2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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■記事内目次
- RPAを一言で説明すると
- RPAの身近な例
- RPAはITツール? それともロボット?
- RPAとAIはどう違う?
- RPAのメリット・デメリットは?
- RPAツールはどんな種類がある?
- UiPath
- WinActor
- Bizrobo!
- Blue Prism
- Automation Anywhere
- RPA導入の具体例、生かせる業種は?
- RPA×不動産
- RPA×金融
- RPA×会計、経理
- RPA×医療
- RPA×人事
- RPA×行政
- RPA導入に必要なスキル、人材とは
RPAを一言で説明すると
RPAとは、ロボティック・プロセスオートメーションの略称であり、RPAを定義すると「従来は人間のみが行うことができると考えられていた作業を代行するもの。高度化するソフトウェアとそれを利用した業務改革手法」となる。欧米では2014年くらいから、ホワイトカラーの仕事を代替するロボットが登場した。ロボットを活用した業務改革手法を総称して、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコックス教授がRPAと命名したのが始まりだといわれている。
さらに、RPAの仕組みは「PC上で人間が実施しているさまざまな操作をロボットが記憶し、人間に代わって自動で実行させること」と説明できる。あたかも自分の部下のように仕事を教えられることから、RPAを「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と呼ぶこともある。
RPAの身近な例
もう少し簡単に、身近な例で説明をしよう。仮に、売り上げ情報を店舗ごとにエクセルで管理している会社があるとする。経営層が「日々の業績を知りたいので1日1回、全社の売上高と来店客数をレポートしてほしい」と経理部に依頼した。経理担当者は、全国にある数十店舗の情報が記されたエクセルファイルを1つ1つ開き、売り上げなど該当する数字をコピーして集計し、レポートを作成する。これを毎日続けることになる。数字のコピーを1つでもミスすれば、正しい数字ではなくなってしまう。この担当者は、単純な集計処理とはいえ、間違えてはいけないというプレッシャーを受けながら日々作業することになる。
そこで登場するのがRPAである。このエクセルでの単純な作業プロセスを一度RPAに見せ、覚えさせるだけで、RPAはすぐにでも集計作業を黙々と実施できるようになる。毎日はおろか、24時間365日にわたり1時間ごとの数字を集計し、レポートすることも可能である。
RPAはITツール? それともロボット?
RPAを初めて知った人からは「RPAはロボットではなく、マクロ、つまりITツールではないか」という指摘が出ることがあるという。ここで、RPAの存在価値を確認しておく必要が出てくる。先ほど触れたように、RPAはほんの10分間見本の作業を見せるだけで、すぐにでも人間がいまやっている作業をそのまま代行できる。さらに、人間とは比較できないほど高いパフォーマンスで作業を完了し、しかもミスをしない。
このインパクトこそがRPAの真骨頂といえる。つまり、ITツールを使って人間が作業をしやすくするというよりは、人間の作業を代行する「ヒューマンリソース」(人的資源)としての意味合いの方が上回る。特に、日本では少子高齢化による生産年齢人口の減少という問題に直面しているため、「ITツールを買う」というよりは、「デジタルレイバーとしてのロボットを採用する」という方がしっくりくる。すなわち、RPAはITツールではなく、擬人化して表現する場合のロボットである、というのが回答になる。
RPAとAIはどう違う?
