2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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新型コロナウイルスの影響によって在宅勤務が広く取り入れられるようになり、リモートワークのメリットやデメリットについてよく耳にするようになった。リモートワークは通勤などの時間が削減でき、業務に使える時間が増えるなどのメリットがある一方で、一緒に仕事をしている感じがしない、困った時にすぐに相談できる人がいない、などの声も聞かれる。
オフィスワークには上司や同僚と直接コミュニケーションを取りつつ、チームで協力しながら仕事ができるメリットがある。リモートワークが一般的になると、チームワークを生かしながら働くことは難しくなってしまうのだろうか。
2011年の設立当初からリモートワークを実施し、全社員がリモートワークで働いている株式会社ソニックガーデン(東京都世田谷区)は、オフィスに集まらなくてもチームで協力しながら働く「リモートチーム」の環境を整えてきたことで知られる。リモートワーク研究所の所長でもあるソニックガーデンの八角嘉紘氏に、リモートでもチームワークを生かして働くために必要なことについて聞いた。
■記事内目次
- リモートワークでは「一緒に働いている感じ」を実感できることが大切
- リモートでもチームで働くためには、雑談のようなリアルタイムでのオープンな対話が必要
- 顔が見えて周囲の声が聞こえ、自分の席があり自由に集まれる「Remotty」
- 今後の働き方はリモートワークが中心に。リアルなコミュニケーションは貴重になる
リモートワークでは「一緒に働いている感じ」を実感できることが大切
−貴社は2011年の設立当初からリモートワークを取り入れているそうですが、きっかけとなった出来事について教えていただけますか。
弊社はもともとTIS株式会社の社内ベンチャーでした。当時は5人のチームで仕事をしていたのですが、そのうちの1人がアイルランドに旅行に行きたいと言い出したのです。抜けられてしまうと戦力的に痛いですし、プログラマーなのでパソコンさえあればリモートでも開発ができるのではないかという話になり、仕事の時はテレビ会議でつなぐという形でできるか試してみることになりました。その結果、リモートでも問題ないことが分かったのです。
このことがきっかけとなり、2011年に会社として独立した時から勤務地不問で採用活動を始めました。最初にリモートで採用したのは兵庫県在住の方で、常時Skypeをオンにして東京のオフィスとつなぎ、しばらく一緒に働いてもらいました。
弊社は「納品のない受託開発」という、見積もりや納品や期限のない、月額固定料金で利用できるシステム受託開発をメイン事業としています。プログラマーとしてのスキルレベルの高さだけでなく、コンサルタントのような能力が必要とされる難しい仕事ですが、最先端の仕事が地方でもできるという点は、地方在住でスキルの高い人材にとっては魅力的だと思います。
−優秀な人材を確保するためにリモートワークを採用したのですね。リモートワークとオフィスワークを同時に行って、不都合は感じませんでしたか。
リモートで働く人が増え、Skypeでつなぎっぱなしだと人数が多いために誰が話しているのかが分からなくなってきたため、2014年にそれまでのSkypeの代わりにチャットツールでのコミュニケーションを検討しました。チャットツールでも仕事は問題なく進んだのですが、Skypeのようにずっとオンラインでつながっているわけではないので、「一緒に働いている感じがしない」という課題が新たに浮上してきたのです。
弊社が展開している「納品のない受託開発」業務では、社員一人一人が担当会社を持っているため、チームとして得意なところと苦手なところをサポートしあったり、気軽に相談したりと、オフィスで働いているようなコミュニケーションができなければ個人事業主として仕事をするのと変わらなくなってしまい、ソニックガーデンで働いている意味がなくなってしまいます。
元々オフィスの持っていた要素を考えると、一緒に働いている感じを持ってもらうためには、「顔が見えること」で「気軽に声をかけられる環境」を作ることが必要なのではないかと思うようになりました。
リモートでもチームで働くためには、雑談のようなリアルタイムでのオープンな対話が必要
−顔が見えて気軽に声をかけられる、となると雑談ができるような環境、ということでしょうか。仕事中の雑談には賛否両論があるようです。
仕事で必要なこととしてよく言われるのが「報告・連絡・相談」です。報告と連絡は過去に関することですが、相談はこれから起こる未来に関することです。相談は大事なことですが、行うのはハードルが高いこともあります。上司に相談しようと思ったら、時間をかけて問題をある程度整理しておかなければなりません。しかし、自分1人で全て整理できてしまったら、それは相談ではなくただの報告になってしまいます。
雑談というと仕事とはまったく関係のないことだと思われがちですが、弊社では雑談は「雑に相談する」という意味合いもあります。普段から「雑に相談する」ことに慣れていると、問題が整理されていない状態でも相手に伝えやすい。雑談を推奨することは、相談に対するハードルを低くすることにつながります。
−雑談を「雑に相談する」ことと考えれば、普段から雑談をすることで問題が大きくなる前に対処できそうですね。
そういった意味で、仕事中に気軽に声をかけたり雑談をすることは、生産性の向上にもつながる重要なコミュニケーションだと考えています。
