

ブラックピット: ましてや再現までしてしまうなんて。


上司X

上司X: ゲームエンジンを搭載していないというのもまたな。いまや市販ゲームだってゲームエンジンで開発されるのが一般的と聞いているぞ。


ブラックピット

ブラックピット: まあパックマンぐらい単純なら、エンジンなしでできる気もしますけどね。……おっと、何ですか? その「ならオマエが作ってみろよ」的な視線は。


上司X

上司X: まあキミの技量は置いておこう。このプロジェクトの大きな目標が自律型コンピュータの開発に一役買うってところがまたロマンのある話じゃないか。AIが仕事を奪うという議論もあるが、AIはこうして新たな地平を開こうとしているんだよな。


川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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