RPAが登場した当時、AIと混同して語られる場面もあった。両者は特に今後は深くかかわってくるが、概念自体はまったく別のものである。
RPAの発展段階は、
- 段階1「定型業務の自動化」
- 段階2「一部非定型業務の自動化」
- 段階3「高度な自動化」
に分けて論じられることがある。現状実施されているRPA導入プロジェクトの多くは、情報の取得・入力作業・検証作業・複数システムへのログインなど、段階1の定型業務の自動化である。RPAは人が定義した処理のみを地道に実行する機能であり、それ以上でも以下でもない。
一方で、AIは機械学習などのプロセスを経ることで、もしかすると人も気づいていないかもしれない事実を見つけ出すなど、自律的な活躍をする。その点で、RPAとAIは異なる技術なのである。
しかし今後、発展段階2以降の機能を実装しようとする際に、RPAとAIの組み合わせに大きな期待が集まっている。たとえば、経費精算で個人が飲食した際の領収書や交通費について、経理や事務担当者が不正がないかをチェックする企業が多いが、その人的リソースがないというケースもある。この時、経費処理をただRPA化しただけでは、申請された経費の不正の可能性を見出したり、違和感を持ったりすることはできない。そこに、不正検知の機能を持つAIを併せて導入すれば、その企業は不正を見つける仕組みを持ちながら、大量の経費申請をRPAで自動化できるのである。
また、AIは他の経理情報をチェックする過程で、「この顧客の注文が直近の2、3カ月間で減り始めている」など、顧客の受発注データからの発見をいち早く経営陣に知らせることも可能である。AIの知と、定義済みロジックの大量処理を得意とするRPAの組み合わせは、今後のRPAの発展を考える上で欠かせないと考えられている。
AIのほか、OCR(光学的文字認識)とRPAの連携も注目されている。紙ベースの大量の資料をOCRによってデジタルデータ化し、それをRPAで分類するといったアプローチにより、デジタルと縁遠いような業界が一気にデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるといったシナリオが語られているのである。
RPAのメリット・デメリットは?
ここで、RPAのメリットとデメリットをまとめておきたい。
メリットは何よりも、業務における時間短縮効果である。大企業50社への調査(日経コンピュータ)によると、年間の時短効果は50社合計で1700万時間にも達するという。これは2019年までの自動化による短縮効果の2.8倍に当たる。全体の8割の企業が年5万時間以下の短縮の範囲にいるが、1割は年6万から20万時間という大幅な自動化を実現している。
時間短縮と並んで重要なメリットは、RPA導入により社員の心身の負担が軽減することである。前述したような繰り返し作業や確認作業をRPAに任せられること、それに伴い早朝出勤や残業が減る効果もある。また、出張の経費申請の数字に不正の疑いがあるといった、伝えづらい事柄をRPAに代行させることにより、担当社員の心労が軽減する。
これは、働き方改革によって労働時間管理が取り沙汰されている環境下でもプラスと考えられる。さらに、新型コロナウイルス感染症対策によるリモートワークの要請も加わる中で、労働者の1人あたり生産性向上が求められている。それについても、RPAは具体的な解決策として有力な選択肢となっているのだ。
RPA導入の大きなメリット
- 人の作業をロボットに置き換えることによる業務時間の短縮
- 判断基準をRPAに委ねることによる社員の心身負担の軽減
一方で、RPAにはデメリットも指摘されている。1つは、社員の事務能力の低下である。社員が実施していた事務をロボットに任せることになるため、社員に新たな仕事を与えるなどの工夫をしなければ、事務能力は低下してしまう。
また、役割を失った社員が退職してしまった場合、人員が足りなくなるなど組織の構成に悪影響が出てしまう。
RPA運用のデメリット
- 社員の事務処理能力の低下
- 社員の役割がなくなることなどによる退職の弊害
RPAツールはどんな種類がある?
RPAを実際に使う際は、専用のツールを使ってロボットを開発することになる。一般的に5大RPAツールと呼ばれる主なツールを5つ紹介する。
UiPath
UiPathは世界市場を代表するRPAツールベンダーの1社である。現CEOのダニエル・ディネス氏らがルーマニアで2005年に創業。現在は米国本社のほか世界25拠点で事業を展開し、デスクトップ型RPAツールを核とする多様な製品群を提供している。動作シナリオの作成、実行、管理支援などの機能群をモジュール化し、別々の製品として提供することで、小規模から大規模まで幅広く対応する。
WinActor
2010年にNTTの研究所で開発された国産のRPAツールである。導入実績は4800社(2020年3月時点)を超えている。Windows端末にインストールしてすぐ使い始められる「デスクトップ型RPA」に分類されている。基本的にデスクトップレベルでRPA化するツールだが、2017年9月にNTTデータが提供を開始した「管理ロボ」というソフトをインストールすることで、サーバーによる一括管理が可能になる。
Bizrobo!