職場のコミュニケーションは「リアルタイムでクローズド」「タイムラグがありクローズド」「タイムラグがありオープン」「リアルタイムでオープン」なものの4つに分けられます。
1つ目の「リアルタイムでクローズド」なコミュニケーションは、対象を限定する対話です。議論や承認、提案、指示などがここに含まれ、アナログでは会議室や電話、デジタルではオンライン会議などが含まれます。
2つ目の「タイムラグがありクローズド」なコミュニケーションは、対象を限定した通知や連絡のことです。報告や連絡、通達などのことであり、アナログで言うとレポートや文書を介してのやり取りです。デジタルではメールやグループチャットがこれに当たります。
3つ目の「タイムラグがありオープン」なコミュニケーションとは、対象を特定しない通知や連絡のことです。提示や募集などのことで、掲示板や社内のポスターなどによるものです。デジタルでは社内ポータルや社内Wikiがこれに当たると言えるでしょう。
最後の「リアルタイムでオープン」なコミュニケーションは、対象を特定しない開かれた対話です。相談や雑談、声かけ、挨拶、つぶやきなどが含まれます。オフィスのデスクで行われるコミュニケーションがこれに当たりますね。
仕事中に気軽に声をかけたり雑談したりすることは最後の「リアルタイムでオープン」なコミュニケーションになります。我々はこのコミュニケーションをリモートで実現するツールが、チームワークを醸成するために必要なのではないかという仮説を立て、「Remotty(リモティ)」という仮想オフィスツールを開発しました。「Remotty」ではリモートでもまるでオフィスにいるかのように、一緒に働いている感覚を得ることが可能です。
顔が見えて周囲の声が聞こえ、自分の席があり自由に集まれる「Remotty」
−相談や雑談、声かけ、挨拶、つぶやきといったコミュニケーションは、グループチャットでもできるような気がするのですが、難しいのでしょうか。
確かにできないことはないと思いますが、グループチャットは表情が見えないため、気軽に声をかけることができません。また、いるのかいないのか分からないので「今います?」のようなコミュニケーションを挟むことになります。タイムラグがありすぐに反応してもらえるとは限らないため、安心感があるとは言えません。
また、複数人で雑談をしようとしても全員に通知がいったり、誰かの未読フォルダに入ったりするため気軽に投稿しづらいこと、などもグループチャットでのオープンな対話が難しい要因です。
−グループチャットでは難しいオープンな対話を可能にする、「Remotty」の特徴を具体的に教えてください。
「Remotty」には4つの特徴があります。1つは「顔が見える」ことです。「Remotty」にアクセスすると、パソコンのカメラで自動撮影された写真が2分間隔で他のメンバーに共有されます。席にいる、休憩しているなどの様子が一目で分かるため、声をかけやすくなります。
2つ目が「周囲の声・つぶやきが見える」ことです。「Remotty」では雑談がタイムラインで流れているのを誰でも見ることができます。実際にオフィスで働いている時と同様に、誰かが自分の知っていることを話しているのを見かけたら、話に割り込んで参加することができます。
3つ目が「自分の席がある」ことです。他の人には通知されないため、気軽に自分の状況や気持ちをつぶやくことができます。
最後が「自由に集まれる」ことです。誰かと何かを話したいと思ったら、話しかけたい人の席に行って声をかけます。Googleカレンダーなどとのカレンダー連携もできるのでその人が今どんな予定なのかも一目で分かります。ZoomやGoogleMeetなどの会議ツールとの連携で、数十人が入れる会議室をクリック一つで作ることも可能です。
これらに加え、入退室ログがあるため労務管理ができることなども大きな特徴です。他ツールと連携しやすい特徴を生かし、現在SlackやMicrosoft Teamsといったチャットツールとの連携機能の開発も進めています。
今後の働き方はリモートワークが中心に。リアルなコミュニケーションは貴重になる
−今後働き方やそれに伴うコミュニケーションはどのように変化していくとお考えですか。
リモートワーク中心の働き方になるのは間違いないと思います。現在のような状況になるまでに今までのペースだと何年もかかると思っていましたが、コロナの影響でかなり早まりました。そしてリアルなコミュニケーションは今後貴重になるだろうと思います。
弊社はリモートワークを採用しているために社員同士がめったに顔を合わせないと思われがちですが、社員だけでなく家族も参加する家族会や合宿などを年に数回行っています。社員が自宅で気持ちよく働くためには、家族の理解も欠かせません。リモートワーク中心の働き方が広がる一方で、こういったリアルなコミュニケーションがさらに貴重になり、重要視されるようになるでしょう。
そして今の状況をみるとリアルで会うことがますます難しくなってきています。弊社でもリアルのイベントの形は今試行錯誤している段階です。
仕事をする上で最も大切なのは信頼関係です。信頼関係とは、一緒に仕事をしながら徐々に培っていくものであり、日頃から些細な情報をオープンにすることでその土壌を作れると考えています。「Remotty」のようなツールを使い、リモートでもチームワークで助け合いながら楽しく仕事をする人が、今後より増えることを期待しています。
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