RPAという言葉がまだ存在しなかった2008年から、ソフトウエアロボットの導入・運用を支援してきたRPAテクノロジーズが提供するツール。サーバー型ツール、デスクトップ型ツールなど多様な製品やサービスを提供しており、国内1560社、10万ロボット超という豊富な導入実績を持つ。
Blue Prism
2001年設立。「RPA」という言葉を発明したベンダーといわれている。IBMやシーメンス、チューリッヒ・インシュアランス・グループ、ノキア、プロクター&ギャンブル(P&G)など、グローバル企業を中心に全世界で1,000社以上の導入実績を持つ。サーバー中央管理型でロボットを管理するため、大規模向けのRPAツールとなっている。
Automation Anywhere
「Automation Anywhere Enterprise(オートメーション・エニウェア・エンタープライズ)」は、米Automation Anywhere社が日本IBMとの協業で開発し、企業の業務プロセスを管理し改善を目指すBPM(ビジネスプロセス管理)とRPAを組み合わせたRPAツール。高いセキュリティを確保するしくみを備えており、アメリカにおけるRPAツールとしては、シェアナンバーワンといわれている。バックオフィス系の業務に強みを持っているツールである。
RPA導入の具体例、生かせる業種は?
実際にどのような業界や職種でRPAを導入し成果をあげているのか。既に多岐にわたる事例を紹介しよう。
RPA×不動産
ロボットに売買仲介業務を代行させるといった使い方が想定されている。インターネット上の物件情報を毎日収集し、新着物件などの更新情報を抽出し、顧客に提供する。民事法務協会から登記事項証明書の取得を代行するといった活用法もある。
RPA×金融
RPAとOCRの組み合わせが最も効くと考えられるのが金融業界である。三井住友銀行がこの形式での導入実績を持つ。銀行のコア業務に多種の紙帳票が存在していたが、RPAとOCRを導入することで、デジタルデータ化するとともにDXを図った。
RPA×会計、経理
スーパーマーケット運営のマルエツは、本部の経理業務にRPAを導入し、交通費精算業務と会計システム入力業務を自動化した。現在、店舗と本部業務の再設計を進めており、従業員がより付加価値の高い業務を担当するようにシフトさせている。
RPA×医療
医師や看護師の仕事は診断だけではなく、事務作業の負担が大きい。医療現場でRPAを使うことにより、その事務作業量を削減している。院内の相互連携していない複数システムの手入力や転記作業などの手入力が必要となっており、そうした定型業務をRPAで自動化できる。
名古屋大学医学部附属病院の実証実験では、会議開催案内メール送付業務、医師勤務時間計算業務、患者数統計データ作成業務、過誤納リスト作成業務などの医療業務の自動化事例もでてきており、年間約9,800時間の時間創出が見込まれている。
RPA×人事
給与明細書のPDF取得や印刷指示、メール送信などをRPAで実施できる。印刷までをロボットに任せて社員は配布だけを担当する、ロボットにメール作成まで任せて確認と送信を社員が実施するといった使い方がある。RPAによって膨大な作業から社員が解放され、より重要な業務に集中できるようになる。入社、退職の手続きにも導入できる。
RPA×行政
一定の年齢以上の住民に催事の案内を送付するといったケースでRPAを活用できる。該当する年齢以上の住民データを抽出し、名前や住所など必要な情報だけをRPAでエクセルに一覧化する。案内文などの印刷用差し込みデータを作成し、宛名ラベルを作成する。マクロ処理が難しいソフトウェアや、システムをまたいだ一連の業務の自動化も、RPAは得意とする。
RPA導入に必要なスキル、人材とは
ここまで見てきたように、多くの業種でRPAの効果が期待できる。では、実際にRPAを導入する際に、担当社員にはどんなスキルが求められるのであろうか。1つ言えることは、何かの理由でRPAがミスを犯した時、その責任を取るのはRPA自身ではないということである。
RPAの普及が見込まれる今、RPAを理解し、業務をどんなロボットに任せるとうまくいくのかなど、RPA導入と活用について責任を持ちながらコンセプトを考え続けられることが、RPA人材の要件、必要とされるスキルとして挙げられるのである。
(取材・文/大森新也 デザイン/今井裕美 構成/RPA BANK編集部)
参考文献
- 安部慶喜、 金弘潤一郎『RPAの威力 ロボットと共に生きる働き方改革』日経BP 、2017年。
- 大角暢之『RPA革命の衝撃』、 東洋経済新報社 、2016年。
- 日経クロステック『成功と失敗で学ぶ RPA』日経BP、2020年。
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